“最年少”の語り部がデビュー 戦争を知らない世代から知らない世代へ 中学生に伝えたこと 福岡
福岡市の中学校で20日、36歳の女性が「戦争の語り部」としてデビューしました。女性が抱いていたのは、戦争を知らない世代が語り継ぐことへの葛藤です。それでも活動する女性には、ある思いがありました。
福岡市中央区の警固中学校で、2時間目の時間が始まると、ひとりの女性が中学生たちの前で話し始めました。和田由佳理さん(36)です。
■福岡市原爆被害者の会・和田由佳理さん(36)
「原爆がいかに多くの尊い命を奪う恐ろしいものかということ、そして戦争の愚かさについてみなさんにお伝えすることができたらなと思っています。」
語り部としてデビューの舞台。テーマは戦争です。
■和田さん
「戦争に反対するようなことは言えなかった。みんな、なんでかな、なんでこんなことをするのかな、おかしいなって心の中では思っていたとしても、それを人に言えない空気になっていくのが戦争です。」
36歳という若さから和田さんは「最年少の語り部」と呼ばれています。
■和田さん
「私が22歳の時に祖父が亡くなった。その祖父が小倉陸軍造兵廠(しょう)という軍の兵器を造る大きい工場があったのですが、そこで働いていたというのを亡くなったあとに聞いて。」
和田さんの祖父が働いていた、旧日本軍の兵器工場「小倉陸軍造兵廠」。1945年8月9日に、アメリカ軍が原爆投下の第一目標としていた場所です。
■和田さん
「広島・長崎は、人ごとじゃないなと改めて思うようになって。なにか自分にできることはないかなと思った。」
和田さんは、福岡市の原爆被害者の会に入り、朗読などの活動に取り組むうちに、語り部に挑戦したいという思いを強くしました。しかし”戦争を知らない”ことへの葛藤も抱えていました。
■和田さん
「被爆者は、大切な家族を失った記憶、そのとき見た悲惨な光景がずっと忘れられない。それをなかなか語りたがらないと聞くので、そのまま語らずに亡くなった被爆者の方もいる。それを、家族に被爆者がいない私が果たして語っていいものかと今は悩む部分。うまく伝えられるかなという不安もある。」