新たな発見も 東北芸工大に文化財のCT撮影装置導入 「五百羅漢像」の解析にも利用
東北芸術工科大学は文化財の調査に使用されるX線CTの撮影装置を今年度から新たに導入しました。芸術系の大学では国内初めての導入で、研究精度の向上などが期待されます。
山形市の東北芸術工科大学に今年度から導入されたのは、東京の企業が開発したX線CTの撮影装置です。この装置は物体を回転させながらX線を照射して撮影し、外からは見えない内部の構造などを動画で立体的に解析することができます。
これまで全国の研究機関などで使用されてきましたが、今回、国内で初めて芸術系の大学に導入されました。
東北芸術工科大学文化財保存修復研究センター伊藤幸司教授「技法や材質とか劣化状態とか様々な情報が立体視の中で得ることができる。好きなところでカットできる画像処理ができる。それがすべて非破壊で行えるのは非常に大きなメリット」
装置を導入した芸工大の文化財保存修復研究センターでは鶴岡市の善寶寺にある「五百羅漢像」の保存修復作業を2015年度から行っています。昨年度までにおよそ140体の像を解析してきましたが、これまで使用してきたX線装置は物体を平面に撮影するものでした。
今回、CTの撮影装置を導入したことで立体的により実物に近い状態で解析ができるようになり、すでに新たな発見もあったといいます。
東北芸術工科大学文化財保存修復研究センター笹岡直美准教授「五百羅漢像の制作工程で目印が打たれたと予想される頭部にだけ見られる点がいくつかある。それを錐点と呼んでいるが、CTの導入によってその点の位置関係、深さ、正確な場所が今回分かって非常に大きな成果だと考えている」
装置は今後、「五百羅漢像」およそ400体の解析作業のほか、学部・学科を超えた研究や調査での活用にも念頭を置いています。
東北芸術工科大学文化財保存修復研究センター伊藤幸司教授「学内にも広く知れ渡ってうちの学科でもこういうことができないだろうかという声が上がってきてくれることを期待している」
新たな装置は絵画の修復や土器・埴輪といった出土遺物の製作技法調査にも有効であることから大学は研究対象範囲の拡大に期待を寄せています。