【インタビュー】業績V字回復 きらやか銀行(山形市)川越頭取「しっかりと企業を支えるのが我々の責務」
新型コロナの影響が緩和し県内経済も新たな局面を迎える中、YBCでは地域産業を支える県内地銀3行のトップインタビューをシリーズでお伝えしていきます。1回目の23日はきらやか銀行です。銀行の現状、そして今後の展望について聞きました。
単独インタビューに応じたきらやか銀行のトップ・川越浩司頭取。1987年に旧山形相互銀行に入行して以来、主に営業畑を歩んできました。
おととし、赤字決算の責任を取る形で前頭取が辞任。その後を引き継いでからおよそ2年半が経過しました。
きらやか銀行はこの間、一昨年度の数字を示す去年3月期の決算で黒字転換を果たしましたが、昨年度の業績となることし3月期の決算では再び赤字に転落しました。
困難な状況を経験する中、頭取として感じることがあったと言います。
きらやか銀行・川越浩司頭取
「去年の中間期から赤字を出した時にお客様を訪問した中で本当にお客様のために動けばお客様からも信頼される。やっぱり信頼される仕事をやり続ける必要が本当にあるんだろうなというところを今、再認識している」
この「信頼」につながるのがきらやか銀行がビジネスモデルに掲げる「本業支援」の再構築です。3月期決算で大幅な赤字となったきらやか銀行はことし、コロナ特例を活用した180億円もの公的資金が注入されたことで、大きな注目を集めました。銀行の経営自体を危ぶむ声も出る中、川越頭取は今回の公的資金注入の本質は「企業の経営を支える所にある」と断言します。公的資金によって「本業支援」を進め、銀行経営の安定化へつなげたい考えです。
きらやか銀行・川越浩司頭取
「きらやか銀行の取引先の中で例えばサービス業、県内では温泉旅館や宿泊業の取引先が非常に多い。そういう業態がこの3年数か月の間で非常に苦しんできたところもある。そういったところをいかに支えるかという思いで、このコロナ特例という今回の特別な制度が非常に有効と考えた」
きらやか銀行をメインバンクとする取引先はおよそ3900社に上ります。
中でも飲食や宿泊など新型コロナの影響を受けやすかったサービス業への融資は他の地方銀行と比べて突出して多く、県内シェアは1位となっています。
きらやか銀行・川越浩司頭取「今回の公的資金はコロナで傷んだ取引先に対して使う資金使途に限定されるので我々としてもそこに向かって直接対応したいと考えている」
こうした中、きらやか銀行はことし9月期の中間期決算で黒字回復を果たしました。企業の売上高に相当する「経常収益」は去年の同じ時期に比べてわずかに減少したものの、この半年間の儲けを示す、「中間純利益」は大幅に増え、6億円余りの黒字に。来年の3月期の決算でも7億円の黒字を見込んでいます。
川越頭取は足元の県内経済について「厳しい状況が続いている」としつつ、今後は取引先企業に対し経営課題解決に向けた計画案を示していくことも重要としています。
きらやか銀行・川越浩司頭取「これまでやってきた『本業支援』をしっかり絡めてお客様が本当に必要とされていることや経営課題の解決など実績を伴うものでないと支持を得られない」
そのモデルの1つとなるのが、きらやか銀行と提携する大手金融機関・SBIグループの知見を生かした商品開発の提案です。
上山市の印刷会社ではこの夏、SBI傘下の企業が持つデジタル技術を生かし、偽物と本物を見分ける新しいラベルを考案、ブランド価値を守る新商品を開発しました。
きらやか銀行上山支店・大谷凌太さん
「金の貸し借りだけではなく本質の部分で企業を支援し提案をしていきたい。今回のような形で進められる機会が増えればより地元企業の力になれる」
銀行の黒字化、そして地域経済の活性化。実現しなければならない大きな責任を背負っています。
きらやか銀行・川越浩司頭取「しっかりと企業を支えていくのが我々きらやか銀行としての責務。それがひいては地域経済を支えるものと私自身は考えている」
シリーズ・県内地銀トップインタビューは来年2月ごろにかけて順次放送する予定です。