京都から富山市ファミリーパークへ トラの引っ越し事情とは
京都の動物園で人気のアムールトラが富山市ファミリーパークに引っ越し、7月に一般公開されました。この引っ越しは動物のストレスに配慮して飼育するために行われたものです。公開までの舞台裏を取材しました。
7月6日から富山市ファミリーパークで一般公開されているオスのアムールトラ「オク」、5月に京都府の京都市動物園から引っ越してきました。
「オク」は14歳。人間の年齢でいうと、50代にあたります。京都市動物園が高齢期を迎えるオクに負担の少ない環境で過ごしてほしいと考え、今回、引っ越してきました。「動物福祉」の考え方です。
富山市ファミリーパーク 村井仁志園長「そもそも『動物福祉』を簡単に言うと、その動物がその種らしくいきいきと生活できるようにしましょうということなんですね」
「動物福祉」は、快適な環境で飼育することで動物たちのストレスを減らそうとする考えのことです。
動物の状況や状態は「栄養」、「環境」、「健康」、「行動」、「精神状態」の5つの観点から評価され、良くしていこうという考えが近年、世界的に広がっています。
2010年に京都で生まれた「オク」は、人気者として愛されてきましたが、京都市動物園は広さが十分ではなかったといいます。
京都市動物園の飼育員「敷地が狭いほうの動物園なので、大型のネコ科動物には十分な敷地面積が取れないので動物福祉的にも良くない」
京都の夏の暑さに耐えるのも、年々難しくなってきていて、良い受け入れ先を探していました。
富山へと出発する日、京都市動物園では多くの人が別れを惜しみました。
京都市動物園の飼育員「(オクの転園を)惜しむ声があったが、皆さん大体が『寂しいけどオクのためなら』とか、『残念だけど富山で元気にやってくれたら』という前向きな声が多かった」
生まれて初めて京都を離れた「オク」。富山市ファミリーパークでは一般公開にむけて訓練が行われてきました。
トラは警戒心の強い動物です。慣れない環境のせいか、はじめは展示スペースに出るのを怖がっていました。
ファミリーパーク 土屋知己飼育員「外に出たらご飯がもらえるだったりとか、あとはプールがあったりとか、慣れさえしてくれれば外楽しいなとなって、毎日展示できるようになると思う。(公開までは)ちょっとまだかかりそうですね」
飼育員はあまり刺激を与えないように、時間をかけて接してきました。
広い飼育スペースが快適なのか、オクは次第に慣れてきて、こんな様子も。
「京都(市動物園)の時から、リラックスすると仰向けで寝るらしくて、ここ最近ようやく見られるようになって。レアです」
そして引っ越しから1か月半あまりかけて一般公開されました。
来園者「かわいいです」
ファミリーパークの展示スペースには、水遊びをする場所や爪をとぐ場所もあります。あくびをして、リラックス。すっかり富山の環境に慣れた様子です。
村井園長「飼う施設はどこもそんなにたくさんは持っていない。だけどトラを絶やしたくはない」
ファミリーパークには国内最高齢となる19歳のメスの「ミー」もいます。高齢のトラ2頭がゆっくりと過ごす様子を見れば、動物の健康や幸せについて考えるきっかけにもなるかもしれません。