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元宝塚トップ・凰稀かなめ、相手役・実咲凜音とのほっこりエピソード――魚介が苦手なのに魚肉ソーセージ入りのおにぎりを…

2022年12月7日 20:10
元宝塚トップ・凰稀かなめ、相手役・実咲凜音とのほっこりエピソード――魚介が苦手なのに魚肉ソーセージ入りのおにぎりを…

宝塚歌劇団・宙組トップスターの凰稀かなめさん。2度の組替えを経てトップに就任した宙組では宝塚の代表作『ベルサイユのばら』でオスカル役を演じた。退団が決まった中で、念願の役を務めた当時の思いを語った。一方、相手役・実咲凜音さんとのほっこりエピソードも……。熱烈な宝塚ファンである日本テレビアナウンサーの安藤翔アナ(妻が元タカラジェンヌ)、中島芽生アナ(宝塚音楽学校を4回受験)の2人が迫った。(前・中・後編の前編)

■ペガサスに乗ったオスカル役

(中島アナ):凰稀かなめさんは神奈川県出身、9月4日生まれ。2000年に86期生として入団し、2012年に宙組のトップスターに就任。都会的で華やかなビジュアルと巧みな芝居で客席を魅了し、2015年に退団されました。その後もドラマ・映画・舞台・コンサートなど幅広いフィールドでご活躍です

(安藤アナ):私、初めての宝塚観劇が(凰稀かなめさん主演の)2014年の宙組公演 『ベルサイユのばら―オスカル編―』だったんです。ペガサスに乗った凰稀さんが舞台から出てくる。本当に衝撃で、宝塚に興味を持ったきっかけでした。ペガサスに乗っている時の心境はどうでしたか?

(凰稀さん):このセットは後ろでスタッフさんが手動で動かしてくださっているんですよ。全部、手動なんです。それだけでも感謝の気持ちでいっぱいでしたね。客席の結構、真上に行くのですけれど、その時にお客さまの半端なくいい笑顔が見えて、とにかく気持ちよかった。歌詞も飛びそうになるぐらい。私から見たら皆さんの方にライトが当たっているので。神々しくてすごくきれいでしたね。

(安藤アナ):宝塚の「ベルばら」という代表作。そこに携われるというのは格別ですか。

(凰稀さん):そうですね。(配属やタイミングで)できる人とできない人がいます。私は雪組時代の下級生の頃にも『ベルサイユのばら』をさせてもらいました。(本公演では)兵士の役で、新人公演ではアンドレ役。もともとオスカルがすごく好きでやりたかったんです。でもトップになるまでずっとできなくて。

それでトップになった後に、壮一帆さんが雪組トップだった時の『ベルサイユのばら-フェルゼン編-』にオスカル役で特別出演させてもらえたんです。そこで自分の全ての思いをぶつけた。そうしたら(演出家の)植田紳爾先生が私の声を『オスカルの声だ』と気に入ってくださった。ぜひ100周年でオスカル編を作りたいということで、やらせていただいたんですよ。

そこで「花のいのち」という新曲を最後に歌わせていただいたんです。その時にはもう退団を決めていて、その歌詞がそのまま自分の宝塚人生とオスカルの生涯というか、その思いっていうのがすごく重なった歌詞。

(中島アナ):「その花は女として生まれ 男として生き 人として宙に還る」「その花は神話になる」という。

(凰稀さん):そうなんです。あの時は(退団の)発表もまだしてなかったんですけど。いろんな先生方の愛が詰まった作品で大好きな作品ですね。それを見てくださったのはうれしいです。

■2度の組替えを経てトップ就任

(中島アナ):そんな凰稀さんですけれども、トップになる前には2度の組替えを経て、宙組のトップスターに就任されました。環境が変わっていく時に、自分の居場所といったものをどのように作っていったのでしょうか。

(凰稀さん):1度目は雪組から星組への異動でした。10年ほど雪組にいたのですが、殻を破りたい、抜け出したいともがいていた時だったので、話が来た時に『ぜひ行きます』と言いましたね。その時は迷いなく。でも星組に行ったら、もう育ちもカラーも全然違いますので、とにかく一生懸命やるしかなくて。

2度目の組替えで宙組に行かせていただいたら、また全然違う。でもその時は2番手という立場がありましたので、それぞれのトップさんの隣にどう存在すればいいかを常に考えるようになりました。太陽みたいなトップさんだったら自分は月のように。月の方だったら、もともと持っている月の部分も持ちつつ、太陽っぽいちょっとやんちゃな部分も出していかないといけないなと。一歩後ろで(トップスターの)背中を常に見るっていうことを意識していましたね。

