【特集】水とともに④八幡平の地熱染め 自然と水の恵みに囲まれて 岩手・八幡平市
シリーズでお伝えしている「水とともに」です。八幡平市の地熱染め作家と水の恵みを紹介します。
高橋さん
「まだきれいなブルーが残ってますね、何とか。これは御在所園地の中の『五色沼』っていう沼になります。この五色沼もそうなんですけど、火山ですから色んな水辺の景色が。滝もあれば、こういった変わった沼もあれば泉もあれば…変化があってすごく面白いです」
八幡平市在住の高橋一行さん。高橋さんの生活には、八幡平のキレイな水がいつもそばにあるといいます。八幡平市松川にある「地熱染色研究所」。高橋さんはこの工房で地熱蒸気を活用した全国唯一の染め物の技術「地熱染め」を行っています。
高橋さん
「地熱蒸気に含まれている、硫化水素という成分で脱色作用といって色が抜け落ちます。全部の色が抜け落ちるのではなくて、その特定の色だけが抜け落ちることで、きれいな色になって。これもグリーンとかピンクとか黄色とか、普通ですと色が混ざり合ってもっと黒い色になってしまいます。それが地熱蒸気の脱色によってこういうきれいな色に染まります」
この地で40年以上の歴史を持つ「地熱染め」は、その柔らかな色合いが最大の特徴。1981年に母、陽子さんが技法を確立させ、以来、多くの作品を制作してきました。
母・陽子さん
「うちは全部自然界にあるものをイメージしながら染めてますので。いろいろな色が四季によって違うし、木の色も違うんですけど空の色とか夕焼けとか、そのグラデーションがやっぱり違うと思う」
八幡平の自然をテーマに創作活動をする高橋さん。敷地内には「アルペンローゼ」というカフェが隣にあり、家族で切り盛りしています。実はこのカフェにも、八幡平の水の恵みが…
高橋さん
「この松川温泉から大体2㎞くらい山の上の方から引いてる水道のお水になります。みなさんおいしいって言ってくれますし、コーヒーだけじゃなくてお水もすごく冷たくて、おいしいとみなさん評判です」
八幡平の山の恵み…そんなぜい沢なコーヒーと共に楽しめるのが、カフェの前に広がる五葉沼です。
父親
「木が大きくなって(昔と)全然違います雰囲気が。(昔は)釣り堀とかそういうのをやってました。すぐそばが湧き水で大体12~13℃の温度で流れて出てきてます」
父、誠行さんがこの地に移り住んだのはおよそ50年前。その後、食堂や地熱染めと並行してペンションを開き、多くの観光客を受け入れてきました。中でも宿泊客に人気なのが、母陽子さんが作る川魚を生かした料理。
母親
「ニジマスです。脂の乗ってる時とかそういう時だと、ホイル焼きとか、さっとバターでパン粉つけて焼くとか。やっぱり水がいいですもんね。冷たいし、水の質もいいと思いますよ。ですから同じく煮物とか、ご飯を炊いてもみなさんに『おいしい』と言われるのがお水だと思います」
高橋さん
「大体20年くらい前までかな?養鱒場からニジマス生きたまま買ってきて、それをうちの湧き水の池があるんですよ。そこでいけすを作って一度そこに入れて、大体1週間くらいするとくさみもないニジマスになりますね。今は八幡平サーモンってブランド化しましたし、養殖技術が昔よりは格段に良くなってますので、それを色んな形で提供しているということになります」
恵みの水がもたらしてくれるのは、食だけではありません。高橋さんは地熱染め作家として、ここ八幡平の水がある風景は、かけがえのないものだと言います。
高橋さん
「八幡平の水辺のイメージは本当に色が豊富で、色んなバリエーションがあるのでそれを作品に生かして、表現して作ってますね。例えば、この色にはどういう配色が合うだろうか?とか、そういうのを考えながら、自分の頭の中の引き出しから八幡平の水辺の景色を。そこでこのブルーに合う配色っていうのを考えながら作ってます」
染色に必要不可欠な地熱蒸気。併せてここ八幡平の水辺の景色もまた、高橋さんの創作活動には欠かせないものとなっているのです。そんな高橋さんのお気に入りの場所、それが冒頭で案内してくれた五色沼です。
高橋さん
「色が季節で変わります。夏場気温が高い時はこういうブルーになることが多くて、徐々に気温が下がってくると鉛色とか赤い色に変わっていきますね。この通り色がみんな違いますので、湧き水もそうですしここの沼も含めて。で、私の仕事の上でも色のバリエーションというのはすごく大事になってきますから。(八幡平の水は)大切なものでもあるし、ずっと子供の時から身近にあったものでもあるので。あって当然と思ってる部分と、当然なんだけどすごくきれいなものなので、沢山の人に知ってもらいたいなと思ってます」
八幡平の自然の恵みに感謝して、かけがえのない水の素晴らしさを伝えるため、高橋さんは作品を作り続けていきます。