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山と人をつなぐ 夏山事前パトロールに同行

2024年7月12日 19:52
山と人をつなぐ 夏山事前パトロールに同行

上野キャスター
エブリィでは、8月11日の山の日に向けて登山道に携わる人たちの取り組みをシリーズでお伝えしています。
取材している解説委員の数家さんです。

数家解説委員
山と人をつないでいるのが登山道です。その登山道を今後、誰がどのように維持・管理していくのかをテーマとしています。
今回は、朝日岳方面遭難対策協議会の夏山事前パトロールに同行取材しました。こちらがパトロールの行程です。
1日目は、新潟県の蓮華温泉を出発し、鉱山道経由で雪倉岳避難小屋までのおよそ13キロ。
2日目は、朝日小屋までのおよそ9キロ。
3日目からは、北アルプスと日本海を結ぶ登山道、栂海新道」を通り、栂海山荘までのおよそ15キロ。
最終日の4日目は、親不知に至るおよそ16キロ。朝日岳周辺の登山道、53キロに及ぶ長大なコース。
4日間かけてのパトロールに同行取材しました。

出発地点の新潟県・蓮華温泉ロッジ前。

数家解説委員
「何㎏ぐらいありますか?」

富山県警山岳警備隊 喜多嶋拓海さん
「今、ちょっと分けてもらったんですが、20後半ぐらいですかね、まだぎりぎり許容範囲」

毎年恒例の朝日岳方面遭難対策協議会の事前パトロール。
富山県警山岳警備隊員もメンバーです。

「じゃあ頑張って行ってらっしゃい」

協議会が創設されたのは1965年。
山小屋関係者や事業主、会社員、医師など様々な職種のおよそ25人が所属しています。
糸魚川市から参加する人もいます。

朝日岳方面遭難対策協議会 上原祐一副隊長
「目的は、まず登山道の整備と夏山シーズン前に登山道の危ない所がないかとか、そういったことを点検しています」

副隊長を務める上原祐一さん、会社勤めです。

数家解説委員
「道がないんですか?」

上原副隊長
「道がちょっと崩れていますね」

登山道が崩れていたため、その下をロープを張って通過することにしました。

「一般の登山者入るのきついね」

こうした危険な場所を、一つひとつチェックしていきます。

標高およそ2500m地点では、登山道上にある雪渓を切ってステップを作る作業にあたります。

「硬い、氷や」

強風とガスが流れる中、黙々と作業にあたります。

数家解説委員
「結構急ですが、ステップが切ってあると、とても登りやすいですね」

数家解説委員
「出発から9時間経ちました。1日目です。ようやく雪倉岳避難小屋に到着しました。非常に風が強いです」

2日目も強風の中、パトロールが始まりました。

登山者が道に迷わないよう、赤いスプレーで丸印をつけていきます。

上原副隊長
「広い所は視界不良になると迷いやすいので、足元にマークをつけていきます」

出発からおよそ6時間、朝日小屋に到着です。

「お疲れさまでした」

この日は、朝日岳の山開き、安全祈願祭が行われました。

「気をつけて、またね」
「万歳、万歳、万歳、ありがとうございました」

朝日小屋の恒例となっている小屋のスタッフ総出の万歳三唱。その声を受けて3日目が始まります。

標高2418m、朝日岳山頂からは日本海、振り返れば剱岳を望むことができます。

朝日岳山頂を下ると、いよいよ日本海に至る栂海新道に差し掛かります。

北アルプスと海をつなぐおよそ27キロの登山道です。
この登山道を切り開いたのは、糸魚川市のセメント会社で働いていた故・小野健さんとその仲間たち。
北アルプスと日本海をつなぐ壮大な計画でした。6年の歳月をかけて今から53年前の1971年、全線を開通させました。

上原副隊長
「日本海、日本海」

ここから海抜ゼロを目指します。

下山の途中、登山道上にはいつもの雪渓がありました。

数家解説委員
「どんな状態ですか?」

上原副隊長
「ここは毎年、急斜面で雪渓にステップを切る場所なんですけど、今年はもう雪がほぼなくて作業は短時間で済みそうです」

作業時間はおよそ30分、あっという間に終了しました。

「結構やばいやばい」
「施工不良やぜ」

途中には、栂海新道の開拓を計画した小野健さんの碑が立っていました。
そして、3日目の宿、栂海山荘に到着。
下草刈りをしてきた新潟県の別の団体と合流し、交流しました。

雨具を着ての山歩き。登山道をチェックしながらどんどん高度を下げていくことおよそ8時間。

「海が見えた」
「すごい、ああ、これはすごいわ」
「海が見える」

今回、4日間のパトロールで遭難対策協議会から支給される手当は、一人当たり1000円です。

朝日岳方面遭難対策協議会 橋本洋さん
「特に、そこは深くは考えたことはないですね。ここの山に携わる人たちが好きだからでしょうかね、それが一番だと思います」

上原副隊長
「うちらはまだ仲間がいて楽しくやっているんですけど、これはちょっと持続可能ではないと思っているんですよ。いつかの時点で途切れるとは思うので、これをどうやって維持していくかというのは今後の課題だと思いますね」

「本当に出た、すげえ!」
「イエーイ着いた」
「やば!」

数家解説委員
「上原さん、お疲れさまでした」
上原副隊長
「長かったですね、海行きましょう。もうひと階段ありますよ、行きましょう」

上野キャスター
海まで行ったんですか?

数家解説委員
もちろん行きました。この栂海新道を通る多くの人は、リュックの中に海水パンツを忍ばせています。北アルプスから日本海まで縦走して海に「ドボン」は、8月11日の山の日に放送するふるさとスペシャルでお伝えします。