「みずほへ。元気ですか?」震災で亡くした妹に…自らの経験と向き合い映画制作【東日本大震災】#知り続ける
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宮城県石巻市大川地区出身の映像作家・佐藤そのみさん。
県内での上映に合わせて行われた舞台あいさつで、佐藤さんが語ったのは家族との絆、そして、故郷への思いだった。
石巻の映画館で、先週からある映画の上映が始まった。
監督を務めたのは、石巻市大川地区出身の映像作家佐藤そのみさん(28)。
【映画「春を重ねて」より】
「妹さんの安否を知ったのはいつのことですか?」
「震災から2日目です」
震災で児童74人が亡くなった大川小学校を巡る住民の思いをもとにした映画「春をかさねて」。
そして、大切な人を亡くした当時の子どもたちが言葉を紡ぐドキュメンタリー、「あなたの瞳に話せたら」
いずれも、そのみさんが大学で映画を学んでいた当時、自主制作した作品だ。
映像作家・佐藤そのみさん
「私は大川小学校で2歳下の小6の妹を亡くしたので、とても映画どころではなかった、震災直後は。それでも映画をここで撮りたいという夢が高校生大学生になっても変わらなくて、フィクションとドキュメンタリーと2つのかたちで地元と向き合ってみようと作ったのがこの2本です」
そのみさんの妹・みずほさんは大川小学校で津波の犠牲となった。
自らの経験と向き合い、ドキュメンタリー映画を制作したのは震災から8年半が経ったとき。
監督を務めたそのみさん自身も、カメラの前に立った。
【映画「あなたの瞳に話せたら」より】
「みずほへ。元気ですか?みずほはもう21の年だろうか。あっという間だね。お姉ちゃんは、あのあと中学と高校を卒業して、東京に出て映画を勉強する大学に入りました」
妹・みずほさんへの思いを綴るとともに、同じく大川で震災を経験した卒業生たちにカメラを向けた、そのみさん。
映画館に訪れた人からは、あたたかい拍手が送られた。
映画を観た人
「いま生きている家族と楽しく仲良く暮らす時間を大切にしてほしいと思った」
「14年という時間が経とうとしているけど、経てきた時間は本当に悲しみが詰まっていたけど、決して無駄ではなかったと感じた」
映画の舞台となった大川小学校は震災遺構として保存され、多くの人が祈りを捧げ、避難の教訓を学び続ける場となっている。
映像作家・佐藤そのみさん
「大川小学校というたくさん子どもと先生が亡くなった場所、特殊な環境の話ではあるけど、震災後の宮城の人にも、何か自分と共通点を見つけてもらえる作品ではと思う。登場人物の置かれた境遇だけではなく、緑豊かな景色や家族の関係性ぜひ見に来ていただけたら嬉しい」
これまで配給会社に勤めながら、制作した映画の自主上映を行ってきたそのみさん。
去年、次の一歩を踏み出した。
若手の映画作家を育成するプロジェクトに監督として選ばれ、新たな作品に取り組んでいる。
映像作家・佐藤そのみさん
「本当はきょうの2作品を作り終えて映画をやめようと思っていた、6年前は。でも、上映を続けたおかげで映画を作って見せるってすごくやりがいがあるし、またやりたい気持ちでいます。震災とか地元というテーマからはいったん離れて、ほかにも描きたいテーマがあるので一個一個挑戦していこうと思う。といっても地元のことは私にとって大事な要素、場所なのでまたいつかここでも撮れるように腕を磨いていきたい」
震災から間もなく14年。
時を重ねて自らの体験と向き合い続けるそのみさんの作品は、県内各地の映画館で3月にかけて上映されている。