正月用に使うもち米は6トン!?江戸時代から愛される老舗もち屋「あわびや」の年末
愛媛県今治市にある「あわびや」は創業272年。地域の人たちに愛され続ける老舗もち屋の年末に密着しました。
創業272年…お餅の瑞々しさがこだわり!店の誇りは5升の鏡餅
先月30日。今治市の本町商店街に明かりが灯る一軒のお店。
十代目 近藤駿次郎さん:
「これは店に出すお餅と予約されている方々へのお餅の準備をしている」
創業は江戸時代の1752年、270年以上の歴史がある老舗餅店「あわびや」です。
年末は正月用の餅づくりで1年で最も忙しい時期です。店頭に並べられるのは定番の平餅から、通常の50倍の大きさだという5升サイズ(重さ10キロ)の鏡餅まで。
十代目 近藤駿次郎さん:
「こんなに大きいのは滅多につくることはないですが、年末のこの時期に毎年決まって注文してくれるのでうちの誇りのひとつです」
十代目の駿次郎さん。店を継いで3年になります。
あわびやの誇り、5升サイズのお餅を作るのは父の洋さんです。
もち米は「ヒヨク」という品種を使い、代々受け継がれてきた道具で、変わらぬ製法であわびやの味を守り続けています。
八代目 近藤洋さん:
「瑞々しいお餅をつくるところがこだわりです」
Q.今日は餅何個つくるんですか?
「ちょっと(多すぎて)分かりません」
お客さん:
「あん餅ある?」
駿次郎さん:
「ごめん、あん餅10個ちょうだい」
まだ朝の5時すぎですが、早速お客さんが。
お客さん:
「正月用に全部で50個。おいしいですよ。ここのしか食べんから」
あわびやの餅で新年を迎えるのが定番なんですね。
十代目 近藤駿次郎さん:
「朝早くから来てくれて光栄です。ただ表向きは8時から営業ですので、皆さんよろしくお願いします」
一番の繫忙期は30人のアルバイトの力も借りて
営業時間に向けたこの時間が、お餅づくりのピーク、店の中は大忙しです。正月用の餅づくりで使うもち米の量は、なんと6トン!年末は30人のアルバイトの力も借りて餅をつくり続けます。
十代目 近藤駿次郎さん:
「ここから人がたくさん来て学生の皆さんに前に出てもらいながら、頑張って皆さんをお迎えしたいと思います」
午前8時。
店員:
「ちょうどお預かりしました。ありがとうございます」
親子連れ:
父「お正月には来ます。焼いてのり餅かな」
娘「しょうゆ付けて食べる」
こちらは、予約のお客さんですね!
お客さん:
「こどもにお雑煮用のお餅を。大阪と広島から帰ってきます」
午前9時、店の前には行列。そして注文の電話も次々とかかってきます。対応に追われる十代目の駿次郎さんですが…
十代目 近藤駿次郎さん
「ぎっくり腰を3,4日前にやってしまって」
体にムチを打ちながらの作業。お昼は、駿次郎さんの母・美保さんが作ったまかないでしばしの休憩です。
スタッフ:
「毎年30日のお昼は絶対カレーなんです。このカレーを食べないと年は越せないです」
「あわびや」の由来は?歴史と変わらぬ味を守り続けて
1752年創業のあわびや。今から28年前の映像に、父・洋さんが、あわびやの歴史について語っていました。
28年前当時の洋さん:
「今治城下のお侍さんに魚やアワビをおさめよったらしいんですよ。(ご先祖様が?)それでお前のところは『あわび屋』名乗れというような話も聞いたことあるんですけど」
長年この場所で、変わらず商いを続けてきました。
八代目 近藤洋さん:
「この1年振り返ってみるとコロナがあけたという実感はあった」
コロナが収まったと思ったのも束の間…
「材料だけでなくガス・水道・電気も(値段が)上がりました」
ここ数年は激動の日々。値上げも苦渋の決断でしたが、変わらず来てくれるお客さんの存在が力になっています。
2023年、最後の営業日。
常連客:
「80個」
美保さん:
「毎年来てくれるんね。一年一年大きくなっていくね」
店頭だけでなく、近所のお寺にお餅の配達です。
美保さん:
「こちらが5合」
住職:
「こちらでお飾りさせていただきます」
大晦日の午後4時。営業が無事終わりました。
八代目 近藤洋さん:
「皆さん手を合わせてください。1年間今年もありがとうございました」
2023年、最後のまかないは年越しそば。
近藤洋さん:
「本当に安堵の中食べている。嬉しいです、一口一口が」
272年、地域に愛され続けるまちのおもち屋さん。
洋さん:
「前の年よりももっと良く、楽に仕事ができたらいいなと毎年思っています」
駿次郎さん:
「いつもの常連さんに改めて感謝しながら、一年もう一年と勉強しながら頑張っていきたい」
きょうもあわびやはいつもと変わらないあの味で、お客さんを待っています。