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蔵王温泉の老舗旅館とホテル 経営体制を刷新し営業再開 再建への一歩は

2024年9月25日 17:36
蔵王温泉の老舗旅館とホテル 経営体制を刷新し営業再開 再建への一歩は

山形市の蔵王温泉にある江戸時代創業の老舗旅館「吉田屋旅館」がことし7月、自己破産しました。経営していた2つの宿泊施設は営業休止を余儀なくされましたが、経営体制を刷新し、このうちの1つが9月から営業を再開しました。再建への一歩を取材しました。

秋の紅葉シーズンを待つ山形市の蔵王温泉スキー場。上の台ゲレンデ近くに建つホテルが「ONSEN&STAY OAK HILL」です。9月18日、リニューアルしたホテルがプレオープンを迎えました。宿泊客を受け入れるのは、およそ2か月ぶりです。

ONSEN&STAY OAK HILLマネージャー 佐藤祐己さん「やっとお客様と会えることを嬉しく思う。これから心機一転、頑張っていきたい」

ホテルがオープンしたのは35年前の1989年。「ホテルオークヒル」の名称で、和と洋の客室や山形牛などを使った夕食、露天風呂などが人気を集めてきました。
経営していたのは、蔵王温泉で江戸時代中期に創業した「吉田屋旅館」です。ホテルオークヒルをオープンさせたころは、旅館とホテルともにスキーブームが追い風となり冬は連日、満室だったといいます。
しかし、2011年の東日本大震災や2015年の蔵王の噴火警戒レベル引き上げでの風評被害、2020年からの新型コロナウイルスの感染拡大などで利用客が減少し経営状況が悪化していったといいます。そして、ことし7月、自己破産を申請しました。これに伴い、ホテルオークヒルも吉田屋旅館も営業を休止しました。
吉田屋旅館の社長だったノーレン千草さん(56)、そして、千草さんの甥で、オークヒルのマネジャーとしてホテルを運営してきた佐藤祐己さん(27)は、当時の思いをこう語ります。

旧吉田屋旅館社長 ノーレン千草さん「私たちの施設と私たち、従業員も含めてどうなるんだろうという時が一番辛かった」

ONSEN&STAY OAK HILLマネージャー 佐藤祐己さん「5年前に私が戻ってきて、そのころから頑張ったが、どうしても力及ばず悔しい気持ちが強かった」

長年蔵王で愛された温泉宿を守りたいー。その思いから蔵王温泉など県内外で15の宿泊施設を経営する高見屋旅館グループが再建に名乗りを上げました。
吉田屋旅館とホテルオークヒルの土地や建物を取得し、双方の従業員12人の雇用も引き継ぎました。

高見屋旅館グループ 岡崎博門社長「蔵王の歴史の中では欠かせない存在だと思っているので、そういう思いで大事にしていきたい。蔵王温泉のためになるように宿の運営に努めたい」

旧吉田屋旅館社長 ノーレン千草さん「私ども先祖が大事にして希望を持ってやっていた商売だったので、少なくとも吉田屋とオークヒルという名前を残せたことが本当に良かったこと」

新たな経営体制のもとでまず着手したのは、オークヒルの室内の改装です。客室は壁紙を貼り替え、ベッドを設置した部屋を増やしました。

高見屋旅館グループ 佐藤翔太さん「蔵王の冬はインバウンド訪日のお客様が多く、ベッドで寝る方が多いので、それに対応することが1つ。布団の上げ下げがなく、ベッドだと、日中にベッドメイクすれば少ない人数で運営できるので、そういった効率化でベッドの部屋を増やした」

一方で、人気だった露天風呂や内風呂は改装せず、魅力をそのまま残しています。
ホテルオークヒルは「ONSEN&STAY OAK HILL」に名称を変更しました。プレオープンとなったこの日は、改装に関わった業者やグループ企業の社員が宿泊しました。

スタッフ「売店をなくして、仮でアメニティなどを置いている。カフェっぽく、ドリンクを出したり」宿泊した関係者「朝とかコーヒー飲みたいですものね」

宿泊客向けのサービスも一部変更しました。夕食の提供をやめ、温泉街などにある外部の飲食店を利用してもらうことにしました。

一夜明けての朝食。以前は料理人が作る和食を提供していましたが、経営再建の一環で、インバウンド客にも広く対応できるようホテルのスタッフが作る洋食を中心にしたビュッフェに変更しました。
プレオープンで宿泊した関係者は、再建を目指すホテルに期待を寄せています。

プレオープンで宿泊「静かで温泉も良く、とてもいい時間を過ごせた」「昔から受け継いだ灯を消すことなく、一生懸命継承していってくれるのはありがたい。多様性も考えられた運営なので、これからの蔵王には期待できる」

オークヒルでは、いまある施設を生かしながら、より多くの人に利用してもらうための新たな魅力の開発も目指していく方針です。

ONSEN&STAY OAK HILLマネージャー 佐藤祐己さん「これまで良かった点を踏まえつつ、悪い点も改善しながら、長く愛されるホテルにしていきたい」

オークヒルは9月21日から一般客の宿泊を受け入れています。今後も空きスペースに飲食店のテナントを入れるなど順次、施設をリニューアルする方針です。
一方、吉田屋旅館は今後、必要な行政手続きなどが完了次第、営業を再開する予定です。初めは従来と同様のサービスを提供し、冬の繁忙期の後に本格的な改革に乗り出す方針です。