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元宝塚花組スター・天真みちる、同期の宙組トップ・真風涼帆の公演で号泣 初舞台のラインダンスで振り返る宝塚の青春

2022年6月22日 20:10
元宝塚花組スター・天真みちる、同期の宙組トップ・真風涼帆の公演で号泣 初舞台のラインダンスで振り返る宝塚の青春

 「おじさん役」に定評がある名バイプレーヤーとして活躍した元花組スターの天真みちるさん。最近、ともに初舞台を踏んだ同期のトップスターの主演作を観劇し、涙したという。音楽学校の2年間を経て、初舞台の同期全員による「ラインダンス」を作り上げた青春とは――。熱烈な宝塚ファンである日本テレビアナウンサーの安藤翔アナ(妻が元タカラジェンヌ)、中島芽生アナ(宝塚音楽学校を4回受験)の2人が迫った。(前・中・後編の前編)  

(中島アナ):天真みちるさんは、神奈川県・厚木市出身。11月18日生まれ。2006年に92期として入団し、花組に配属。「老老男女」を幅広く演じ、おじさん役に定評がある名バイプレーヤーとして活躍されました。退団後は俳優だけではなく、脚本家、演出家、社長、劇団主宰など幅広く活動されています。

「ほぼ若者の役をやったことがなく、お父さん役や上司役など、ずっと『おじさん』をやっておりました。(プロフィールは)『老老男女』で違いないです」

(中島アナ):冒頭に披露いただきましたが、天真さんといえばタンバリンというのは、ファンの中ではよく知られています。

「おかげさまでやらせてもらっています。宝塚在団中の当時は公演中に組全員での宴会がありまして、その時の余興で叩き出したのが始まりです。下級生の頃から毎年ずっと余興にエントリーして、演出家の先生とかトップスターさんのものまねをやっていたのですが、とうとうネタが尽きて。『何か新しい芸を』と思った時にこれだとタンバリンを始めて、すっかり定着してありがたいですね」

「タンバリン芸人のGONZOさんという方の動画を見て、『男役としてキレッキレで踊ったら面白いかも』と。自分で振り付けしてがむしゃらに叩き鳴らす。コンテンポラリーですね。そんな感じでやっています」

(中島アナ):「最近キュンとしたこと」は、宙組公演の『NEVER SAY GOODBYE』のフィナーレ。格好良かったですよね。

「やばかったですよね。まず本編が自分の92期の初舞台公演(の再演)だったんです。改めて見たときに『こんなお話だったんだ』と思うくらい、突き刺さってくる情景、セリフ、やりとりがありすぎて終始泣いていました。もともとその初舞台を一緒に踏んだ同期の真風涼帆がトップスターとして主役を演じているのも感慨深い。幕が上がる前のどん帳に写真が映っている時に『これが(カメラマン役の)ゆりか(真風)が撮った写真だ』と思って、もうその段階で号泣。お芝居でもう体中の水分出し切ったぐらい泣いた後に、(フィナーレ)で『美』が押し寄せてきた。恐ろしく格好いい人たちのパッションを感じて、ちょっと体力が持たなかったですね」

「つい最近のように感じるんです。宝塚音楽学校に合格した時に初めて見た真風の姿を覚えているんですよ。本当に背も高くてすらっとしていて格好いい。受かると思っていたら、やっぱり受かっている。自分よりも先に確認したぐらいです。『合格。はいそうですね』って。目が光り輝いていた。その人が銀橋に来た時に、もう全然同期とか関係なく『すごい!格好いい!』となる。92期の同期みんなで観劇して、それも感慨深いし楽しかったです」

(安藤アナ):天真さんの愛称は『たそ』。何で『たそ』なんですか?

「音楽学校を卒業して劇団に入る時にみんなで愛称を決めるんですが、学生時代に呼ばれていた愛称が上級生の方と被っていたんです。じゃあ梅ちゃんと呼ばれていたのを『梅たん』はどうかということで、変えようと。宝塚は入団したらタレント名鑑のような『おとめ』という本があって、そのプロフィールを書くときに、ちょっとおしゃれにカタカナでタソと書いてタンと読ませたいと思っちゃって。『これはタンと読みますがタソと書いてください』と説明を付けたんですが全然伝わらなかった。出来上がったのを見たら、ひらがなで『梅たそ』になっていたんです。そこから梅もなくなって『たそ』で定着しました。本名にも芸名にも1文字も含まれていない」

(中島アナ):今ではみんな『たそさん』って呼んでいますよね。

「『さん』が付くようになっちゃって。『たそ』が『さん』みたいなものだったのに(笑)」

■初舞台の「ラインダンス」で深まる同期の絆

(中島アナ):宝塚をキーワードで紐解くアプレジェンヌ辞典のコーナーです。本日のキーワードは「ラインダンス」。一列に並んで同じステップを踏んだり脚を上げたりする踊り、通称「ロケット」。ラインダンスで有名になったニューヨークのダンスチームの名称がその由来。初めて登場したのは1927年当時、日本初のレビューでもあった舞台『モン・パリ』。大劇場の公演には基本的に一回は組み込まれ、主に下級生が出演する。はつらつとした掛け声とキレのあるダンスはフレッシュさ満点。

「初舞台生は(ラインダンスを)必ずやります。みんなで一緒に脚を上げて、いま思い出しても大変でした。とにかく『統率美』で、そろえることが一番大事なことです。娘役から男役まで最大で20センチぐらい身長差があって腰の位置もみんな違うんですが、脚を上げた時のつま先の位置で合わせる。だから柔らかさがとても大事で、腰位置が高い子はちょっと有利。みんなの限界で一番上げるところでそろえることを突き詰める。もう毎日、朝から晩までずっと脚上げをして、みんなでひたすら練習していました」

「しかも音に合わせて『右で3回上げて左で上げて』と順番があるから、誰かがどこかで間違えると、イチから(やり直し)になるんです。誰かが間違えたら最初からやり直し。ギリギリで間違えたりすると、『そういうこともあるよ、やろう』とまた立ち上がって頭から練習して。誰一人欠けることなく、みんなで同じところを目指して頑張ろうと。今までで一番練習に打ち込んだ1曲なんじゃないかなと思います」

(中島アナ):そういうところで同期の絆が生まれ、宝塚の代名詞とも言える「統率美」が培われていくんですね。

「音楽学校の2年間を経て初舞台になるので、その間にだいぶ同期の絆っていうのは深まってはいるんですが、一つの作品を作るのは初めて。一緒に暮らしているから、お互いのどんな一面も知っていて家族よりも濃い絆がある。言い合いも一回始まっちゃったら、結局もう大げんかみたいにもなるんです。でも『頑張ろう』『ごめんね。私もさっき言いすぎた』って仲直りして。本当に青春です」

 (中編に続く)

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『アプレジェンヌ 〜日テレ大劇場へようこそ〜』は日テレNEWS24のシリーズ企画。元タカラジェンヌをお招きし、日本テレビアナウンサーで熱烈な宝塚ファンである、安藤翔アナ(妻が元タカラジェンヌ)、中島芽生アナ(宝塚音楽学校を4回受験)の2人が、ゲストの宝塚時代・退団後の生き方に迫ります。次回は元星組トップスターの安蘭けいさんです。