考察の魅力は? 考察型展覧会『その怪文書を読みましたか』を取材 100枚以上のメッセージを展示
現在、横浜で開催中の考察型展覧会『その怪文書を読みましたか』(6月2日まで)。考察型展覧会とは一体どういうものなのか、そして魅力はどこにあるのか取材しました。
ホラー制作会社の株式会社 闇とインターネットを中心に活躍するホラー作家の梨さんが手がけるこの展覧会。 2023年3月に渋谷で初めて開催されると、入場までに最大6時間待ち(主催者発表)となり、その後は大阪・福岡・広島でも開催。イベント担当者によると、5か所目となる横浜での開催で動員数は累計2万人に迫る勢いだといいます。
■100枚を超える怪文書 展覧会はどう楽しむ?
そもそも怪文書とは何なのか。展覧会では「意味不明な主張をしている文章のこと。内容は誹謗中傷や被害妄想、非現実的なものが多い。ほとんどが根拠不明で誤った情報を元にしている」と定義しています。
楽しみ方としては「SNSを中心にフェイクニュースや疑似科学などの不確かな情報が紛れ込む現代において、正しい情報を精査し、読み解くことは難しくなっています。今回の展示は、そんな不確かなネット上の情報を“怪文書”に見立て、あらゆる情報から考察を楽しむ展覧会。誰が、どこで、なぜ、この怪文書を書いたのか。徐々に浮かび上がる背景を考える本企画を通して、情報社会を生き抜くための洞察力、考察力が問われるような体験をぜひお楽しみください」としています。
■キャッチコピーは「この展覧会は普通ではありません」
本展の会場内には100枚を超える怪文書を展示。さらに、紙の文書だけではなく動画も上映。来場者は、番号が振られた怪文書を順番に読みながら、物語の背景を考察していきます。展示されている怪文書は全て撮影OKで、一部SNS等でのシェアは禁止となっています。
ほかにも怪文書を読むだけでなく、自身で怪文書を書いてみるコーナーや感想など自由に書き込める『交感ノート』が置かれたコーナー、怪文書が入った『怪文書ガチャ』(全11種)『怪文書フォーチュンクッキー』(全24種)など、様々なコンテンツも。怪文書を読み解く中で、細かな仕掛けも施されていて、時間をかけて楽しむことができます。
■流行は“モキュメンタリー”
開催のきっかけなどを、イベント担当者に聞きました。
ーー思いついたきっかけは?
インターネットを中心に若者にすごく人気のある梨さんが、モキュメンタリーというジャンルにすごく精力的に取り組まれていたので、形にしてみようということで生み出した展覧会になります。
ーーモキュメンタリーとは?
ドキュメンタリーの造語になるんですけど、よりリアルなフィクション“これって本当なのかな?”みたいな、ゾワゾワするような、怖さを醸し出すような意味合いを持っておます。ドキュメンタリーは本当のことを追いかけますが、いかに本当っぽくコンテンツを楽しんでいただけるかっていうところに注力したものになります。
※モキュメンタリー:疑似という意味の“mock”とドキュメンタリーを合わせた造語。フィクションであることを前提とし、ドキュメンタリーのように表現すること
ーー来場者には、どんなことを感じとってほしいですか?
感じ方はひとつのゴールをこちらで決めているわけじゃないので、それこそ100人いれば100通りの答えにつなげていってほしいなと思いますし、答えを探すためにイベントから帰った後、SNSでいろんな意見をやりとりしてほしいなと思っています。
■来場者に聞く考察の魅力
実際、来場者は梨さんのファンやホラー・モキュメンタリー好きの人が多く訪れていました。展覧会の感想を聞いてみると「質感・実在性がいい。実際に紙がはられているのはパワーがある」「ストーリーを勝手に読み取っていけるから、考察型というのは作り手と自分の勝負みたい」といった声や「読んでいくうちに“こういうことか”っていうのが、だんだん分かっていって、それがすごく気持ちいいというか、幸せな気持ちになりました」など様々な声がありました。
“考察型”ということで、来場者の考察を聞いてみると「今まで見かけていた変な文章っていうのが、もしかしたら別の次元とか、別の上位存在みたいなものからメッセージを受けている人が出力していた、そういうメッセージだったのかな」といった意見や、撮影した写真をもとに「これからじっくり考察します」とし、会場を離れてからも楽しむという来場者が多数いました。
カップルで訪れていた20代・社会人の2人組は「すっごい楽しかった。もう一周したいくらい。考察のSNSを片手にもう1周、2周くらいしたい。全部の謎がだんだん、点と点がつながっていく。(進んでいくと)前に見たなっていう文章もあったりしたから、それをたどり合わせるのが楽しいです。新しい世界を知れたな。(SNS で)後で考察を見て、2人で楽しみたい」とコメント。考察の魅力を聞いてみると「2倍楽しめる。1回普通に見た後に、調べて、見ると何回も一つのコンテンツを楽しめるのが魅力」と語ってくれました。