【先生の残業代を考える】教育実習生「大変だけれど、やりがい」県内で100人の教員が不足 働き方の改善は 福岡
夏休みが終わり、学校が再開します。その教育現場では、長時間労働などを理由に“先生のなり手不足”が深刻です。国は今、先生の働き方を改善することで、なり手を確保しようとしていますが、そこには壁があるようです。
■教育実習生・谷口舞さん(20)
「おはようございます。」
福岡市西区の姪北小学校で、西南学院大学の3年生の谷口舞さん(20)が、教育実習生として3年生の教室に入り、クラス運営のノウハウなどを学んでいました。
授業が始まる前の教室では。
■児童
「先生、ピアノピアノ。」
■谷口さん
「ピアノしようか。踊って、みんな、いくよ。」
谷口さんが大切にしていることは、子どもたちの目線に立ち、一緒に学びを楽しむことです。
■児童
「優しくて、みんなのことを思ってくれる。」
「僕たちの勉強の仕方に心を合わせてくれる。」
■教育実習生・谷口さん
「すごく楽しいです。子どもたちが元気で話しかけてくれて、頑張る理由になります。先生の仕事は大変だけれど、やりがいのある、いい職業だなと思っています。」
しかし今、先生の『なり手』は減っています。
福岡県の教員採用試験のことしの倍率は、小学校で1.2倍、中学校で2.1倍で、いずれも過去最低でした。長時間労働などを理由に敬遠され、福岡県内の小中学校ではあわせて100人ほどの教員が不足しています。
ことし5月、文部科学省の諮問機関は「先生の処遇改善」として、法律の見直しを盛り込んだ答申書を大臣に提出しました。
1971年に制定された「給特法」では、公立学校の先生に月額給料の4パーセントを基本給に上乗せする代わりに、時間外手当などを支給しないと定めています。この4パーセントは当時の平均的な残業時間の月8時間を反映したものでしたが、今回の答申では、これを10パーセント以上に引き上げることが提言されています。
法律の改正が実現すれば、半世紀ぶりの引き上げとなります。しかし、学校現場からは疑問の声があがっています。
■現場の先生
「4パーセントから10パーセントにする、政府は、それで幕引きを図るつもりでしょうか。給料が欲しいわけではないんです。子どもたちに元気を与えられる余裕が欲しいんです。」
給料への上乗せ分が引き上げられても、“残業代”を払わないとする「定額働かせ放題」の枠組みは残るため、長時間労働の抑制にはつながらないという指摘です。
なぜ、抜本的な見直しに至らなかったのでしょうか。教育現場に詳しい専門家は、財政的な壁を理由にあげます。
■名古屋大学・内田良教授
「残業代を支払う仕組みにしてしまうと、ばく大な予算が必要です。そして仕事が減らせないと違法な残業をすることになってしまう。それよりは4パーセントをちょっとだけ増やして、そこで終わらせるというのが、現状取り得るギリギリの答えだったんだろうなと思います。」
その上で「“残業”がなく歯止めなく働ける環境で、働き方が改善されていくのか不安は残る」と批判しました。
福岡市の小学校で教育実習に取り組む谷口舞さんは、授業のためのノートを準備しています。
■教育実習生・谷口 舞さん(20)
「だいたい、どんな質問しようかなというのを毎時間考えたりしています。考えるのは1~2時間くらいですかね。」
子どもたちに関心を持ってもらい、分かりやすい授業にするための準備は手を抜けません。
■谷口さん
「家に帰って仕事をしたりする大変な部分があると、つらいなとか大変だなって思ってしまうことがあるかもしれないので、時間の中で仕事ができるような体制ができたらいいなと思いました。」
先生を目指す若者の情熱をどう未来につなぎ、子どもたちの学びの場を守っていくのか。先生の働き方改革は、この国の将来を左右するターニングポイントに今、立っています。
※FBS福岡放送めんたいワイド2024年8月20日午後5時すぎ放送
4パーセント→13パーセントへ
いわゆる”給特法”に基づいて、公立学校の教員に残業代を支給しない代わりに月給に上乗せしている「教職調整額」を、文部科学省が現在の4パーセントから13パーセントに引き上げる案をまとめ、来年度予算の概算要求に盛り込むことが、放送後、分かりました。
文科省は、給特法の改正案を来年の通常国会で提出する予定で、成立すればおよそ半世紀ぶりの引き上げとなります。ただ、“残業代”を払わない「定額働かせ放題」と呼ばれる枠組みは残ったままのかたちです。
文科省はこの他にも、学級担任や管理職への手当を増やすことなど、教員の処遇改善や負担軽減に向けて必要な予算を概算要求に盛り込む予定です。