【特集】33年の歴史に幕...高齢者向け配食ボランティア「平均80歳」スタッフ高齢化で
スタッフ
「おはようございます」
午前10時。甲府市の旧穴切小学校の給食室に白衣姿の女性が集まってきました。
彼女たちはボランティア団体「甲府・食事サービスをすすめる会」のスタッフです。日々の買い物や調理が難しい高齢者らに、手作り弁当を届けています。
スタッフ
「まだ10時半じゃん。ご飯(のスイッチ)入れる?」「まだ早い」
「甲府・食事サービスをすすめる会」が設立されたのは1992年。
外食産業が今ほど発達していなかった時代から、栄養豊富な食事を届けようと1食500円の配食サービスを行ってきました。
スタッフ
「味見て~、塩足りない?」「ちょっと足りない」
こだわりは「出汁から作る家庭の味」。毎日食べても飽きない味付けを心掛けているといいます。
甲府・食事サービスをすすめる会 武田とし江さん
「魚・野菜も高騰して使えなくなったのが結構ある」
今なお続く、物価の高騰やコロナ禍も乗り越えてきましたが、3月末で33年の歴史に幕を下ろすことを決めました。
甲府・食事サービスをすすめる会 事務担当 剣持英子さん(71)
「ボランティア全体が高齢化した。事故…転んだりやけどしたりすることが、だんだん増えた」
現在78人いるボランティアスタッフの平均年齢は80歳。長時間にわたる立ち仕事や配達に使う車の運転など、不安も大きいといいますが…
スタッフ
「おいしそう」
活動最後の日まで「おいしいお弁当と笑顔を届けたい」。その思いは変わりません。
精魂込めたお弁当を配達へ。甲府市北部を担当するのはボランティア12年目の皆川さんです。
配達担当 皆川明さん(81)
「東京から韮崎に帰ってきてボランティアをやりたいと思っていたところ、学校の先輩から『やらないか?』と言われた。(魅力は)コミュニケーション。(利用者と)話ができるということ。『おいしかったよ』と言われるといった会話があるのがいい」
皆川さん
「こんにちは~体調はどうですか?」
利用者
「今のところなんとか…」
皆川さん
「次のお弁当屋さんが見つかるといいですね。ご健闘をお願いいたします」
30年前から利用する田中郁雄さんも、配食サービスの終了を惜しむひとりです。
甲府・配食サービスを利用する 田中郁雄さん(94)
「ここの食事はものすごく質がいいし味もいい。私はひとりで住んでいるから話をする機会が全くない。配達の際にちょこっとでも話ができるとありがたい」
多くの利用者に健康とふれあいを届けて33年。これまで数多くの感謝の気持ちも寄せられました。
食事サービスをすすめる会 事務担当 剣持英子さん(71)
「弁当の上に何かひとことという感じでみなさんが書いてくれる」
寄せられた手紙
「私は“時間よ止まれ”と言いたいです。悲しいです。今夜も感謝しながら完食!ごちそうさまでした」
甲府・食事サービスをすすめる会 事務担当 剣持英子さん(71)
「やめるのが悪いなと思いながらやっている。ここに来て仲間と会うのはすごく楽しいこと。おしゃべりも出来るし。しばらく休養してまた次の何かを考えたい」
活動終了まであとわずか。心待ちにしている利用者のために、きょうも真心込めたお弁当をこしらえます。