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【特集】新潟の伝統が世界に ユネスコ無形文化遺産へ「村上大祭」 人々の願いを込めた屋台巡行 《新潟》

2024年3月10日 18:25
【特集】新潟の伝統が世界に ユネスコ無形文化遺産へ「村上大祭」 人々の願いを込めた屋台巡行 《新潟》
村上大祭

国の文化審議会が、村上大祭の屋台行事を「ユネスコ無形文化遺産」の追加対象に選定しました。今回は、この村上大祭の屋台行事に注目します。

ユネスコ無形文化遺産に「村上大祭」が

新潟の伝統がまた世界で認められるかもしれません。2023年12月、国の文化審議会が「村上大祭の屋台行事」をユネスコ無形文化遺産の追加対象に選定しました。


どんな無形文化遺産が登録されている?

日本のユネスコ無形文化遺産にどんなものが登録されているかといいますと、能楽、歌舞伎、手すき和紙、和食、風流踊、小千谷縮、越後上布など。

約500年前から柏崎市に伝えられてきた古典芸能の「綾子舞」、魚沼市・旧堀之内町で毎年8月に踊り継がれてきた盆踊りの「大の阪」。新潟が誇るこの2つの踊りは、衣装や持ち物に趣向を凝らしてお囃子に合わせて踊る「風流踊」として登録されています。

そして今回、京都の祇園祭りも含まれる「山・鉾・屋台行事」への追加対象になったのが村上大祭です。

1月26日、村上大祭をユネスコに追加提案しようということが決まり、3月末までに提案書を提出して、2024年11月に審議決定される予定だということです。

「近づくと血が騒ぐお祭り」

村上大祭は毎年7月6日、7日に行われ、太鼓などに先導された19台の「おしゃぎり」と呼ばれる屋台が各町内を巡行する「お旅神事」という形のお祭りです。

村上まつり保存会 渡辺明会長
「近づいてくると、なぜか血の騒ぐお祭りなんです。見えないパワーがありまして、それに向かって19町内が協力して本番に向かって行動していく。お正月よりも、お盆よりも、まずお祭り。7月7日、これが一番大切なのが村上の人の共通点ではないでしょうか。今回突然、追加対象のお話を頂きまして、村上の伝統が世界に認められるようになったんだなと改めて実感したところです」

村上大祭とは

あらためて、村上大祭とはどんなお祭りなのでしょうか?

村上市郷土資料館 建部昌文館長
「村上大祭が始まったのが今から391年前です。西暦1633年の旧暦6月7日に始まったと伝えられています。村上地方総鎮守の西奈彌羽黒(せなみはぐろ)神社の例大祭になります」

参道脇に村上大祭の記念碑がある西奈彌羽黒神社、元々は違う場所に建っていました。

荷車に太鼓を積んで引き回したのが始まり

城下町・村上のシンボルでもある臥牛山。昔、村上城があった山です。

本丸の位置は山頂のあたり。

本丸部分の下、傾斜が緩やかになったあたりに西奈彌羽黒神社が建てられていました。

村上市郷土資料館 建部昌文館長
「当時、村上藩主だった堀直竒公が、お城から西奈彌羽黒神社を見下ろすのは恐れ多いということで、現在の場所に移しました。この時、西奈彌羽黒神社の遷宮をお祝いして、大町地区の人たちが荷車に太鼓を積んで、その太鼓を打ち鳴らしながら街中を引き回したというのが村上大祭の始まりであると伝えられています」

2階建てになったのはいつから?

荷車で始まったという村上大祭ですが、私たちが知っているのは絢爛豪華な「おしゃぎり」が引き回される村上大祭。いつからこういうお祭りになったんでしょうか。

村上市郷土資料館 建部昌文館長
「町人が経済的に豊かになった江戸時代の中期頃から、今のような2階建ての屋台になりました。その中で1番古いのが、1760年に作られた肴町の屋台だということから、それが分かります」

人々の願いが込められた「おしゃぎり」

村上市三之町にある村上市郷土資料館、愛称「おしゃぎり会館」。歴史資料のほか、実際にお祭りで使うおしゃぎりの実物3台が展示されています。1台は修復作業中ですが、残る2台はその姿を近くで見ることができます。

村上市郷土資料館 建部昌文館長
「おしゃぎりに乗せる物がそれぞれ町内によって違いますが、上町のおしゃぎりの乗せ物は「大凡鍾(だいぼんしょう)」です。凡鍾の響きは人間の煩悩をなくすと言われています。町の人の悩みをなくしたいという願いが込められている乗せ物になっています。これを作った方は有磯周斉という方で、彫刻技術が素晴らしいということで殿様から苗字帯刀を許された方です」

“平和の象徴”が乗せられた「おしゃぎり」も

一方、こちら大町の「おしゃぎり」は?

村上市郷土資料館 建部昌文館長
「 乗せ物は「諫鼓(かんこ)に鶏(とり)」です。これは中国の伝説で、皇帝が『自分の政治で改めるところがあればこの太鼓を鳴らして知らせなさい』というお触れを出したんです。ところが良い政治が行われていたために誰も太鼓を叩く人がおらず、しまいには太鼓に鶏が乗ったということで、平和の象徴とされている乗せ物になります。乗せ物は各町内の願いや思いが込められています。全町内でも違っていますので、そこも見どころになるかと思います」

おしゃぎりを外に出すには

展示されているうちの3台はお祭りで使う現物。

ということは、これを資料館の外に出さなくてはいけないんです。

村上市郷土資料館 建部昌文館長
「ここを両側に開いて出すことになります」

普段、おしゃぎりはどこに保管してある?

展示されていない「おしゃぎり」は普段どうなっているのか、特別に保存会の渡辺会長に見せて頂きました。

村上まつり保存会 渡辺明会長
「(保管庫に)屋台がバラバラになって収納されています」

小町(こまち)のおしゃぎり保管庫。煌びやかなおしゃぎりが仕舞われているとは思えませんが、その中には・・・

村上まつり保存会 渡辺明会長
「200弱ぐらいの部材があります。漆の塗ってある部分と金箔の塗ってある部分は、全て布に包んで縛って木箱に収納してあります」

部材はバラバラに分解されているので、祭りの時に組み立てるのはかなり大変そうですが。

30人以上集まって組み立てる

村上まつり保存会 渡辺明会長
「小町の場合は人数が少ないので、前の週の日曜日などに集まって組み立てます。30人以上で集まって、組み立ては3時間半ほどです。乗せ物の大黒様などは事前に組み立てて、私の家にいつも飾っています」

こうした「おしゃぎり」の組み立て方も村上大祭の伝統のうち。村上の皆さんが代々受けついできたからこその、ユネスコ無形文化遺産追加選定なのでしょうか。

「盛り上がる仕掛けを考える」

村上まつり保存会 渡辺明会長
「村上市も含めて、楽しく追加登録の決定を迎えられるような形、また、決定後はさらに盛り上がっていけるような仕掛けを今から色々考えていきたいなと思っています」


2024年2月15日「夕方ワイド新潟一番」放送より