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「読書は生きることだった」死刑囚から無罪に 免田栄さんが34年の獄中生活で読んだ本1000冊が熊本大学に

2024年9月25日 20:32
「読書は生きることだった」死刑囚から無罪に 免田栄さんが34年の獄中生活で読んだ本1000冊が熊本大学に
死刑囚として初めて再審=裁判のやり直しで無罪となった免田栄さん。晩年過ごした福岡県大牟田市に、獄中で読んだ本が保管されていました。その数約1000冊。保存・研究のため25日、熊本大学に移されました。

福岡県大牟田市にある集会所。25日、ここから約1000冊の本が運び出されていました。これを読んでいたのは、日本で初めて死刑囚から無罪となった免田栄さんです。34年あまりの獄中生活で読んだ本が、故郷の熊本に移されました。

1948年に人吉市で一家4人が殺傷された事件の犯人として逮捕された免田栄さん。死刑が確定したものの潔白を訴え、1983年に裁判のやり直し=再審で無罪となりました。

■免田栄さん(当時57)
「皆さんのおかげで自由社会に帰って来ました」

その後、2020年に95歳で亡くなるまで大牟田市で暮らしました。地元の集会所に預けた本は、主に獄中で読んだものです。その内容をたどると、死刑囚とされた男性が獄中で何を考え、学んでいったのかが浮かび上がってきました。

免田栄さんは、23歳で逮捕された当時は読み書きが苦手でした。獄中で漢字を覚え、34年あまりで読んだ本は約2000冊と言われています。

現在も残る約1000冊は、大牟田市の集会所で保管されていました。中には、24日に新たに見つかった本も。

■免田事件資料保存委員会 牧口敏孝さん
「冤罪の本がありました。なぜそういうのが起きるのか、人間とはいったいどういう間違いを犯してきたのか、そういうことを、たくさん本を読むことで何とか理解しようとしたんですよ。考え続けたんですよね」

この「免田栄文庫」が25日、熊本大学に移されました。本の目録作成や研究にあたっている、免田事件資料保存委員会の3人です。

■免田事件資料保存委員会 高峰武さん
「司法の在り方、獄中の死刑囚はどうやって無実を訴え続けてきたかということを考える時の大きな手がかりになると思う」

宗教関係の本は、死刑の恐怖を和らげるために読んだのでしょうか。「人間の歴史」について書かれた本には、免田さんが引いた赤い線が確認できます。死と隣り合わせの獄中生活の中で、免田さんが知識を求め続けたことがうかがえるといいます。

■免田事件資料保存委員会 牧口敏孝さん
「免田さんにとっては、読書は生きることだった。追究していくのは“人間とは何か”ということの結論を免田さんはどうとらえたのか。まだここは、これからです」

メンバーは引き続き研究を続け、来年度中の一般公開を目指すとしています。