(安藤アナ):(星組トップの)柚希礼音さんと(宙組トップの)大空ゆうひ(当時は大空祐飛)さんではタイプが異なるトップさんで、それぞれ背中の見え方も違いましたか。

(凰稀さん):そうですね。星組の柚希さんはトップ就任と同時に、私も2番手として行きました。若々しい勢いのあるトップさんということで「勢い」で行けたんです。その中から作品ごとに色を付けていったり、どう対照的にどう見えるかっていうところを常に考えたり。

(宙組の)大空さんは、もうできあがった大人の男役さんだったので、「やんちゃな弟」的な部分も見せられたらいいな、などと常に考えていましたね。

(中島アナ):その凰稀さんがいざトップになる時は、どういうトップ像を目指していこうとお考えになったんですか。

(凰稀さん):宙組は特殊で宝塚の中では(他の組に比べて)歴史がなかったんです。私がいた時でまだ15年ぐらい。私もよそから来ているので、組のルールも全くないですし、先輩からの教えも実はなかった。

なので、そこを少しずつ固めていく、土台作りをちゃんとしなければいけないなとまず思ったんです。宙組に行ってトップになる時に、ちょっと立て直してほしいということも言われたんです。なので、土台作り、ピラミッドをちゃんとしなければいけないと思ったので、細かいことを言うようにしていました。

だから今までのトップさんに比べたらうるさいトップだったとは思います。でも今まで宝塚を支えてきたのはやはり先輩方が作り上げてきたピラミッド。それを宙組さんに作ってもらいたいということだったので、みんなで盛り上げていこうよと。

■相手役の実咲凜音さんからのメッセージ

(中島アナ):そんな凰稀さんのトップ時代を支えた相手役の実咲凜音さん(元宙組トップ娘役)にメッセージをいただきました。

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――凰稀かなめさんは実咲さんにとってどんな方でしたか。

「舞台人として大切なことを教え続けてくれた方。ほぼ毎日大きな舞台で綺麗なお衣装を着て明るいライトを浴びる事。これは、決して当たり前の事ではないという事。常に感謝の気持ちを忘れないでいる事」

――凰稀さんと思い出に残るエピソードがあれば教えてください。

「魚介が苦手なりかさん(凰稀さん)。私が良かれと思って作った爆弾おにぎりに魚肉ソーセージが入っていて笑。でも優しさで一口、食べて下さいました」

――退団後に印象の変化はありましたか。

以前お仕事でご一緒させていただいた時にも感じたのですが、すごく柔らかいイメージで素の私で甘えさせていただいております
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(凰稀さん):懐かしいですね。凜音がこうやって後ろに手を組んで「りかさん、お弁当を作ってきました」と。それで出されたのが丸いアルミホイル。「ありがとう!」と開けたら、おにぎりがあって食べたんです。そうしたら魚介っぽい味がするなと思って「これ魚介入ってる? 何入れた?」と聞いたら「魚肉ソーセージと…」って。

「魚肉ソーセージって何だか分かる? 魚が入ってるんだよ」「ああ!すみませんでした!」という。

(安藤アナ):魚介が苦手とわかっていても、魚肉ソーセージと魚介がつながらなかったんでしょうね。

(凰稀さん):そうなんです。かわいいなと思いながら一口食べて、「ありがとう」って言ったら、次の日、またお弁当を持ってきたんですよ。小さいタッパーに「りかさん、お弁当作ってきました」と。中身はチンジャオロースーでした。「チンジャオロースー大好き、うれしい」と食べたらおいしかったんです。ちょっと料理の腕を上げてきた。すごくうれしかったですね。

凜音のご飯ネタは結構あるんですよ。バレンタインももらったりするんですけど、その時もハート形のクッキーみたいなお菓子をくれたんです。「ありがとう。後で食べるね」と言って食べたら、もう歯が折れそうなぐらい硬くて。「歯、取れるわ!」って次の日に言って。でも1年後には成長して。可愛いなあと思いながら。

(安藤アナ):ホッコリするエピソードばかりで。

(凰稀さん):そうなんですよ。めちゃくちゃ面白かったです。

(中島アナ):退団後もお仕事でご一緒させていただいた時にも、いつもすごく柔らかく包んでくださって、素の私で甘えさせていただいておりますと。

(凰稀さん)でしょうね。明日ですね、実は凜音と倉敷でコンサートがありまして、そのお稽古の時にすごく楽しそうに、元気ハツラツにやっているので「良かったね」と言ったら、「自然でいられています」と。

(中編に続く)

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アプレジェンヌ 〜日テレ大劇場へようこそ〜』は日テレNEWS24のシリーズ企画。元タ カラジェンヌをお招きし、日本テレビアナウンサーで熱烈な宝塚ファンである、安藤翔アナ(妻が元タカラジェンヌ)、中島芽生アナ(宝塚音楽学校を4回受験)の2人が、ゲストの宝塚時代・退団後の生き方に迫ります。

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