普及進まぬ精神障害者のスポーツ ストレスや困難から“守る”だけで良いのか? “当たり前に”スポーツ楽しめる環境を… 「ソーシャルフットボール」日本代表の男性の思い 鳥取県

精神障害のある人が参加する「ソーシャルフットボール」をご存じでしょうか。身体障害者のスポーツが広がりを見せる中、精神障害のある選手が活躍できる場を作ろうと、今年1月、日本で初めて「ソーシャルフットボール」のアジア大会が開かれました。今回初めて、代表に選ばれた20歳の若者を取材しました。
1月14日から18日にかけて、大阪で精神障害者の参加する「ソーシャルフットボール」のアジア大会が初めて開かれました。競技は、基本的に5人でプレーする「フットサル」と同じルールで行われます。普及途中のスポーツということもあり、今回出場したのは日本、韓国、台湾の3チームだけでしたが、同じ期間に開催されたシンポジウムには、中国なども加わり6つの国と地域が参加しました。3つの代表チームが熱戦を繰り広げ、日本の代表チームが初優勝を果たしました。
鳥取市にある社会福祉施設「うぶみ苑」。ここで代表チーム最年少の浦田凌吾さん(20)が働いています。今回初めて日本代表に選ばれ、国際大会の舞台に立ちましたが、普段は、施設の職員として利用者の就労支援などを行っています。
取材中に記者が全く感じることはありませんでしたが、実は浦田さんには「対人緊張」や「感覚過敏」といった特性があります。人前で過度に緊張したり、特定の音が不快に聞こえストレスを感じるなど、状況によっては日常生活にも影響があるといいます。
浦田さんがフットボール(サッカー)と出会ったのは小学生の頃。兄弟がサッカーをしていたため、自然とプレーを始めました。その後、中学校、高校とサッカーを続けてきましたが、チームメイトとのコミュケーションが取りづらく、1人での練習が楽しい時期もあったと振り返ります。
ソーシャルフットボール 日本代表 浦田凌吾さん
「昔はサッカーを楽しいと多分思えてなくて。やっぱり集団の中に入るって、対人緊張もあってつらい時があるんです。サッカーって野球とかと違って、プレーが連続してるスポーツなので、ミスしても切り替える時間がなくて…。僕だけじゃないと思うんですが、障害がある人って精神的なショックやメンタル的な浮き沈みって大きいと思うんです。だから、球蹴り遊びが楽しいっていう感覚。競技ではなく、ボールを蹴っているのが楽しいって感覚だったと思う」
高校生になると少しずつサッカーの楽しさが分かるようになり、同じ時期にソーシャルフットボールの存在を知り、鳥取県中部の湯梨浜町から鳥取県東部の鳥取市に通いながら練習を継続。3年生の時には、全国大会にも出場しました。高校卒業後も練習を続けたいと、フットボールの指導者の紹介で、周囲のサポートを受けながら働くことのできるうぶみ苑への就職を決めました。社会人になってからは、代表選抜のキャンプに参加するなど、実力を高めていきます。
代表に選ばれたのは、アジア大会が1か月後に迫った去年12月のこと。湯梨浜町の実家に帰っていたタイミングで連絡があり、家族と一緒に喜びをかみしめました。そんな浦田さんには、精神障害者スポーツへのある思いがありました。