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【特集】ビジネス最前線③有機農業普及めざして 生産者の取り組み 岩手

2024年6月25日 18:42
【特集】ビジネス最前線③有機農業普及めざして 生産者の取り組み 岩手

毎週火曜日のシリーズ、「ビジネス最前線」です。最終回は、有機農業を広めようと頑張っている岩手県盛岡市内の農家です。安心、安全な有機農業は注目されていますが、意外にも岩手ではあまり普及していないそうです。

6月19日、盛岡市中太田にあるキートスファームを、ベンチャー企業に投資をしているいわぎん事業創造キャピタルの稲垣社長が訪れました。こちらの農場では今、ミニトマトの収穫が盛んに行われています。キートスファームの南幅清功さんはビジネスとして課題が多い有機農業を行うためいわぎん事業創造キャピタルの投資を受けています。

いわぎん事業創造キャピタル 稲垣秀悦社長
「うまい うまい化学肥料を使わない薬を使わないというところで土づくりをしっかりしないといいものができない有機栽培だから高く売れるわけではないうまく作れるかどうかは生産者の技術次第 そこが難しい」

農薬も化学肥料も全く使っていない南幅さんのミニトマトを栽培するハウスでは、ハチが飛んでいます。ハチの助けを借りて受粉することによってミニトマトが実るのです。ミニトマトの受粉の際に農薬を使う農家もありますが、有機農業を実践する南幅さんはハチの働きを大切にしています。

キートスファーム南幅清功代表取締役
「一般的な(農薬や化学肥料を使う)慣行栽培の場合はホルモン剤を薬剤処理 受粉に使う有機栽培の場合はそれを使えないのでハチで受粉させております(Qきちんと受粉するものですか?)形もそれなりに揃うしいい結果が出ております」

農業が盛んなわりに岩手県は有機農業の普及が進んでいるとは言えません。農林水産省は、有機農業の認定についてJAS日本農林規格に沿っているかどうかで判定し、都道府県ごとの農地面積を公表しています。

2022年4月現在の有機JASほ場の面積を見ると岩手県は田と畑を合わせて149ヘクタールで、農業生産が盛んな北海道東北の7道県の中で最下位となっています。

南幅さんは欧米に比べて日本は有機農業の普及が遅れているといいます。その理由として農家が収益を追求するために単位面積当たりの収穫量を確保しようと農薬や化学肥料を大量に使ってきたこともあげています。

岩手県も手をこまねいているわけではありません。5月29日には人材育成に向けていわてグリーン農業アカデミーを開講しました。軽米町の県農業研究センター県北農業研究所で開かれた開講式には達増知事が出席し「日本や世界の農業の最先端を切り開くことを期待します」と訴えました。

研修生代表上山友裕さん
「軽米町研修後には本県農業をけん引する担い手として貢献できるよう知識や技術の習得に努めたいと思いますのでご指導やご鞭撻のほどよろしくお願いします

県立農業大学校竹澤利和校長
「農薬を使わないといいますと非常に病害虫を防ぐということが一番大変であると。さらに草ですね除草剤を使わないということ手で草をとったりとか大変な思いをされているとそうしたことから機械除草技術とかそういうことを使いながら無農薬で栽培できるような技術を学んでいただきたいと考えています」

5月24日、キートスファームの南幅さんの畑を、東北農政局の原次長が県の担当者と共に訪れました。キートスファームは、土づくりから始めて、牛ふんや豚の糞といった有機肥料を主体とした有機農業を実践していることから県内で初めてのみどり認定、国が定めた環境にやさしい農業者として認められました。

農林水産省東北農政局原孝文次長
「国としても 農水省としても今回の見える化だったりみどり認定だったりはっきりわかるような仕組みを作ってきましたのでそれを農業生産現場だけでなくて流通、加工、消費各段階で多く存在していただいて身近なものになっていくよう私たちもがんばっていきたい」

南幅清功代表取締役
「本当に安心安全なものということで評価してくれる方もここ数年特に増加していますそういった部分では国のみどり戦略の中にもいろいろうたっているとおり今後は有機農業に切り替わる可能性は大きいと思います」

南幅さんらJAS有機認証を持つ生産者が協力して学校・病院へ有機野菜やコメを導入してもらうなど、販路拡大をを目指す県有機JS協議会を今年3月設立しました。こうした取り組みによって南幅さんは県内でも有機農業の普及を図ろうとしています。