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元宝塚トップ・真飛聖「誰かの心の灯火に」連日の募金活動  11年前の震災と退団公演を振り返る

2022年4月14日 20:10
元宝塚トップ・真飛聖「誰かの心の灯火に」連日の募金活動  11年前の震災と退団公演を振り返る
元花組トップスターの真飛聖さん

 宝塚歌劇団・元花組トップスターの真飛聖さん。美しさと温かさで花組を率いた真飛さんは、11年前の退団公演時には東日本大震災のチャリティー募金活動を行った。その当時の思いや“男役の流儀”、そして“その後”に、熱烈な宝塚ファンである日本テレビアナウンサーの安藤翔アナ(妻が元タカラジェンヌ)、中島芽生アナ(宝塚音楽学校を4回受験)の2人が迫った。( ・中・ 編の中編)  

■ランチショーのさなかに起きた地震

(安藤アナ):11年前、2011年3月11日はランチショーのさなかでした。

「退団公演を宝塚大劇場で無事に終えて、本拠地は卒業しました。(東京公演が始まる前の)間のランチショーだったんですが、(地震が発生した直後の)その時はあんなことになると思わなかったから、いったん中断という形。その後、これは再開できないという判断をして途中で終わりになりました」

「私はすごくおしゃべり。(地震の前は)お客さんもいじっちゃったり、一緒に出てくれている子たちと、ワーワーやっていたりしたらショーが長引いてしまっていました。それで、みなさんから『ありがとう』と言われてびっくりしたんです。というのも、もし予定通り終わっていたら帰宅途中で地震に遭遇していろんなことに巻き込まれて大変だったかもしれない」

(中島アナ):電車が止まって帰宅困難になってしまっていたかもしれない中で、会場のホテルが泊めてくださるとか、そんなことがあったんですよね。

「ホテルの方が食事も用意してくださったり、毛布を用意してくださったり。とてもありがたかったです」

(中島アナ):その日に一緒にいらした元花組スターの瀬戸かずやさんに、当時のことをうかがいました。

瀬戸かずやさん:
「(真飛さんは)鋭くクールに見えて、めちゃくちゃ人思いで温かくて。もう全員をこれ以上、伸びない手で包み込んでくださる。(震災後の退団公演は)『大丈夫なのかな』という思いも本当に拭えなかったんですけど、でも今私たちができるベストをやろうとはすごく思いましたし、それを本当に凛として真ん中で私たちを引っ張ってくださっていたのは真飛さん。ご自身の退団公演で絶対に気持ちや体力は大変だっただろうに、そんな姿を一つも見せなかった。私たちにできることを、ということで募金活動をしようとなり、真飛さんは本当に全日程立たれて、ものすごい拍手でお客様が迎えてくださいました」

「(舞台では)お客様の『ありがとう』『待っていました』と、そういう言葉が聞こえてくるくらい大きな拍手をいただいた。『私たち公演をしていいんだ』と。舞台に立てることって当たり前じゃない、すべてがうまく回ることって本当に奇跡なんだなと、そのとき体感しました。(真飛さんは)ただただ尊敬。大きかったです」

(安藤アナ):瀬戸さんからの言葉をどう感じられましたか。

「現実問題として、世の中や自分たちは今どういう状態なのかと、頭の中でいろんなことをぐるぐる巡らせて考えましたし、正解を出すのは難しかったですね。ただ、自分の退団公演だからということではなく、舞台人としてやっていく、(舞台に)立っていくということも使命ではある。やるということが決まって一人でも来てくださる方がいるのだったら、舞台上に立って、今自分たちができることを示す。あのころはそれが使命と思っていました。無我夢中であまり覚えていないので、瀬戸さんや(周囲で)見ていてくれていた人のほうが、私が言ったことや行動を覚えているとは思います」

