「監督してんなぁ、わかる!」寺田監督 全日本で“苦悩”を恩師・前田監督に相談 両者の指導論とは?
◆スカウトで大事にしていること
「卒業生が実績を積み重ねてきてくれたので、(高校生は)最初は大学の順位とかを見ますので、そういう意味では、寺田も今やっていると思うけど、大変な部分じゃない?」と前田監督。
司会が、「寺田監督は、どこを見るんですか?コースを間違えないとか?」とちゃかすと、「それは一番大事なことですね(笑)」と、寺田監督も乗っかります。
寺田監督が指揮をとる皇學館大学は、三重県伊勢市に拠点を置く大学。
「東海地区は、箱根駅伝に挑戦する機会がないので、声をかけても9割8分くらい断られる」と悩みを明かします。
たびたび記録会に足を運び、高校生のレースを見るようにしていると話す寺田監督。
「僕自身が中距離から距離を伸ばしていったタイプなので、そのパターンが指導しやすい。監督になって1年とちょっとなのでまだまだ指導不足。そこを含めてスピードがある子っていうのを一番に見て…」と話すと、横から前田監督が「それ関東も一緒だからね」とつかさずツッコミ。
さらに「練習に行った方がいいよ。試合会場に行って試合の結果見ても…練習を見せてもらった方が、ねぇ」と大先輩から貴重なアドバイスが送られると、寺田監督は、「勉強になります」とぽつり。
一方の前田監督は「レースだと積極的に先頭に立つ子ですね。フロントランナーが私は一番好き」と話し、「後ろに隠れていて、自信なさそうに最後ちょっと出てタイムを出す子と、タイムは出なかったけど、最初の2000m・3000mを積極的にいく子であれば、後者の積極的にいく子の方が心が強い」とコメント。
「箱根駅伝でも自分のパフォーマンスを出すのも簡単ではないので、いろんなプレッシャーがかかる。そこを平林みたいに笑っていればいいんですけど、なかなかいないんですよ(笑)。ああいう子、なかなかいないので」と、マラソン初挑戦ながら、30キロを過ぎても笑顔で走っていた平林清澄選手を例に挙げながら「心の強さを見させてもらっている。我慢もできるし、困難なことが4年間いろいろあるんですけど、負けないという強さを見ている」と、心の強さが大事だと強調しました。
◆指導する上で大切にしていること
指導者になって、今年で2年目の寺田監督。
「選手として走っていた目線と、指導者となって見る景色があまりにも違いすぎて。皇學館の子たちを指導。やる気がある子とない子がいるのをどうやってやる気にさせようかとか。無理やりやらせる、矯正させることも僕自身が限界値を決めてしまっている気がしてやりたくはない…」と悩みを明かします。
恩師は、「大事なのは信頼関係。最初“寺田さん”という名前は知っていても、人間性はわからないから。寮での小さな事の積み重ねを大事にすれば、人と人のぶつかり合いのなかで、信頼を勝ち得てくるといい方向にいく」とアドバイス。
寺田監督が、「前田さんのことを信じて4年間取り組んだ結果、実業団まで行くことができたし、マラソンで2時間8分台を出すことができた。皇學館の子たちとまだまだ深い信頼関係ができていないのかなと気づかされたので、小さな事を大事にして信頼関係を深くしていきたいと思います」と語れば、「そのままやないかい」と前田監督が、再びツッコミ。深い信頼関係がうかがえました。
前田監督は、「選手とはノーガードで打ち合うぐらいのイメージ」で選手たちと接しているといい、「指導者と選手という関係はあるが、一人間と一人間の結びつきだと思っている」としながらも「規律をチームとして掲げる。そこは強調していて、組織には規律が必要」と話します。
「人と人の結びつきとか縁が一番大事。心広く選手を包み込めるかっていうイメージを持って、そこは若い時と変わらない」と熱く語りました。
◆指導者としてうれしい瞬間
前田監督の頬が緩んだのが、指導者としてうれしい瞬間を聞かれた時でした。
「いつもこっちが元気もらうんですよ。選手の走りを見てて一番元気をもらうのは俺なんじゃないかと思うぐらい。選手にいろんなことを教えてもらっている。選手からいろんな学びをいただいているという感じ」と笑顔で語りました。
寺田監督は、「僕のメニューを信じてくれて、自己ベストを出してくれた時が一番うれしい。逆に僕のことを信じてやってくれた子が走れなかったとき、結構ショックが大きいというか、何か間違っていたのかなと思い返すことが多くて…学ばせていただいている」と述べました。
◆実は…全日本の区間エントリーを相談
対談のなかでは、全日本大学駅伝のこんな裏話も。
「区間エントリーの前日にいきなり(寺田さんから)LINE電話がかかってきて、『監督、迷ってます』と。俺は自分の方(國學院大學のエントリー)に取りかかっているのに、4年生で最後の子と1年生とどちらを起用するか悩んでいて。監督してんなぁと思って。わかる!って言いながら」と区間エントリーの相談を受けたことを明かした前田監督。
寺田監督は「僕自身は運良く外れたことがない身だったので、外れてしまった選手の本当の気持ちをわかってあげられないと思って、ずーっと悩んでいて。16人をエントリーした後から絞りきれず、ずーっと。寝るときもずーっと」と悩み続けていたことを明かしました。
ここでも恩師から貴重なアドバイスが。
「(エントリーから)外す子から呼ぶ。ちゃんと対話して、何で外すのか、ちゃんとした理屈を話して。100%納得してもらえることはないんですよ、でも思いは伝えさせてもらって」と語ります。
「決断は非常に大事。今後のチーム作りにも大事なので、その時だけじゃない。外れた子の思いを、他の選手も見ているし、それがどういう形なのかっていうのが今後のチームをつくるから、寺田監督が外れた子に何て声をかけたか、その子がどうかみ砕いて頑張ろうとするのかが、次のチームの始まりなのですごく大事」と強調しました。