×

【特集】 “予約の取れない”名物タクシードライバー 京都観光はおまかせ! 開花遅れてピンチも… 桜だけじゃない!絶景穴場スポットにご案内

2024年4月26日 20:00
【特集】 “予約の取れない”名物タクシードライバー 京都観光はおまかせ! 開花遅れてピンチも… 桜だけじゃない!絶景穴場スポットにご案内
“予約の取れない”京都の名物タクシードライバー、宮本智子さん

 “予約の取れない”京都の名物タクシードライバー、宮本智子さん(71)。持ち味は、明るい笑顔と軽妙なトークでのご案内です。観光・グルメ情報はもちろん、時には、世間話に花が咲きます。おしゃべりで世話好きなところが評判で、お客さんからの信頼も厚い京都の名物タクシードライバーです。

(男性客)「とてもフレンドリーな方なので、安心してお任せできる」
(女性客)「かゆいところに手が届くドライバーさんなんですよ」

 京都の春といえば、「桜」。すでに宮本さんの予約はいっぱいなんですが、3月下旬に見頃のはずが寒の戻りでまさかの“開花遅れ”に。無事に乗り切ることができるのでしょうか。平年より遅い春の訪れに翻弄されるタクシードライバーの桜に頼らない京都観光の裏側をノゾキミします。

東京から結婚記念日に京都へ 目的地は修学旅行で訪れたあの場所

 3月27日、この日のお客さんは東京から来た田中克昌さん(66)・宏美さん(62)ご夫妻です。結婚記念日のお祝いのため毎年この時期に宮本さんに京都観光をお願いしているそうです。

(夫:克昌さん)
「今年は寒いんだね。3月が寒かった」
(妻:宏美さん)
「寒の戻りがありましたもんね」
(宮本さん)
「今年の桜は特にゆっくりなんですよね」
(夫:克昌さん)
「桜を見たいというよりも、50数年前に行ったところにもう一度行きたい」「(中学校の)修学旅行で行ったのが、大原三千院と寂光院だったんですね」

 貸し切りタクシーの料金は6時間2万8600円です。夫・ 克昌さんの思い出のお寺など、6時間で5か所を巡ります。どんな1日になるのでしょう。

 宮本さんが案内したのは大原にひっそりと佇む尼寺、「寂光院」です。

(宮本さん)
「おはようございます」
(店員さん)
「いつもありがとう。また帰りに寄ってください」

 宮本さんはお土産店の店員さんにも声をかけます。

(宮本さん)
「おはよう…あ~庵主さん!いてくれはった、よかった。後でお茶をお願いしますね、2人ね」

そして、寂光院の庵主さんにもご挨拶。ドライバー歴24年とあって、さすが顔が広いですね。

(宮本さん)
「寂光院本堂です。20年以上前に放火で燃えています。再建されました」

 平清盛の娘・建礼門院が終生を過ごした場所をゆっくりと巡ります。日々の喧騒を忘れてほっと一息。

 実は寂光院は、「しば漬け」発祥の地なんです

(宮本さん)
「(漬物が)出来上がって、建礼門院さんに見せられると『まぁ紫のきれいな葉っぱね』という風になって『紫葉漬け』になった。800年以上前のお漬物です」

 寂光院の門前に構えるお漬物屋さんにちょっと寄り道します。

(宮本さん)
「これこれ、『しば漬け』、ここにしか売ってないんです」
「家でよく熱いご飯で(混ぜて)おにぎりするんです。おいしいですよ」

 主婦目線で、手頃に楽しめる京都グルメも宮本さんの得意分野です。
 
 夫の克昌さんは、中学生の頃とはまた違う視点で楽しめたんじゃないでしょうか?

(夫:克昌さん)
「半世紀ですからね。長生きしてよかったと思いました」

 思い出の場所を後にし、知る人ぞ知る名園へご案内します。「京都の春」を少しでも感じてほしいと向かった先は、「関西花の寺」の一つ、「法金剛院」です。

 宮本さんが咲いている桜を見つけました。

(宮本さん)
「ちょっと咲いてる。今日の暖かさでかな?唯一(桜が)咲いていましたね。桜が満開のときは本当にきれいなんですよ」

 極楽浄土を模した庭園では春には桜、夏は蓮など、四季折々の景色を楽しむことができます。

(宮本さん)
「モクレンですね、ちょうど形がよくなってますね」

 今が見頃の花を愛でながら庭を散策。ちょっぴり春を感じられたでしょうか。

(妻:宏美さん)
「心の豊かさなどを色んな植物や庭の様子などから感じられて、とても心がゆったりとした思いです」
「(宮本さんは)京都と私たちの間を縮めてくれる存在です」
(宮本さん)
「長いお付き合いをお願いします。老後も共に(笑)」
(夫:克昌さん)
「お互い元気でいましょうね」

きっかけは子どもの進学 今は”猫のため”

