松山ケンイチ、東京と田舎の二拠点生活で得た学び 「僕たちが生き残るために」
■きっかけは「害獣として捕獲された鹿」
「モミジ」とは鹿の別称。2022年にスタートしたこの活動は、獣皮の利活用などを目的としています。鹿革をメインに獣皮を活用したトートバッグやショルダーバッグ、レザーアウターなど、さまざまなアイテムを展開しています。
――『momiji』は資源のアップサイクルを目的としているかと思いますが、そういったブランドにしたきっかけや経緯を教えてください。
最初は全国で害獣として捕獲された鹿、猪、熊の肉、皮が廃棄されている現実を知り、国内の大切な資源を活用していくことで、そこに関わる人たちを活かすことにもつながるのではないかと始めました。
――小雪さんとはどのような役割分担をされていますか?
小雪は革小物などのデザインに参加しています。僕はたくさんのアーティストから提供されているアートを衣類、スカーフ、傘などに落とし込むデザイン作業と、新たな企画などを考えています。
■東京と田舎の二拠点生活「資源を活用し切れていない現実」
東京と田舎の二拠点生活を送っているという松山さん。身近に感じるようになったのは、人が自然環境へ影響を与え続けている一方で、気候変動などにより増えた野生動物も生態多様性に影響を与えているということ。捕獲された野生動物の一部は、食肉利用されるものの皮は廃棄されている、その現実を目の当たりにし立ち上げたのがmomijiでした。
――アイテムの特徴を教えてください。
山では、なじむ色でコーディネートしてしまうと自然と同化し、それがかえってハンター同士の事故につながってしまいます。ですので、自然になじまない色を着用することで、事故防止にもつながり、自分を守ることにもつながります。それをもとに、自然界になじむ色と、なじまない色を配色しています。
祖父母が農業を営み、子どもの頃は週末に畑仕事を手伝いながら遊んでいたという松山さん。農業を軸としながらいくつも違う仕事をこなし、さまざまな技術を持ち、“生きる能力”にたけた祖父の姿や生き方は憧れだったといいます。今の生活スタイルの核は、祖父の影響を受けてできたそうです。
――二拠点生活のうち、田舎ではどのような暮らし・活動をされているのでしょうか?
momijiは皮のアップサイクルから始まりましたが、まだまだたくさんの資源を活用し切れていない現実があります。僕たちはその資源を活用できるように日々考えています。それは人を活かすことを考えるのと同じことで、まだまだ眠っている資源は人の中にもあり、その活かし方はアートだけではなく、視野を広げて衣食住それぞれの分野で考えていく必要があります。食は一次産業、二次産業の分野で何ができるのか、住は生活空間の中にmomijiはどんな人とどんなモノを作り、お客様の生活の一部になれるのか探っています。
■活動がスタートしてから約2年 反響は?
活動がスタートしてから約2年。momijiはこれまで、東京、京都、福岡など各地でポップアップイベントを開催してきました。今月1日には、新たに東京・銀座のWAKO SITE GINZAでポップストアがオープン(~2月28日)。日本の伝統工芸である南部裂織、加賀蒔絵、金唐革などの職人たちとのコラボレーションによるアイテムもラインアップされています。
――プロジェクトがスタートして約2年ですが、反響はいかがですか?
おかげさまで多くの方に支えられて、ご賛同いただき、販売が全国に広がっていきました。
――今回、日本の伝統工芸にも注目された理由は?
伝統工芸は年々活躍の場が、さまざまな最先端技術によって少なくなりつつあります。失われていくモノは今までもたくさんありましたが、作品として残していくことも重要だと考えています。作品を通して、職人の生き方や学びも残せたらと思い、企画しました。全国各地の伝統的な美術や工芸とコラボレーションしていきたいです。
■「僕たちが生き残るためには…」自然環境に対するアンテナを張り続ける
――この活動を通してどんなことを伝えていきたいですか?
さまざまな特性を持つ人々、そしてさまざまな命がある自然界。目では見えない相互関係があり、データ化、数値化できないモノがたくさんありますが、僕たちが生き残るためには、他人である誰かの力、自然の資源が必要です。僕も意識していますが、自然環境に対するアンテナを張り続けることで、関わるモノ、人を大切にする力が自分自身の人生、感性を豊かにするということを伝えたいです。