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姿を消しつつあるドライブイン 500円のかに飯に大盛りカレー 古き良き昭和の面影

2023年12月31日 12:23
姿を消しつつあるドライブイン 500円のかに飯に大盛りカレー 古き良き昭和の面影

ドライバーの休憩や食事の場として欠かせない存在だったドライブイン。

高速道路の延長や「道の駅」の台頭などにより、利用するドライバーは少なくなりました。

こうした中、いまもなおドライブインとして営業を続ける店を取材しました。

ドライバーの休憩や食事の場“ドライブイン”

少し薄暗い店内に、足を崩してくつろげる小上がりはもちろん、いたるところに長居する人のための雑誌や漫画が置かれています。

北海道長万部町で最も古いドライブイン「かに精」です。

創業は1971年。

札幌・小樽と函館を結ぶ国道5号沿いに店を構え、長距離ドライバーの休憩や食事の場として親しまれてきました。

メニューも豊富です。

熱々の鉄板でジンギスカンと卵、甘辛いタレを絡めて食べるスタミナ定食に、野菜がたっぷりと入った味噌ラーメン。

500円で食べられる大盛りのカレーライスと、ドライバーの胃袋を満たしてくれます。

一人で黙々と調理をするのは、2代目の店主・千葉由美さんです。

店を引き継いだ25年前はドライブイン全盛期だったといいます。

(かに精店主 千葉由美さん)「ゴールデンウィークとか車が大渋滞だから、上りも下りも。私が店に入って来られないとか。忙しかったわ、忙しかった」

ドライバー激減で相次ぐ閉店

1960年代後半のマイカーブームをきっかけに全国的に急増したドライブイン。

ここ長万部町には、多い時には12軒ものドライブインが立ち並び「ドライブイン街」として、マチには活気がありました。

しかし2001年以降、高速道路が函館方面まで延伸していったことによって、国道を使うドライバーが激減。

多くのドライブインが店をたたみ、今では町内に4軒が残るのみとなりました。

(かに精店主 千葉由美さん)「いまは(トラックドライバーが)減ってきているからね。運転手に聞いても年配の人が多い。若い人が入ってこない。入ってもすぐに辞めちゃうんだって」

トラックのドライバー不足も客の減少に拍車をかけていました。

この日、ひとりの長距離ドライバーがやってきました。

七飯町から札幌に向かう途中で立ち寄りました。

長距離ドライバーにとって食事が唯一の楽しみです。

(トラックドライバー)「もう満足です。ここに来たらほとんどこれ(スタミナ定食)ばっかりです。(食事が)唯一の楽しみです。昼を食べることが生きがいで走っているようなもん」

札幌に向けて出発しようとすると、店主の千葉さんが表に駆け出してきました。

撮影もあって十分に休憩できていないと思った千葉さん。

食事代はサービスするとお金を返しに来ました。

千葉さんがこだわってきたドライバーへの気遣いです。

(かに精店主 千葉由美さん)「雑な仕事になってしまうことを経験してきたので、こんなんじゃダメだなって。とにかく客を入れて、ダメだなって思いながらやったこともあった。それを後悔したこともあるので、それはもうしたくないから。丁寧な仕事をしていく、できる範囲で」

人と人とのつながりを大切にするドライブイン。

古き良き時代の名残りがここにはありました。

変わらぬ味を提供し続ける店

創業当時から姿を変えず、営業を続けるドライブインがあります。

白老町の国道36号にある「かに太郎」です。

店主の山下敏男さんは、今年で87歳。

店を始めて50年以上、山下さんは変わることなく切り盛りをしてきました。

この店の名物は、かに飯。

現在のメニューはこのかに飯のみですが、1つ500円という値段は、創業当初から変わりません。

さっそく1組の客が訪れ、注文が入りました。

(かに太郎店主 山下敏男さん)「炊き立てのご飯おいしいからなー」

こだわってきたかに飯。

昔と変わらぬ味を提供し続けています。

(客)「幸せや」

(客)「タケノコうまい」

(客)「カニの味もおいしいんですけど、上のタケノコとシイタケがすごくおいしいです。絶対みんな食べに来た方がいいです」

その後もこのかに飯を求め、客が訪れました。

海を見ながら食べられるこのロケーションも、他の店とは一味違うところです。

いまは1日に数十食しかかに飯を作れないという山下さん。

それでも毎日1人で営業を続けています。

(かに太郎店主 山下敏男さん)「病院行ってないんだよな。痛いところないんだよな。薬もゼロ、胃の薬も何も飲んでない。安く食べてもらって喜んでもらって、いろんな人が来て、話をして、それが長生きの秘訣」

500円のかに飯は、この時代儲けはありません。

しかし、客の喜ぶ姿を生きがいに山下さんはきょうも店を開け続けています。

新たな挑戦で出店オファーが殺到

一方、時代の変化をとらえながら新しいことに挑戦しているドライブインがありました。

十勝の清水町にある「ドライブインいとう」です。

店の名物は道産の豚肉にオリジナルの甘辛いタレで味付けした豚丼。

いまも幅広い世代に愛されています。

(客)「肉もやわらかくて大変おいしかったです」

(客)「おいしい」

「ドライブインいとう」は1973年に創業。

家族で経営を始め、食事の提供だけでなく農産物などの販売も行っていました。

近年はスタッフの人手不足に悩まされていましたがー

料理の配膳はなんとロボットが行っています。

2年前に150万円をかけて導入をしました。

さらに2004年にはドライバー客が減ることを想定し、オリジナルの豚丼のタレを販売します。

(ドライブインいとう 伊藤友理社長)「店をやっていて、高速道路ができるって話が聞こえてきた。ピークだったころ、バイクの客やトラックの客がけっこう来ていたが、年々少しずつ減ってきたのをきっかけに、タレを販売してみようかってなって」

この販売をきっかけに物産展へのオファーが殺到し、新千歳空港に出店することにもつながりました。

(ドライブインいとう 伊藤友理社長)「一番は動くこと。自ら宣伝に行くことかなと思っています」

姿を消しつつあるドライブイン。

それでも利用してくれる人のためにと思い続ける店がある限り、ドライブインが消えることはないのかもしれません。