×

元宝塚・天真みちる、俳優・社長・脚本……マルチな肩書きに懸ける思い「背水の陣で責任を取る人間になろう」

2022年6月24日 20:10
元宝塚・天真みちる、俳優・社長・脚本……マルチな肩書きに懸ける思い「背水の陣で責任を取る人間になろう」

 「おじさん役」に定評がある名バイプレーヤーとして活躍した元花組スターの天真みちるさん。宝塚退団後は俳優のほか、企画・脚本・演出といった裏方も務め、自身の会社も設立。主宰する劇団も旗揚げした。一人で何役もこなす原動力とは――。熱烈な宝塚ファンである日本テレビアナウンサーの安藤翔アナ(妻が元タカラジェンヌ)、中島芽生アナ(宝塚音楽学校を4回受験)の2人が迫った。( ・後編の後編)  

■宝塚時代から「プチ演出家」

(中島アナ):天真さんは、たくさんの肩書きをお持ちで、脚本や演出という裏方の仕事にも取り組まれています。

「宝塚で上級生になってくると、下級生の自主稽古をまとめてひとつの場面をブラッシュアップしてほしい、と言われることがあるんです。上級生になってからは『この場面をこう演出したい』と『プチ演出家』のようなことをし始めていた自分がいました。それがうまく演出家の先生と合致していたらいいのですが、時々喧嘩することもある。『勝手にそんなに作っちゃダメだよ』と。それで、おそらくもう自分で作りたいんだろうなという意志を自分で感じ始めていたんです」

「だったらもう卒業してイチから作っていきたいかもしれないと。企画・脚本や演出ができて、作品を作るまでの工程をしっかりと勉強したいと思って、卒業したというところがあります。もともと自分は『感覚人間』。自主稽古で下級生に説明するときも『踊りをもっとバーンってやって』『ガッて見たらここに照明がバッてくるからちゃんとここに照明を映して』のように擬音で説明していたんです」

「脚本を書き始めてから、今まで擬音でしゃべっていたことをちゃんと言葉としてどう書けば読み手の演じる方に伝わるのか、ということに直面しています。もっと自分の語彙力を磨いて、自分に足りない部分を探して突き詰めていきたいなと思っています」

■責任を持つことで作品が変わるのか

(安藤アナ):そんな中で「たその会社」を設立されたんですか。

「そうなんです。もともと企画をやりたいと思って携わっていたときに、自分が手がけたものではなくてサブ的な立場だったので、何か他人事でやっている自分がいて、それがすごく嫌だった。それで自分で企画を考えて一番責任を持つ立場になったら、もっと作品が変わっていくのか、もっと自分を背水の陣で追い込んでいきたいという思いがありました。会社を設立して責任を取る人間になろうということです。宝塚歌劇団では大勢でひとつの作品を作るという一員としてやっていたんですが、それだけじゃなくてゼロから作ることも知りたかったので、今はどっちもできて楽しいです」

(中島アナ):さらに劇団を立ち上げて6月に旗揚げ公演が控えているとのこと。まったく演技をしたことがない皆さんが集まって、イチから天真さんが脚本・演出するという舞台ですよね。

「経験ゼロという方々なので、書いたセリフを覚えるとなってしまうと、どうしても自分の気持ちで言っているというよりは『しゃべらされている』という感じになってしまう。そこで稽古を重ねてインタビューのように、その方の人生を聞いて、その方が自分に起きたエピソードを皆さんに話す。それが芝居として見えるのだろうか、ということをいま劇団の稽古で突き詰めています。自分もどこに着地するかは分からないんですが、みなさんと一緒に『こうかな、こうかな』と変えながらやっています」

「演じる方々にとっては何かハクハクさせているのかなと思うのですが、本当に私自身がどんどん変わっていっちゃうんですよ。自分でそれをとどめておけないので、演者さんに言って忘れないように、脚本として書き留めていく書き方をしています。本当に今から本番がどうなるか、不安もありつつ楽しみでもある、見守っていただけたらなと思います」

(中島アナ):作り上げていく中で、宝塚の経験が生きていますか。

「やりたいですと立候補してきてくださったのも、もともとは宝塚や観劇が好きな方々。じゃあ表現をやってみようということで立ち上げたので、根底にある気持ちが一緒なんですよね。こう見えたら格好いいなというのも、客席から見た意見としてみんな共通認識がある。説明しなくても『わかります。あの公演の○○さんみたいにやったらいいですね』と、一発で分かるので助かっています。(宝塚時代は)お客さんと演者という立場だったんですが、やっぱり繋がっているんだなと再認識して良かったと思います。楽しいですね」

(安藤アナ):今回、天真さんの先輩にあたる鳳真由さんにもお話を聞きました。「体当たりのように見えるけど、実は小数点以下いくつまで計算している緻密な人」と。ご自身ではどう思いますか。やはり突き詰めていこうというタイプですか。

「最初は体当たりで行っちゃうんです。どうしても見切り発車で、社長になったのもあまり考えていない。責任を取るんだとなったら『社長だ!(会社)設立だ!』という感じで、勢いで。そうなってから細かく突き詰めて考える。あまり考えずに始めたことで、反省点がどの工程でもあって『社長をやるには』『劇団を立ち上げるには』『まずスケジュール管理をちゃんとしよう』と。で、じゃあやってもらう人を見つけるのか、自分でやるのかと細かく考える。見切り発進してからぶつかった後に考えることが多いかもしれないです」

(中島アナ):また、6月の舞台では同期の彩凪翔さんと共演をされますね。

「舞台で一緒になるのは初めてです。雪組と花組で組も違ったので、そこまで劇団で関わっていたわけではないのですけど、やっぱり久しぶりに会ったら『ワーッ』となるし、音楽学校2年間の絆や、その後の事がすぐに蘇りました。もう『ズッ友』なんだなと」

「作品としては聞きなれない単語だったり世界観だったりが特殊な舞台ではあるので、まずはその世界を知っていただきたいなと。その説明を彩凪さんがされている。だから彩凪さんが頭を使うことが多いのですが、私の立場的にはそれこそ体当たり。私は体を使う、彩凪さんは頭を使う、という形で見てもらったら面白いかもしれないです。今は筋肉痛との闘いです」

(安藤アナ):最後にこちらの質問にお答えいただきたいと思います。宝塚で学んだことで一番生きていることは何ですか。

「『良い意味でお節介』です。劇団にいた頃は、自分だけが良ければいいわけではなくて、その作品で全員が一緒にゴールテープを切ること。相手に手を差し伸べたり、助けてもらったりしたこともいっぱいあります。相手のことを考えたり、ちゃんと助けてほしいなというところを見つけて手を差し伸べられたりする人間でありたいなと思えたところでした。とても大切にしていきたいことです」

◇ ◇ ◇

 『アプレジェンヌ 〜日テレ大劇場へようこそ〜』は日テレNEWS24のシリーズ企画。元タ カラジェンヌをお招きし、日本テレビアナウンサーで熱烈な宝塚ファンである、安藤翔アナ(妻が元タカラジェンヌ)、中島芽生アナ(宝塚音楽学校を4回受験)の2人が、ゲストの宝塚時代・退団後の生き方に迫ります。次回は元星組トップスターの安蘭けいさんです。  

  • 日テレNEWS NNN
  • カルチャー
  • 元宝塚・天真みちる、俳優・社長・脚本……マルチな肩書きに懸ける思い「背水の陣で責任を取る人間になろう」