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國學院大學・山本歩夢 復活を待ち続けた平林清澄との絆 入学時から2人が描いた箱根駅伝の優勝へ

2024年12月27日 9:00
國學院大學・山本歩夢 復活を待ち続けた平林清澄との絆 入学時から2人が描いた箱根駅伝の優勝へ
國學院大學の山本歩夢選手と平林清澄選手
2025年1月2、3日に行われる第101回箱根駅伝で、悲願の初優勝を目指す國學院大學。ケガから復活した山本歩夢選手には、その復活を待ち続けてくれた友がいました。

今季の学生駅伝初戦、10月の出雲駅伝。優勝のフィニッシュテープを切ったのは、國學院大學のキャプテン平林清澄選手でした。

レース後、口にしたのは親友への思いー。

「山本歩夢が去年苦しみましたけれど、2人で同じタスキをつなげて、幸せだなと思いました」

同期2人の絆とは。

■入学時から描いた“夢”

2019年の出雲駅伝。國學院大學が初めて頂点に立ちました。その勇姿に憧れた2人の高校生は迷うことなく進路を決めます。

今度は自分たちが歴史を作る番だとー。

山本選手は「入学した頃から大学4年生になる頃には、“箱根駅伝で優勝しよう”と、4年間ずっとなんですよ」と。「なんか一段落おいて話なくなったら、“箱根優勝しような”なんですよ」と笑顔で思い返します。

ともに1年生のときから箱根デビュー。2年目は2区と3区でタスキをつなぎ、他大学のエースと渡りあいました。

3年生になると2人はさらに飛躍。山本選手は5000mで大学記録を更新し、平林選手も10000mで大学史上初となる27分台を記録。“2人が國學院大學の歴史を変える”、そんな期待を抱かせました。

前回大会、平林選手は2区で区間3位の活躍。一方で山本選手は、出場はかなわず。大会直前に右大たい骨を負傷し、チームのサポートに徹しました。

てっぺんを目指していた國學院大學は、総合5位。選手たちは次々と悔し涙を流します。山本選手は仲間の涙をみつめるしかありませんでした。

「チームに貢献できない悔しさもあって、つらかった。いや、僕なにやってるんだろうなって」

■ふがいない自分に涙...復活を信じる友がつづった“言葉”とは

2月、平林選手が快挙を成し遂げます。大阪マラソンで初マラソン日本最高記録で優勝。学生記録を樹立しました。まだケガの癒えない山本選手は、「すっげーなと思った半面、僕なにやってるんだろうなと。平林だけ勢いがあって、平林だけ置いてけぼりにさせているなという思いがあった」と当時を振り返ります。

ケガから5か月、4月にようやくレースへ復帰。しかし大学記録保持者の走りは影を潜めます。5月の関東インカレ5000mでは、チームの力になりたいと臨むも入賞に届かず。狂った歯車はなかなか元には戻りませんでした。

ふがいない自分に涙。すると平林選手が山本選手のもとへ。その悔しさを受け止める様子がありました。

「2人で結果を出して、箱根駅伝優勝が一番の目標ですけれど、そういう話をしていきたかったが、平林だけがずっと結果を残し続けていて、僕がなにか言えるわけでもない。平林を絶対独りにさせちゃだめだって思いがありました」

山本選手は、この涙を忘れずにと、関東インカレのIDパスに「“この悔しさ”忘れない」と記し、復活を誓います。すると不意にそのパスをめくると、裏にはあるメッセージが書かれていました。

“歩夢ならできる!!復活を誰よりも待ってるぞ。「おかえり」「ただいま」そう言ってグータッチしよう。”

平林選手からでした。

友の期待に応えたい。完全復活を目指して一層練習に打ち込みました。でもIDパスは表のままにしたといいます。

「ちゃんと復活してから裏返そうとした。復活するまでは“悔しさを忘れない”のままでいようと」

■全日本で復活の走りに友の思いは 2人の夢を実現へ、箱根駅伝に挑む

迎えた11月の全日本大学駅伝。6区を走る山本選手は、トップと41秒差の2位でタスキを受けます。

懸命に前を追う山本選手の到着を待つのが平林選手。山本選手は区間新記録の快走で、先頭との差を一気に4秒差に縮めました。

復活した友からタスキを受けた7区の平林選手も区間2位の力強い走り。國學院大學は最終区で逆転し、全日本を初めて制しました。

山本選手は「ここで区間賞を取れたことが自信になったので、まずはよかったなって一安心」と笑顔。平林選手は「タスキをもらったときはうれしかった。あいつからもらうタスキは元気出ますね」と笑顔がはじけます。

そして全日本後、山本選手のIDパスにはまたも平林選手からのメッセージが書かれていました。

“歩夢ならできただろ?復活おめでとう。そしてありがとう。ずっと待ってた。「おかえり」「ただいま」ってグータッチよりすごい襷リレーができた。「ただいま」って聞こえたよ。2人でつかんだ日本一。あと一つ。”

「関東インカレの続編じゃないですけれど、書きましたね」とにやりと笑う平林選手は、「あいつは全日本より箱根で上がってくる。ここで終わりの男じゃない」とさらなる期待。

山本選手は「常に平林が道をつくってくれた。箱根で優勝を目指せるチームになっていると思うので、箱根で優勝して最高の形で終わりたい」と、力を込めます。

出会ったときから語り合った夢、“箱根駅伝の優勝”は片時も揺らぐことはなく。自分たちで叶えるために、101回大会に挑みます。

最終更新日:2024年12月27日 9:00