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【特集】変わる人とクマの距離感 国会議員からくまくま園まで 様々な取り組みを取材しました

2024年6月25日 19:04
【特集】変わる人とクマの距離感 国会議員からくまくま園まで 様々な取り組みを取材しました

クマが大量に出没した去年。県内では2000頭を超えるクマが有害鳥獣として捕獲・駆除されました。その一方で県や市町村には、暴言や執拗な要求を繰り返すなどの苦情が多く寄せられ、社会問題となりました。様々な問題が噴出した去年のクマ出没を経て、近づきすぎてしまった人とクマとの距離感を再構築しようとする動きを取材しました。

政治の中心、東京・永田町の自民党本部に横付けされた一台のトラック。

捕獲したその場で野生鳥獣の洗浄から解体まで一次処理ができる装備を積んだその名も「ジビエカー」です。

「ここで枝肉 皮を剥いで」

江藤拓元農水相
「ここで剥ぐの!ここで皮を剥ぐのね」

党所属の国会議員約120人が参加したこの会合。

発起人のひとりは、地方が抱える実情に詳しい石破茂衆議院議員です。

石破氏講演
「7月になると秋田県の人口は90万人を割るかもしらんと言われております」


川口記者
「野生鳥獣の問題は人口減と関連している問題 どう捉えているか?」

石破茂衆議院議員
どんどんと人がいなくなる。そうするとクマに限らず、野生鳥獣というものが里に下りてきて、彼らも生きていかねばならぬわけで、いろんなことをするわけですね。

川口記者
「鳥獣を多く捕獲し増えないようにすることも大事だが」

石破議員
「私はこの鳥獣対策の議論の中で、いかにして鳥獣がもといた山に帰っていけるようにするかということも同時に、政策として重点が置かれるべきだと」

去年県内ではクマに襲われるなどして、70人がけがをしました。人里や市街地への出没が相次ぎ、日常生活に影響を及ぼしただけでなく、県などに相次いだ抗議や職員への脅迫など様々な現象が社会問題となりました。

佐竹知事
「すぐ切ります ガチャン」「これね付き合ってますとね仕事できませんでこれ業務妨害です」

クマの目撃や人への被害は今年に入っても相次いでいます。

♢♢♢

「かわいー!!ありゃりゃりゃりゃ!」「いやーん見て!」

マタギ発祥の地北秋田市にあるクマだけの動物園、くまくま園です。観光客のお目当ては今年生まれたばかりの3頭の子グマです。

飼育員 佐藤明博さん
「もう一か月半か二か月するとみるみる大きくなって、月に10キロぐらい増えていきます。お盆頃にはもうオスなので25キロになります」

観光客(埼玉から)
Q:ご覧になっていかがですか?
A:かわいいですよね!かわいいですよね!ニュースだけでは怖いというのはありますけども。直にこうやって見られることができるのは、こういうところに来ないと見られないので、是非と思って

観光客(東京から)
Q:クマのニュースをどう見ていたか
A:怖いな 危ないなと思いつつ、可哀そうだなとも思いますね。安心安全に見るぶんには上手く共存できたらいいですけど

♢♢♢

生息域を広げ、人と近づきすぎてしまったクマ。人里に寄せ付けないための対策がいま県内各地で広がっています。

去年クマを引き寄せてしまった集落にあるクリやカキの木。伐採には1本あたり10万円程度の費用がかかるといいます。その費用が壁となってこれまで伐採に踏み切れなかった人が多くいました。

兎澤忠夫
「いやとにかくこのうちのクリのね、おかげっていうか。クリのために、近所の方へご迷惑をかけてはいけないと思って…」

鹿角市は今年度から、1本5万円を上限として伐採費用を補助していて、すでに550本以上の依頼があったといいます。

伐採業者
「去年の10倍以上はあると思います。現場であの熊棚(クマが木の上に居座った跡)がすごくある木とかは結構見てます。あと爪の痕とか」

究者から転身し、4年前から県のクマ対策を担う専門職員、近藤麻実さん。今年度は新たに採用された新人2人の教育などさらなる体制の強化に取り組んでいます。

去年の大量出没を経て最前線で対応にあたる市町村の職員だけでなく、住民レベルで行動や意識の変化を感じるようになったといいます。

県自然保護課近藤麻実さん
「例えば鈴もって歩く人増えたよねとか、電気柵もすごい問い合わせ増えたよねとか、木を切る人も増えたし、みんなでちょっとずつ対策していこうという感じがあるし」

「上手く付き合っていきたいという住民の方々の雰囲気を感じるという話で」

「去年私たちは痛い目を見たけども学んでいる。その学びを糧に少しずつ変わっていっているんだから、そんなに未来は暗くないじゃないという話をしていました」

♢♢♢

今年2月に行われた仙北市の小正月行事「上桧木内の紙風船上げ」。100年以上の歴史があり、「無病息災」や「家内安全」など願いを込めた紙風船が真冬の夜空に舞い上がります。

今年、会場でひときわ目を引いた巨大なクマの紙風船。作者の女性はクマの食害で壊滅的な被害を受けたクリ農家でした。

齋藤農園 齋藤瑠璃子さん
「クリ食いまくるわけですよ。すごく困るんで」「東京から帰ってきて12~3年なんですけど、毎日昼間堂々といるのは(これまで)なかったですね」

例年になく異常な近さで出没した去年のクマ。

齋藤さんは打ち上げる紙風船に、クマへの思いと自身の願いを、ストレートに表現しました。

齋藤農園 齋藤瑠璃子さん
「そのあたりに(クマが)生きている分には問題ないんですけど、ちょうどいい塩梅が『山奥で暮らしてね』っていうわけですよ」

人口減少に伴い、人里周辺のヤブ化が進んだことや、手入れができなくなった果樹や農作物が、クマを寄せ付ける原因にもなっています。

クマと人との軋轢を減らすために被害調査では事故原因の特定と再発防止を。

出前講座では正しく怖がるための普及啓発にも取り組んできた近藤さん。

捕獲だけに頼らないクマとの棲み分け。近藤さんはクマを身近に感じてきた秋田だからこそ、距離感の再構築が可能だと信じています。

近藤さん
「確かに距離は縮まっているんですけ、この距離感であれば、あそこにいるクマは悪さしないしなみたいな冷静さがあるなと思っています」

「出てこられたら困るけど、山奥にいる分にはいいんだよ。山の中にいてくださいね、そういう距離感だと思うんですよね。それを大事にしたいし、そういう気持ちでみんなが暮らしていけるような未来を目指したいと思っています」

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