水俣病マイクオフ 患者と相次いで面会も再懇談では従来の姿勢に被害者団体から反発も
この問題は今年5月1日、水俣市で行われた伊藤環境相と水俣病の8団体との懇談会の席で環境省の職員が被害者のマイクを切って発言をさえぎったものです。伊藤環境相はその後、再び水俣市を訪れて環境省の対応を謝罪し、改めて懇談の場を設けると約束していました。
8日、再懇談のため2か月ぶりに水俣市を訪れた伊藤環境相は、母親の胎内で水俣病になった胎児性水俣病患者と相次いで面会しました。
■坂本しのぶさん
「私もこれからのことを思うと不安です。自分たちのことで精一杯です。家族もです」
■永本賢二さん
「将来は家に残って、ヘルパーさんに助けてもらえたらありがたい」
また伊藤環境相は、水俣病の第一号患者とされる田中実子さんの家を訪ねました。田中実子さんは2歳11か月だった1951年4月、玄関先で「靴が履けない」というひと言とともに突然倒れました。それ以来意思表示をすることはできず、今は24時間介護を受けながら寝たきりの生活を送っています。
同席した関係者によりますと、伊伊藤環境相は「お顔の色がいいですね、意志の強さを感じます」と声をかけたということです。現職の環境相が実子さんのもとを訪れたのは、初代環境庁長官を務めた大石武一氏以来、52年ぶりだということです。
水俣市で開かれた初日の再懇談には、6つの被害者団体と伊藤環境相、熊本県の木村知事などが出席し、最初に伊藤環境相がこれまでの経緯を謝罪しました。
■伊藤環境相
「環境省の職員一人ひとりが公害の歴史と経緯を踏まえつつ、大変辛い状況にある方々にできる限り寄り添って対応できるよう、省をあげて取り組みたい」
再懇談では、団体側が共同で提出していた水俣病認定制度や患者補償のあり方などについての要求書に環境省側が文書で回答しました。しかし、従来の政府の見解を繰り返しただけの内容だったため、被害者側は「ゼロ回答」として反発しました。
午後からはそれぞれの団体ごとに時間を区切って行われ、胎児性患者の坂本しのぶさんらが高齢化する患者の介護の問題などについて文書で要望を伝えました。
■伊藤環境相
「環境省だけの力でできるものではありませんが、関係の県やチッソと相談して、どう改善できるか考えて参りたい」」
このほか8日の再懇談では、実施が義務づけられてから15年が経っている住民の健康調査の問題なども取り上げられ、環境省は2年以内に調査手法を確立したいとしましたが、調査の方法などについては平行線のままでした。
■水俣病被害市民の会 山下善寛会長
「8年間いろいろ言ってきたのにも関わらず、全然前向きな回答がなかったという意味でゼロ回答。これでは水俣病問題を解決させようという姿勢は全然ないと理解していいのではないか」
■水俣病被害者互助会 佐藤英樹会長
Q認定問題や健康調査など色々テーマはあったが進捗は?
「全然ないと思う、今の状況では。患者に寄り添うと言いながら、何もしないということを訴えていかなきゃいけない」
初日の懇談を終え伊藤環境相は、「事務方でさらなる意見交換を行い真摯に検討していきたい」と約束した上で、「自身が水俣病に苦しんでいるのに、自分以外の皆さんのために真摯に人生をかけて情熱をもって取り組んでいるところに感動した」と話しました。
再懇談は、10日と11日にも水俣市や天草市、鹿児島県などで行われます。