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離婚後「共同親権」課題は?政府が改正案提出見通しも専門家は懸念「丁寧な制度設計必要」《長崎》

2024年2月27日 6:30
離婚後「共同親権」課題は?政府が改正案提出見通しも専門家は懸念「丁寧な制度設計必要」《長崎》

離婚した後も、父親と母親の双方に親権を認める「共同親権」の導入に向けて、政府が今国会に民法改正案を提出する見通しです。

子どもに不利益が生じないようにするために必要なこととは・・・。

専門家に話を聞きました。

親が子どもの世話や教育、財産管理を行う権利で義務ともされている「親権」。

日本での離婚件数は、おととしが約17万9000件で、現行の法制度では離婚後は、父親か母親のどちらか一方が持つ「単独親権」が規定されています。

そんな中、政府は今国会に双方が親権を持つ「共同親権」の導入に向けた民法改正案を提出する方針を固めました。

その理由が・・・。

(長崎大学 池谷 和子准教授)
「親の方も別れてしまったらもう終わりというのではなく、金銭面でもそれ以外の面でも、子どもたちが大人になるまで、両方ともが関わっていくということは、やはり重要なんだと考えられてきたから」

子ども家庭庁の調査によりますと、一人親世帯で離婚した親と面会交流を行っているのは、母子世帯が約30%、▼父子世帯が約48%。

養育費を受け取っている母子世帯は約28%、父子世帯は約9%となっています。

また、法務省が世界24カ国を対象に行った調査によりますと、単独親権のみを採用しているのは、日本以外ではインドとトルコのみで、海外では原則、共同親権、または共同親権を選択できるとされています。

先月、法務省の法制審議会の部会で取りまとめられた案では、両親が離婚する場合に、双方が協議の上で合意すれば共同親権を選べると規定。

合意が困難な場合でも、家庭裁判所が共同親権とするか、父親か母親いずれかの単独親権とするかを判断するなどとしています。

また、家庭内暴力など子どもの心身への悪影響が懸念される場合は、単独親権にするとしたほか、離婚時の取り決めがなくても養育費が支払われない場合に、法的に請求や差し押さえをしやすくする案も盛りこまれました。

(長崎大学 池谷 和子准教授)
「子どもにとって、何が一番いいのかを考えていこうという時に、最低でも大人になるまではどちらとも関わっていくことが必要だし、一緒にいないからお金を払わない、養育費払わないみたいな親もいたりするので、ちゃんと責任を果たすと。こういう意味で、共同親権制度が諸外国でも導入されてきて、その方がいいのだろうと」

一方、NPO法人DV防止ながさきの中田 慶子さんが指摘するのは。

(DV防止ながさき 中田 慶子さん)
「今でも、とても(虐待や暴力を)裁判所で認めてもらうのは大変。ものすごくハードルがある。きちんとそういう大変な状況を、誰がどうやってわかってくれるのか、ものすごく不安がある」

長崎市では、2017年1月に調停の結果、面会交流を命じられた母親が、子どもを別居中の父親に会わせに行ったところ、刺殺される事件も発生。

(DV防止ながさき 中田 慶子さん)
「裁判所は決めるけど、安全に会わせる場をつくるとか、第三者機関を充実させるとか全然ない。そういう状態で、これから共同親権を進めていって大丈夫なのか。もう少しゆっくりと丁寧な制度設計をしてほしい」

特に、DVや虐待などがある場合は「慎重な議論が必要だ」と話しています。

共同親権についてどう思うか、街の声は。

(市民)
「(共同親権を選べる)方が、子どもにとって将来的にいい方向に行くのではないかと思う」

(市民)
「いい方にはいいのかもしれないが、やはり別れるとなると何からの理由がある。そこは難しいのかなという感じはする」