■「誰かの心の灯火になれれば」

(安藤アナ):そういう状況で、葛藤や胸の内の苦しさはありませんでしたか。

「(舞台に)立っていいのかなという思いはもちろんありました。いろいろな舞台が中止になっている中、宝塚の世界は電飾もありますし華やかなので、どうなのかと実際に思ったし、何回も話し合いをしました。最初は複雑な思いはありましたが、やると決まった以上はそれぞれの役割がある。偉そうには言えないけれども、私たちは誰かの心のちょっとした灯火になれたら幸せだし、それが私たちの今できる最大のことなのかなと思いました」

「みんなが全員納得した上で『よし!』と全員で手を握るように『じゃあやろうね』と。意見がひとつでも違ったら、それは叶わなかったと思うんですけど、みんなが納得してくれて前に進めました」

(安藤アナ):舞台に立つだけではなく募金活動をされた。どうでしたか。

「通常公演ではロビーでお客様をお見送りすることはありません。だから特別なチャリティー募金活動として立たせていただく以上は、私のファンではない方でも、来てくださったお客様にちゃんとお顔を見せて『ありがとうございます』と気持ちを伝えるのは、組の長として、自分の絶対やるべきこと、当たり前のことだと思っていました」

「全日程は無理じゃないかという声はありましたが『私が立たなかったら意味がない』と思いました。皆さんが涙を流しながら『ありがとうございます』、『福島から来ました』と、いろんな声を直接いただく。私も胸が熱くなって泣いてしまったこともありました。そういう心の通い合いがあって、お客様がどれだけ幸せな気持ちで舞台を見て笑って帰るのかという姿も見たし、そんな時だからこそ一致団結してみんなで宝塚を盛り上げていこう、という想いを感じました。私にとっては人生の財産ですね」

■2つの震災とコロナ禍の現状

(安藤アナ):真飛さんは初舞台が阪神淡路大震災からの復帰公演。2つの大きな天災が在団時にありました。

「音楽学校の本科生の時に寮で寝ていたら地震がきました。まだ劇団生ではなかったんですが、劇団の仕組み(への理解)や責任感はまだまだひよっこ過ぎて(わからなかった)。初舞台となる公演を控えて、『自分たちは舞台に立てるのか、立てないのか』のような本当にまだそんな考えしかなかったと思います」

「ただ、同期の絆は深まりますし、初舞台のラインダンスだけが唯一同期で揃って舞台に立つお披露目の場でもある。最初で最後なので、どうなるかわからない状態の中でも、稽古しながら日々過ごしていたことは、思い出深いですね」

(中島アナ):瀬戸かずやさんも退団の際にコロナで(公演の継続が)難しい中で、『真飛さんだったらどう考えただろう』と思い起こしたと話されていました。東日本大震災時の状況と重なる部分があるこの苦しい現状をどう見ていますか

「今、現役生で頑張っている子たちに連絡をとると『あのとき、ゆうさん(※真飛さん)が言ってくれた言葉が残っているから、私も組子にこう伝えています。だから絶対大丈夫です』『あの時間があったから私大丈夫です』と言われることもあります」

「当時は自分が必死だったし、どうみんなをまとめていくか、それだけを考えていました。時代が変わって全然違う形だけれど、(公演が)止まってしまうような何が起こるかわからない世の中。舞台に立つ者として、自分の言葉をみんなが心の引き出しにちゃんとしまっていてくれて、代々、今現役の子たちにも伝わっていると思うとうれしいです。本当に踏ん張ってほしいし、『味方だよ』という気持ちですね」

 (後編に続く)

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アプレジェンヌ 〜日テレ大劇場へようこそ〜』は日テレNEWS24のシリーズ企画。元タ カラジェンヌをお招きし、日本テレビアナウンサーで熱烈な宝塚ファンである、安藤翔アナ(妻が元タカラジェンヌ)、中島芽生アナ(宝塚音楽学校を4回受験)の2人が、ゲストの宝塚時代・退団後の生き方に迫ります。次回は元雪組スターの彩凪翔さんです。  

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