 宮本さんがタクシードライバーの仕事を始めたのは47歳の時。きっかけは子どもの進学だった。

(宮本さん)
「娘が私立の大学へ行くのでパートだけでは無理ということで、(車だと)暖かい時には涼しい、寒い時には温かいので、元々車が好きだったのでタクシーがいいかなと思って。それがおっとどっこい、観光になったら暑い時は暑いし寒い時は寒いし…」

 思い描いていた仕事とは違いましたが、お客さんの喜ぶ顔を見る度にやりがいを感じるようになりました。常連も増え、気づけばいつしか“予約の取れない”ドライバーに。すっかり天職です。

(宮本さん)
「来ていただいたお客さんが喜んでもらえる、楽しんで帰ってもらえるのが一番の力になります」

 幅広い年齢層のお客さんと、さまざまな観光地を巡ることができるのも、この仕事の醍醐味の一つ。この日は竹田伊織さん(28)祐奈さん(28)ご夫婦とパワースポット巡りで「車折神社」へ。

(宮本さん)
「京都では1番有名な芸能の神様。結構有名な方の『玉垣』が置いてあります」
「2年間で2万1000円。芸能人の人にしたら安い(笑)」

境内には、4000枚以上の玉垣がズラリと並んでいます。芸能人が多く参拝していて、“推し活”で訪れる人も多そうです。

続いて訪れたのは「梅宮大社」です。

(宮本さん)
「ここは安産が有名。子宝のね」

子授けと安産のご利益がある梅宮大社。境内で10匹の猫を飼っていて「猫神社」とも呼ばれています。

(宮本さん)
「いたいた白ちゃん」「ご飯もらってるの」

 実は、宮本さんは大の猫好きです。自宅で7匹の猫を飼う「猫ファースト」の生活なんだそうです。どれだけ仕事が忙しくても、飼い猫の通院は欠かさないといいます

(天神川どうぶつ病院 林暖院長)
「仕事すごい真面目にやってはるけど、仕事よりも猫のことを中心に考えてはるから(笑)」
(宮本さん)
「猫のために、美味しいご飯を食べさせてあげるために、頑張っているんです」

元は家族のために始めた仕事。今はまたひとつがんばる理由ができたようです。

旅行仲間3人組 春の京都のとっておきの場所とグルメ

3月29日。京都でようやく桜の開花が発表されました。とはいえ、満開までは1週間余りあり、まだまだツボミが目立ちます。

(宮本さん)
「おはようございまーす」

この日のお客さんは、奈良と大阪から来た生地百合子さん(83)奥眞稚子さん(73)坪井美奈枝さん(68)の旅行仲間3人組です。5年前に宮本さんと出会い、年に3~4回、タクシーを利用する常連さんで、神社仏閣巡りや芸妓体験など宮本さんの案内で京都を楽んでいます。今日の行き先は、すべて宮本さんにおまかせ、まずやってきたのは、この時期だけ楽しめる“とっておきの場所”、「椿の寺」として知られる霊鑑寺です。

 普段は非公開ですが、椿の開花に合わせて20日間ほど特別に公開されます。椿をあしらったフォトスポットをはじめ、100種類以上の椿が広い庭を彩ります。写真映えする場所ばかりで3人は大興奮。喜んでもらえてよかったですね。

 宮本さん、次の場所へ案内する前にどこかに電話をしています。
(宮本さん)
「いつもお世話になっています。すいません、よろしくお願いいたします」

 花を愛でた後に案内したのは京都らしい甘味処、今宮神社の門前菓子・一文字屋和輔の「あぶり餅」。神社を参詣した帰りに食べると、無病息災・厄除けのご利益があるとされています。餅を焼く香ばしい匂いに誘われて、昼時は行列が絶えません。

(宮本さん)
「すんません、お願いします~」
(女将さん)
「あちらどうぞ~」
(宮本さん)
「ここ、空けといていもらいました」

 さっきの電話はお客さんを列に並ばせず案内するためだったんですね。名物の「あぶり餅」(一人前600円)は炭火であぶった香ばしい焦げ目に特製の白味噌ダレを絡めて仕上げます。三人はおいしい「あぶり餅」を楽しんでいました。

 旅の最後は京都屈指の桜の名所、平野神社へ。早咲きの「魁桜」がちょうど見ごろになっていました。この桜が咲くと京都のお花見が始まる合図なんだそうです。支えて支えられて…。噛みしめる桜の季節がようやくやってきました。

(宮本さん)
「ありがとうございました。気を付けてお帰りください」
(3人組)
「ほなね、みやもっちゃん・またお願いします・また秋にでも」

(宮本さん)
「この仕事は人との付き合いがいっぱいあるから、仕事をしていて楽しいなって思います」
「頑張って自分の体が動く限りはお客さんと一緒に楽しく元気で回りたいと思っています」

(「かんさい情報ネットten.」2024年4月8日放送)