オオカミより強い“青ずきん” 絵本で性別の固定観念を壊す 元アナ・杉上佐智枝がイタリアで取材
世界最古の大学ともいわれるボローニャ大学や、スパゲティの“ボロネーゼ”で有名なイタリア北部の古都・ボローニャ。ここで毎年春、世界最大の児童書専門展である『ボローニャ・チルドレンズ・ブックフェア』が開催されています。
入ってみると、女性が描かれたものや、性教育・ジェンダーに関する本がずらりと並んでいます。店長に話を聞きました。
杉上「こちらは、どういう書店なのですか?」
店長「基本的には、女性に対する性差別、ジェンダーのこと、女性に対する暴力などに特化した本を置いています。物語、詩、エッセイ、伝記、児童書などで、それらの著者が全員女性であるということに重きを置いています」
杉上「ティーンや児童向けのものもありますね?」
店長「もちろんあります。特に、この5年くらいで、性と体、生理に関する本は爆発的に増えました。イタリアでは、性や体の話は学校でも家庭でも話しにくい。小学校や中・高でも性教育は行われていないですし、体の変化に関する本も数年前まで一切なかったです」
児童向けの絵本では、“王子様”ではなく“本”に助けられたプリンセスの物語や、日本でも出版されている『せかいでさいしょにズボンをはいた女の子』という絵本。筋骨隆々だけど、趣味が編み物の男性を描いた作品など、ジェンダーバイアスやステレオタイプを打破するような視点を持つ絵本が多くありました。
外務省のホームページによると、国民の約80%がキリスト教(カトリック)といわれるイタリア。男女の役割が明確だったファシズム政権下での歴史的背景もあり、保守的な価値観が根強く性について語ることがタブーとされていて、女性の権利や多様性への理解も進んでいない面があるといいます。世界経済フォーラムが今年6月に発表したジェンダー・ギャップ指数では、イタリアは146か国中87位(日本は118位)。EU27か国中25番目です。
そのような保守的思想の強いイタリア社会での挑戦。この書店でも多く見かけた、多様性やジェンダー平等に関する本だけを取り扱っている出版社があるということで、ブックフェアの会場に向かいました。