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【特集】研修医が挑むトリアージ訓練 阪神・淡路大震災の教訓から未来の命を救う〈仙台〉

2024年12月14日 10:00
【特集】研修医が挑むトリアージ訓練 阪神・淡路大震災の教訓から未来の命を救う〈仙台〉
東日本大震災』から13年9か月。
災害発生時に患者の緊急度などに応じて治療の優先度をつける「トリアージ」は、『阪神・淡路大震災』を機に日本で普及し『東日本大震災』でも行われた。

仙台の病院で、「トリアージ」訓練に初めて参加した研修医に密着した。

研修医含め250人が参加「トリアージ」訓練

訓練「ただいま大きな地震が発生しました」

この日、医師や看護師・事務スタッフら合わせて250人が参加して、災害対応訓練が行われた。

看護師「テントの中にお願いします」

訓練は、宮城県沖を震源とする震度7の地震が発生し、多数の患者が運び込まれる想定だ。

医師「手を握れますか?目を閉じてください、目を開けてください。OKなので黄色です」

最初に、患者の緊急度や症状に応じて、治療・搬送の優先度をつける「トリアージ」を行う。

先輩医師「最初は発声できるかだから、発声と呼吸と。名前しゃべってもらうのはそのあとでもいい」

水色のビブスをつけているのは、研修医。

研修医「お名前・年齢・性別お願いします。しゃべれますか?わかりますか?なしです、赤タグです」

『阪神・淡路大震災』に必要性認識

トリアージタグは、緑は歩ける程度、黄色は意識はあるが大けが。赤は治療の緊急度の高い状態、黒は治療不能だ。

医師「時間が短い方が、トリアージとしては成功です」

「トリアージ」の必要性が認識された大きなきっかけは、1995年の『阪神・淡路大震災』だった。
当時は、病院も地震の被害を受ける中、次々と搬送される患者の「トリアージ」がほとんど行えず救えた命が救えなかったケースもあった。

2011年3月の『石巻赤十字病院』の映像。
「トリアージ」は、『阪神・淡路大震災』を教訓に『東日本大震災』の医療の現場で行われていた。

仙台医療センター・江面正幸院長
「災害時は医療資源が限られてくる中で、対応しなければいけない患者は増える。どの患者に対処するのが一番いいかというのが『トリアージ』。どの患者を重点的に対応しなければいけないという考えに、変えていかないと対処できない」

「トリアージ」の後に、患者が運ばれるのは、病院1階の待合室に並べられた簡易ベッド。

東日本大震災がきっかけで医師を志した研修医

研修医「どうされたんですか?」
患者役「2階のベランダから飛び降りて…」
研修医「2階のベランダから飛び降りた。かかとから着地した感じ?」

訓練では、患者の治療も研修医が担当する。

研修医・千田知佳さん「ちょっとバイタル(脈拍)だけ見させてください」

研修医のひとり 千田知佳さん(27)。
4月から『仙台医療センター』に勤務し、訓練に参加するのは初めてだ。

千田さんが担当する黄色タグ(中程度)のケガの患者のエリアでは、時間の経過とともに次々と患者が運び込まれる。

焦らず、慌てずー。
自分に言い聞かせながら、一人一人の患者と向き合う千田さん。
医師を志したきっかけは中学1年生の時に経験した『東日本大震災』だった。

研修医 千田知佳さん
「父がまちの医者をしていて志したけれど、ここで研修したい要因として災害医療の拠点病院なので、私も『東日本大震災』を経験している身なので、その時のことを思い出すと、あの時は守られる立場だったのが、被災した方の力に微力ですがなれるようになったということで、身の引き締まる思い」

容体の急変にも、対応が求められる。

医師「診断がハッキリしてないけど、バイタル崩れてきているので”赤タグ”でお願いしたい」

刻々と変わる状況を把握して、スタッフの配置を調整するのが災害対策本部。

スタッフ「”緑タグ”に数名ですか?4人くらい。緑ブースに4人。搬送スタッフをヘルプお願いします」

訓練は、病院も被災し一部の医療器具が使えない想定で行われた。

研修医 千田知佳さん
「機材とかも足りない中で、うまくできた自信は正直なかった」

次の災害を担うのは今の若手医師

『仙台医療センター』は、災害拠点病院として宮城県全域から重症患者を受け入れるほか、派遣される医療チームDMATの活動拠点になる予定だ。

仙台医療センター・江面正幸院長
「いざ災害がくると、日常とは全く違うシチュエーションで医療をやらなければいけない。『南海トラフ』を、実際に担当するのは今の若い人たち。必然になっていることに対して備えていくことは非常に大切」

『阪神・淡路大震災』から、来年1月で30年。

一人でも多くの命を救うため、患者の治療に優先度をつける「トリアージ」。
研修医たちは、その責任の重さを胸に刻み、災害医療の教訓を受け継いでいく。

研修医 千田知佳さん
「実際の災害の時は、小さい子もたくさん受傷して病院に来ると思うので、一つ一ついかせることがあると思うので積み重ねて、いつか災害が起きた時も力になれる医師になりたい」

最終更新日:2024年12月14日 10:00