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藤井貴彦アナ 日テレ退社 52歳の決断を取材…背景にあった亡き父への思い

2024年1月22日 14:00
藤井貴彦アナ 日テレ退社 52歳の決断を取材…背景にあった亡き父への思い
春からフリーとして活動する藤井貴彦アナ
日本テレビの藤井貴彦アナウンサーが3月いっぱいで退社することになりました。今後はフリーとして活動する藤井アナウンサーを取材すると、亡くなった父の存在が決断のきっかけになったことや、同期・羽鳥慎一さんに報告した時のエピソード、14年担当した番組への思いなどを明かしました。
藤井アナは1994年に日本テレビに入社。スポーツ実況や五輪の現地リポーター、『ズームイン!!サタデー』の総合司会など、多くの番組を担当してきました。『ウッチャンナンチャンのウリナリ!!』ではドーバー海峡横断部にも参加し、話題になりました。

2010年春から14年にわたって夕方のニュース番組『news every.』のメインキャスターを務めてきましたが、この春からは夜の『news zero』を担当します。

■父が亡くなった年齢に近づき…フリー転身を決断

――フリーになると決めたきっかけを教えてください。

私自身、退社を考えたこともありませんでしたし、このまま定年を迎えるのだろうと思っていました。周りの友人も、「藤井にフリーは無理だろう」と思って気を遣ってくれたのか、話題にもなりませんでした。フリーの話をしてくれたとしてもそれはギャグの扱いで、私自身も笑っていたくらいです。

しかしzeroへの移籍についてよく考えてみると、自宅での夕食の機会も少なくなるでしょうし、友人と飲む回数も減っていくことにもなると気づいたのです。これは仕事への情熱とは別の要素ですが、仕事に力を注ぐ上で大切な要素でもあるのです。私に残された人生の時間はあとどれくらいかと逆算してみると、残りは少ない。これまで以上に自分の時間を大切に、充実させる必要があると考えたのです。

――会社員人生30年、52歳での新しい挑戦。なぜ今だったのでしょうか?

実は私の父は58歳で亡くなりました。仕事に懸命に取り組み、家族を育て、養ってくれていた父の年齢まで気づけばあと6年です。父は楽しい人生を送れたのかな、もっと生きたかったんじゃないかなと考えることもあって、父の年齢を一つの目印にして生きてきました。

その目印がどんどん大きく近づいてきた今、少しだけ自分のことを大切に考える時間があってもいいのではないかと考えたのです。もちろんnews every.を卒業すること、zeroのお話をいただいたこと、この4月でアナウンサー生活が満30年になることはフリーになる理由、タイミングとしては十分だったのですが、私としては父の人生が新たな一歩を後押ししてくれたと思っています。

■放送時間拡大のため、自ら企画書も news every.への思い

――これまでで一番印象に残っている仕事・取材はなんですか?

news every.の放送開始からまもなく2年目を迎えようという時に3.11東日本大震災が起きました。当時、私はまだ30代でした。被災地に到着すると、そこは取材どころではない惨状です。「今はカメラを回さないでくれ」とディレクターにお願いして、倒壊しそうな建物からご遺体を運び出そうとしたことがありました。でもその時にディレクターはカメラを止めませんでした。「1人の手ができることには限界があります、だから伝えます」と言うのです。

今、どんな行動にも、どんな言動にも批判がネット上に飛び交い、伝えることへのハードルが高くなっていますが、伝えなければ伝わらない。伝わらなければ批判すら起きない。3.11は、なぜ報道するのかという原点に立ち返る日でもあり、忘れることはできません。

――14年担当していた番組を卒業する今のお気持ちを改めて教えてください。

news every.は関東地方を中心に午後3時50分から放送をしていますが、以前は午後5時からのスタートでした。当時はドラマなどの再放送を流していましたが、news every.をミヤネ屋に直結して放送ができないものかと、実は自ら企画書を書きました。

今では3時間10分の番組になって毎日大変ですが、それでも14年もの間、多くのみなさんにご覧いただけてよかったと思っています。news every.は私の40代の全てでした。愛着を持って、ともに、必死に成長してきた番組ですから離れることに寂しさはありますが、これからも自信を持ってお送りできる番組だと思います。

■人気アナウンサー1位「そろそろ引退をさせて(笑)」

新型コロナの感染が広がり始め、人々が不安や不満を抱えながら過ごしていた時期には、毎日のようにメッセージを届け続けました。その言葉が多くの視聴者に支持され、人気アナウンサーのランキングで初めて上位に。2021年と2023年に1位を獲得しました。

――ランキング1位を獲得しましたが、どんなお気持ちですか

そもそも私は1位のタイプではありませんし、センターの立ち位置も似合いません。先頭に出ると後ろが見えなくなりますので、あとは後輩に任せます。ただこのランキングから「言葉は心を動かせる」のだと教えてもらえた気がします。一方で、もう十分にお勉強させていただきましたので、そろそろランキングからの引退をさせていただきます(笑) 後輩たちよ、がんばれ!

■同期・羽鳥さんからの言葉「藤井はフリーになっていいんだよ」

――日本テレビ入社同期の羽鳥慎一さんは10年以上前からフリーとして活躍されていますが、意識はしていましたか?

羽鳥は言わばメジャー級ですので、彼と比較することなんて恥ずかしくてできません。彼に合わせて背伸びをしても足元が不安定になるだけですので、しっかり自分の仕事をやり切ることだけを考えていました。実際に大きな差があります。

ただ、収録で何度も顔を合わせていたので、事前に伝える機会がありました。羽鳥からは「もう十分会社に貢献したよ、藤井はフリーになっていいんだよ」と言ってもらえて肩の荷がおりました。

――フリーになってやりたいことは?

ネットワーク各局の後輩、そしていままで一緒に仕事をしてきた各地方のみんなと仕事をしたいです。東京にいて仕事をしていると自分を見失う危うさもありましたが、系列のみんなが見せる仕事への情熱やひたむきさが、私の姿勢を正してくれました。彼らが私に人として大切なことを教えてくれたのです。

■「キャスターが主役ではありません」 今後の目標は

――春から担当する『news zero』での目標を教えてください。

キャスターの起用や配置がニュースになる世の中ですが、キャスターが主役ではありません。みなさんに必要なニュースをお届けし、皆さんの原動力になることが私たちの仕事です。番組カラーはピンクからグリーンへと変わりますが、これからもお付き合いいただければ幸いです。引き続きよろしくお願いいたします。