台風10号「安岐ダム緊急放流」ルール通りの事前通告できず 「準備できない…」下流の住民は 大分
今回の台風で大分県国東市の安岐ダムでは緊急放流が行われ、下流の住民に対し、安全な場所への避難が呼び掛けられました。
ただ、県の事前連絡の遅れが明らかに。
課題が浮き彫りとなったこの日の緊急放流について詳しくお伝えします。
8月29日、台風による大雨で、国東市安岐町の安岐ダムでは満水になるおそれがあるとして緊急放流が行われました。
緊急放流実施前の安岐川の様子です。この時、すでに水位は上昇。
安岐川ではこの日、堤防が決壊し、氾濫も発生しました。
当時の様子について住民は…
◆安岐ダムの下流に住む人
「これを超えて、畳が2枚ぐらいあるところまで(水が来た)」
「雨水は一番最盛期は橋を打ち上げる程度だった」
緊急放流はダムの水位が限界に達することが予想された場合、「決壊」という大規模な被害につながる最悪の事態を防ぐために行われます。
ただ、それでも緊急放流により被害が出ることも。
2018年の西日本豪雨では愛媛県の2つのダムで緊急放流が実施され、下流ではあわせて8人が亡くなるなどの被害が出ました。このとき、住民への事前の周知の在り方が問われることに。緊急放流の際には避難するための十分な時間を設けることが求められます。
しかし…
◆佐藤知事
「下流の方々にとって大変不安を与えてしまい、結果として遅れになった」
3日の定例会見で佐藤知事はマニュアルで決められた事前通告が遅れ、国東市に対して、謝罪したことを明らかにしました。
県によりますと、緊急放流の事前通告は開始3時間前と1時間前に行うことにしてます。
では、今回はどうだったのでしょうか。
8月29日の正午時点では安岐ダムの水位は平常時から大きく変わっていませんでした。
しかし、午後1時にはダムの雨量計で1時間に60ミリを超える非常に激しい雨を観測。水位が急上昇したため、県は午後3時から緊急放流を始めることを決め、午後1時半に国東市に連絡をしました。
本来3時間前に行う必要のあった最初の通告は1時間半遅れました。
この日の国東市周辺には活発な雨雲が流れ込んでいましたが、ダムの雨量計は午後2時時点で1時間に80ミリを超える猛烈な雨を観測します。
水位はさらに上昇したため、県は緊急放流を30分前倒し、午後2時半から行うことを決定。
30分前の午後2時に国東市に再度連絡をしました。
本来1時間前に行うべき通告は結果として30分遅れることになりました。
雨はその後、次第に収まり、緊急放流は開始からおよそ3時間後の午後5時すぎに終了。
県によりますと、緊急放流による被害は確認されていないということですが、国東市は「住民に早く知らせるためにも、できるだけ早く連絡をもらいたい」とコメントしています。
今回の緊急放流、ダムの下流の地域の人たちは―
◆国東市の人
「ダムを何時から何時まで放流しますって言う。前もって言うのは言うけど準備は何もできないこっちは」
「そのままダムを貯めてたらダムが決壊するというのも大変だし、放流のタイミングは難しいと思う」
緊急放流が遅れたことについて、県は水位の上昇があまりにも急だったとしていて、実施を決めた際にはすぐに国東市に連絡を入れていたということです。
今回浮き彫りとなった課題を受けて、予測雨量のデータを収集する頻度を高めるなど管理システムの見直しを検討しています。