【言葉禁止の喫茶店】 どんなコミュニケーションが生まれるのか ろう者は「日常生活のヒントに」
店舗を訪れると、入り口には「ここから言葉NG」と大きく掲げられています。その手前までは言葉を使うことができるので、その場でメニューを確認して代金を支払いますが、注文は言葉の使用が禁止されている店内に入ってからです。店内には「これ!」と指をさして注文ができないように、メニューはありません。支払時に対応した店員とは別の店員にジェスチャーのみで注文します。
■来店客は…「間違えるのも込みでだいご味」
たまたま通りかかったという19歳の会社員2人組は、そろってカフェオレを注文。1人は“牛”、“搾る”などをジェスチャーで伝え、カフェオレを注文できましたが、1人はうまく伝わらずコーヒーが提供されました。しかし「間違えるのも込みでだいご味。伝わったらうれしいし、伝わらなかったらあーっていう感じが楽しかったです」と振り返り「自分の思いを伝えるだけじゃなくて、相手の思いをくみ取るのも、意思疎通においては大事なんだなと感じました」と語りました。
■耳が聞こえないろう者も来店「日常生活のヒントに」
またこの日は、耳が聞こえないろう者の方も来店。「注文がどうやったら伝わるのか、日常生活のヒントになると思った」と来店の経緯を明かしました。
この店では、ジェスチャーが共通言語です。手話ではなくジェスチャーで注文を終えると、店内にいた韓国人の客と「あなたはどのように注文したのか?」とジェスチャーで会話する様子が見られ、さらに次から次へと客や店員が会話に加わり、最後には立ち上がって店内の全員で手話やジェスチャーを楽しむ様子が見られました。
周囲の人とコミュニケーションを楽しんだ48歳のろう者の客は「伝えようとすることに自身も聴者も集中できた」と普段よりも聴者とコミュニケーションが取りやすかったと明かし、一緒に会話を楽しんだ38歳の客は「まさか1時間もいるとは。こういう環境でルール下だとフラットに会話できる。こういう場があると、現実の場でも積極的にコミュニケーションを取ってみようと勇気が持てる」と語りました。
■言葉を禁止した意図は?
言葉を禁止した意図について「例えば、自分は英語がしゃべれないから、海外の人と話すのを無意識に避けてしまうとか、手話が使えないから手話での会話を無意識に避けてしまうとか、そういった言語があることによって、ハードルになってしまうみたいなことがあるなと思いまして、この『言葉のない喫茶店』ではそれを全部取っ払ってみたらどんな体験が生まれるのかというところにチャレンジしています」と語りました。
『言葉のない喫茶店』は、5日まで開催される予定です。