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ダウンタウンにT.M.R.も フィギュアブランドが誕生15周年 大人が夢中になるワケ

2023年3月25日 22:10
ダウンタウンにT.M.R.も フィギュアブランドが誕生15周年 大人が夢中になるワケ
『S.H.Figuarts』(左から)松本人志 -究極のボケ- 、浜田雅功 -究極のツッコミ- (c)YOSHIMOTO KOGYO
テレビや映画、ゲームなどに登場するキャラクターや人物をかたどった立体的な造形物・フィギュア。“可動によるキャラクター表現の追求”をテーマにしたフィギュアブランドが誕生から15周年を迎え、メーカー担当者がその進化の歴史と未来への展望を明かしました。

誕生15周年を記念して、東京・千代田区で行われているフィギュアの展示イベント『S.H.Figuarts(エス・エイチ・フィギュアーツ)15th GALLERY』。これまでに生み出された1500種類を超えるフィギュアの進化の過程を巡る展示内容となっています。

フィギュアブランドのルーツについて、BANDAI SPIRITS・コレクターズ事業部の西澤清人さんは、「元々は、子供用のおもちゃ。1980年代後半に、『聖闘士星矢』セイントクロスシリーズがヒットしたことが原点でした」と明かしました。

『聖闘士星矢』は、1985年に連載がスタートした車田正美さんの人気漫画。テレビアニメや映画化もされ、海外でも人気を博しました。作品は、主人公の星矢たちが女神アテナを守るため、星座形の聖衣(クロス)を鎧として装着し、小宇宙(コスモ)と呼ばれる不思議な力で敵と戦う物語です。

セイントクロスシリーズについて、西澤さんは「キャラクター部分はプラスチック樹脂を使用、“装着”して“変身”できる聖衣(クロス)パーツは重量感のある金属に、光り輝くメタリック加工を施していました」と、当時の子供たちが『聖闘士星矢』の世界観に浸ることができるおもちゃだったといいます。

この“装着”と“変身”(Souchaku Henshin)のSとHの頭文字を取って、のちの『S.H.Figuarts』というブランド名につながったということです。

■ユーザーの需要と、ブランドの葛藤

“装着変身”のおもちゃを楽しんでいた世代は、2000年代になると社会人に。この世代を、改めてターゲットにしたのが『S.H.Figuarts』ブランドの最初の一歩だったと西澤さんは話します。もう一度、フィギュアに興味を持ってもらうために、何をすれば良いのか検証した結果、「これまで子供用のフィギュア(玩具)は、デザイン的にもアニメ作画とは大きくかけ離れたものでしたし、キャラクターの腕や足が決まった方向にしか動かないなど、単純な動きしかできませんでした。大人になったユーザーがフィギュアに対して求めたものは、キャラクターの“リアルな動きの再現”だったのです」と明かしました。

そして、「ユーザーの需要に応えるために、人間の関節のような仕組みを持つ“ボールジョイント”を用いました。これで肩や足の付け根、腰回りなどの可動範囲が広がり、キャラクターがより劇中に近い動きを再現できるようなりました」と明かしつつも、当時メーカーとしては手放しで喜ぶことができなかったそうです。そのワケについて、西澤さんは「フィギュアに対して“可動”の需要が高まり、“装着変身”という概念は、不要なのでは? という声があがりました」と、社内で大きな議論を呼んだそうです。

その結果、メーカーが出した答えは「キャラクターの一部パーツには、金属やメタリック塗装を施した“装着変身”の流れを残しつつ、流行になってきた“可動”の要素に振り切ることにしました」と、長年築き上げてきた“装着変身”の要素を抑える決断をしたということです。そうした試行錯誤が行われ、2008年に誕生したのがフィギュアブランド『S.H.Figuarts(エス・エイチ・フィギュアーツ)』でした。

■かつてない本物感を追求

そして、さらにフィギュアは本物志向に。スクリーンの中で活躍するキャラクターたちの力強いアクション、その“魂”の躍動をより再現したのが、2014年に登場した新たな造形技術“真骨彫製法”です。この新製法について、西澤さんは「キャラクターを表面的ではなく骨格から造形を行い、アナログ・デジタルの幾重の製作工程を通して追求しました。劇中で、実際にアクションを担当したスーツアクターの体をスキャンし、骨格から素体を作成しているため、体の重心も安定し接地が自然に。 人間本来の動きにこだわったキャラクターたちの躍動感が、自在に再現できるようになりました」と、技術の進歩を明かしました。

■新たな購買層獲得のため…身近なテレビスターもフィギュアに

15年間の歴史で、様々な動きをリアルに表現できるようになったフィギュア。近年、人気となっているフィギュアモデルについては、「過去にもマイケル・ジャクソンさんや、フレディ・マーキュリーさんなど、外国人スターのフィギュアが注目された時期がありました。フィギュアの技術も上がってきて、改めて身近なテレビスターをモデルにしたフィギュアに力を入れたいと思っています。今までフィギュアに興味を持っていなかったけど、“このアーティストが好きだから欲しい”という新規のお客様がいることに気づきました」と、新たな購買層を開拓していると明かしました。

最後に、フィギュアの未来について西澤さんは「人間の根源にある“好きなものをコレクションする”という気持ちを具現化していく意味でも、フィギュア業界にはまだ色々な可能性があると思っております。『S.H.Figuarts』は、“見た目”と“アクション性能”の両立を目指し、飾るだけでなく表情パーツなどのオプションも含めて“遊べること”も重視しています。最終的には『アクションフィギュア』のカルチャーを世界に広げたいと考えております」と、日本のポップカルチャーの可能性を語りました。

フィギュアブランド誕生15周年を記念した『S.H.Figuarts 15th GALLERY』は、4月4日からアニメやゲームに特化した展示を行う予定です。