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サッカー漫画『シュート!』の大島司が語る 漫画家に求められるもの “みんな内面をさらけ出してる”

2023年1月15日 15:35
サッカー漫画『シュート!』の大島司が語る 漫画家に求められるもの “みんな内面をさらけ出してる”
漫画家の大島司さん
累計発行部数5000万部を記録したサッカー漫画『シュート!』などで知られる、漫画家の大島司さんにインタビュー。漫画家になったきっかけや漫画家として大切にしていることを聞きました。

大島さんは1990年に漫画『シュート!』でデビュー。1993年にアニメ化され、翌年には講談社漫画賞少年部門を受賞、またSMAP主演で実写映画化されました。英語、中国語、韓国語などさまざまな国・地域で翻訳、出版され、連載開始から30年以上がたった今でも人気を博しています。

■漫画家デビューに至るまで「めげずに投稿し続けた」

――漫画家になろうと思ったきっかけはなんですか?

月並みですけど、絵を描くのが好きだった。絵を描く=漫画家っていうありきたりな。小学生の卒業文集に“漫画家になる”って書いてあったので、小学生の中頃にはもう描いていたと思います。

――プロの漫画家としてデビューするにあたって、努力したことはなんですか?

新人賞に応募するっていうことを中学ぐらいから始めて、やっぱり最初は跳ね飛ばされるっていうか。いい結果が続かない時とか本当に落ち込むんですけど、めげずに投稿し続けたっていうことが努力だと思います。

――最初は苦戦続きだったんですか?

最初は意外によかったんです。それでやる気になって、半年に1回ぐらいなんですけど新人賞とかって。毎回、毎回投稿し続けてたんですけど、徐々に相手にされなくなってきたっていうこともあって、その時は本当にもうめげましたね。高校生ぐらいのときですけど。

――そこから最終的にデビューに至るまでにどのような工夫をされたんですか?

自分が女なんで、漫画を描くなら少女漫画に投稿するっていうほんと単純な考えで投稿したんですけど、結局アクションが描きたかったので少年誌に投稿すればよかったんですけど、ずっとその女性誌に投稿してて、どんどん成績が落ちてきて、「これはダメだ、もうダメ元でいいから少年誌に送ってみよう」と思ってそうしたら拾ってもらったんです。

――先生はスポーツ漫画を描かれてると思うんですが、動きなどはどうやって研究をされてるんですか。

すごくアクションにこだわりを持っていて、常にかっこいい少年漫画ですし、男の子かっこいいものが好きですから、カッコよく見えるアングルとかを意識して描くようにしていますね。本物を見ながらも描くんですけど、本物のそのまま描くとカッコ悪かったりすることも結構あるわけですよ。本当の動作とかって、結構その瞬間捉えててもマヌケな形だったり格好だったりするので、サッカーのすごさよりも物語を追って読んでいるんで、とにかく「かっこいい!すてき!」って思う絵を描けないと意味がないので、それをすごく意識して描いてます。

■漫画家の一番大切な才能は“やる気”

去年行われた新人漫画家オーディション『THE TOKIWA』。“劇団ひとりさんが手がけた原作を漫画にする権利”を獲得するため、書類審査を通過した11人の漫画家が様々な課題に取り組んでいく企画です。(本企画から生まれた漫画『ようこそ!パラダイス劇場へ』はコミック配信サービス『まんが王国』で配信中)

そのオーディションで大島さんは審査員を務めました。“くじびきで引いたテーマをセリフを使わずに1ページで表現する”という課題では、コマ割りでいかに動きや感情を表現できるかが大事かを考えていたという大島さん。実際に自身が描いた作品を用いてコマ割りの重要性について解説してもらいました。

ーーご自身の作品で”このコマにはこんな意味がある”というのを解説いただけますか?

ハイタッチなので喜びですよね。ワクワクとか喜びとかそういうのも表現する。で、細かいアレですけど、男の子たちがハイタッチをしているコマに行くまで読者ってわかんないわけですよね、そこを見るまで何が行われるのか。「もしかして笑いながら殴りに行ってる?」みたいな感じを出しつつ「こう!」っていう、そういう強弱が漫画には必要ですよね。言葉がないし前(のコマ)もないので、そういう意味でもちょっと分からなさすぎてはいますけど、1コマ1コマ「ここはどう」っていうのを説明できるくらいの感覚でやるのが理想だと私は思っております。

――漫画家を目指す方に求められることはなんですか?

個性を出せることと思い切り自分を出すということですかね。作家ってみんな内面をさらけ出してるようなものなので。それを躊躇(ちゅうちょ)しているようだと、人をひきつけるものにはならないんじゃないかなと思うんですけど。恥ずかしがっていたらやれない職業ですよね。

――漫画家にとって一番大事な才能ってなんだと思いますか?

やる気ですかね。情熱というか、人間っていうのは何事もそうですけどね。逃げていたら何もできないですけどやる気があれば絵が下手だって売れますから。売れたら勝ちですから。さらけ出してるわけですよ。それを読者は受け取ったわけですよね。そもそも私もそんなにそんな上手いわけじゃなかったし、描いているうちにうまくなる人もいるし、ヘタな人もいるんですけど、絵は最低限描ければいいと思います。それが、職業漫画家。

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