吉田鋼太郎が語る俳優人生 蜷川さんに敬意
吉田鋼太郎さんが演出を手掛けたシェイクスピアの舞台『終わりよければすべてよし』。5月29日にさいたま市・彩の国さいたま芸術劇場で千秋楽を迎えました。news every.では、稽古中の吉田さんにインタビューを行いました。放送では入りきらなかったエピソードもお届けします。
舞台『終わりよければすべてよし』は、孤児の侍女ヘレンが養育先の家の伯爵バートラムに恋をする物語。身分の違いを乗り越えて一途な恋を成就させようとする姿が描かれています。吉田さんはフランス王役としても出演。バートラム役は藤原竜也さん、ヘレン役は石原さとみさんです。6月に地方公演も行われる予定です。
■蜷川さんなしでは語れない俳優人生
彩の国シェイクスピア・シリーズを締めくくる今作。このシリーズは、劇作家シェイクスピアが残した全37戯曲の完全上演を目指すプロジェクトです。1998年にスタートし、「世界のニナガワ」と呼ばれた演出家の蜷川幸雄さんが生涯をかけて取り組んできました。
「やっぱり最後まで蜷川さんにいてほしかったなと。蜷川さんが最後まで演出なさって、きっちり見届けてほしかった。もしお体の具合で演出まで手が届かなかったとしても、生きていらっしゃって、最後を見てほしかったなという思いがありますね、とっても」
シリーズのうち12作に出演し、4作で主演に起用された吉田さん。蜷川さんについて「20年くらい前にシリーズに参加させていただいてから、ほとんど僕の人生の一部になっています。それも全部蜷川さんあってのことで、本当に叱咤激励、怒られたり怒鳴られたりしましたけど、俳優として成長させてもらいましたし、いろんなことを学ばせてもらったので、蜷川さんなしでは僕の俳優人生みたいなものは語れないところがあります。だから、ずっと1本歯が抜けたような、何かが自分の中から欠けてしまったような思いを抱いて役者を続けている感じですね」と振り返りました。
2016年に蜷川さんが亡くなった後は吉田さんが演出を受け継ぎ、これまで『アテネのタイモン』、『ヘンリー五世』、『ヘンリー八世』、『ジョン王』(新型コロナウイルス感染拡大の影響により上演中止)を手掛けてきました。今作では、舞台一面に“赤い花”を咲かせました。これは、演出に花を多用した蜷川さんへのオマージュでもあるといいます。
「僕にとってあの花は彼岸花。蜷川さんに対する鎮魂にならないかなと。口幅ったいですけど、そういう演出をちょっとだけでも入れられないかなと思っていました。あれ(彼岸花)が蜷川さんじゃないかなと思っていて、蜷川さんが劇場一面に咲き乱れていて、その上で俺たちを芝居させてくれているイメージ」と、蜷川さんに敬意を表しながらも「(実際に)花を立ててみると、これ全部蜷川さんだとめっちゃ嫌だなと思いました。怖いじゃん、ずっと見られている」と茶目っ気たっぷりに答えました。