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生まれた時から被爆者…「胎内被爆者の証言」それぞれの思い 大学生が英語に翻訳し発信へ「同世代の人に読んでほしい」

2022年8月10日 0:03
生まれた時から被爆者…「胎内被爆者の証言」それぞれの思い 大学生が英語に翻訳し発信へ「同世代の人に読んでほしい」

長崎は9日、77回目の「原爆の日」を迎えました。広島、長崎で母親のおなかのなかで被爆した「胎内被爆者」は6000人以上、生存しているといいます。「生まれたときから被爆者」という人々の証言を英語に翻訳し、世界に発信しようとする大学生の取り組みを取材しました。

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大学4年生の貞岩しずくさん(22)。今、取り組んでいるのが、「胎内被爆者の証言」を英語に翻訳するプロジェクトです。

貞岩しずくさん(22)
「どうしたら胎内被爆者の方が思っていることを英語で表現できるのか…っていうこともそうですけど、まず日本語で書いてあることも、どういう風に自分が向き合ったらいいかが、分からなくて」

1945年8月6日、広島。同年8月9日、長崎。母親の胎内で被爆、つまり「生まれた時から被爆者」という人たちは、今も6000人以上、生存しているといいます。

その人たちの証言集の英訳。直面したのが、この証言集のタイトル「生まれた時から被爆者」を、どう訳すかでした。

貞岩しずくさん(22)
「ただ英語に直訳してしまうと『あ、生まれた時から被爆者です』って言っているだけなので、どうしたら『原爆というものが、おなかの中にいる子供たちにも影響が出ている』ということが伝えられるのかで、すごく悩みました」

直訳すると「I am Hibakusha from birth」。これを貞岩さんは「Hibakusha since I was born」と英訳。「from」ではなく、“今も継続中”という意味がある「since」を使うことで、「生まれた時から今に至るまで、続いている」ということを強調したといいます。

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胎内被爆者たちは、自身が経験した「差別」についても証言していました。

長崎で”胎内被爆”した女性
「思春期のころ、部活の先生から 『被爆者健康手帳をもっていることはいうな』と言われました。最初、何のことか分かりませんでしたが、奇形児を産むからという認識で、結婚に差しさわるという意味でした」

広島で”胎内被爆”した男性
「東京の友人(女性)に相談されました。『婚約者が胎内被爆者なのだけれど、結婚して大丈夫ですか…』と」

英訳に取り組む貞岩しずくさん(22)
「実際に差別や偏見というものがあるというのは知識としては知っていたんですけど、本当にそういうことを言う人がいて、そういうことを言われてきたっていうのに、すごく衝撃を受けました」
「原爆っていうものが今もなお、ずっと人々に影を落とし続けているというのを感じていて、この語られている文章もそうですけど、語っているけど語り切れていないのが原爆なんだなと、すごく思いました」

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長崎の胎内被爆者、的山ケイ子さん(76)。母親は、ケイ子さんが被爆者であることを隠していたといいます。

的山ケイ子さん(76)
「5年生の時に『(被爆の)検査に来てください』っていう連絡が来たらしくて、その時に初めて(母から)『あなたは被害に遭っているかもしれないから、調べに行くんだよ』って言われて」

持っていると医療費がかからなくなる「被爆者健康手帳」も、母親は的山さんが20歳になるまで申請していませんでした。

的山ケイ子さん(76)
「(娘が)『被爆者』っていうレッテルを貼られることが、苦しかったんじゃないかと思う…。母はやっぱり20年間、苦しんで苦しんで申請したんだなと思いますね」
「でも、私、もし放射線被ばくがなくなって元の体に戻れるんだったら、これ(原爆健康手帳)いらない! 元気で元通りの被爆していない体に戻れるんだったら、返したい。だから…苦しいものですね、持っているということは」

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貞岩さんたちのプロジェクトでは、今年中に47人の証言を英訳し、SNSなどを通じて発信する予定だといいます。

貞岩しずくさん(22)
「もちろん、世界中の人に読んでほしいというのもあるんですけど、まずは知ってもらう・触れてもらうという機会を(世界の)同世代に持ってほしいなと思っているので、同世代の人に読んでほしいなと思っています」

(8月9日放送『news zero』より)