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ゲームサイト編集長が語る 2023年ヒット作の共通点とゲーム作りの傾向

2023年12月28日 23:05
ゲームサイト編集長が語る 2023年ヒット作の共通点とゲーム作りの傾向
ゲーム情報サイト編集長が語る、2023年発売作の特徴は

ハリー・ポッターの世界を舞台にした『ホグワーツ・レガシー』やスーパーマリオシリーズの最新作『スーパーマリオブラザーズ ワンダー』など、多くの話題作が発表された2023年。ヒット作に何か共通点などはあるのか、ゲーム情報総合サイト『ファミ通.com』編集長の三代川 正さんに聞きました。

■人気シリーズの続編が多く発表された2023年

『ファイナルファンタジーXVI』や『ストリートファイター6』など、2023年は人気シリーズの最新作が多く発売されました。その理由について三代川さんは、ゲーム機の成熟化がひとつの要因だと話します。

三代川:ゲーム機がNintendo Switchだと(発売から)6年たっているんですけど、PS5で言えば4年目になって、ゲーム機の発売当初って、まだゲームの開発がこなれていなかったり、そこまで普及が広まっていないので、新しいソフトを投入しづらいというビジネス的な側面もあって、ゲーム機の普及台数が増えてから(ソフトを)出したいというメーカーの思惑があるので、そこはやはり収穫期になったというところはあると思います。

あとは、今、ゲーム開発は非常に時間がかかるようになっていて、今までだったら1~2年、もしくは2~3年で1本そのシリーズの新作を出せる状況だったのが、ゲームの仕込みから考えると5~6年で1本という時代になっている。なので、5~6年前から企画を始めたものがやっと今結びついたのが、ちょうどゲーム機の収穫期も含めて、「ここだ」って狙っていた時期が重なったというのがあると思います。

■予想以上の完成度だった『ゼルダの伝説』

そんな中、三代川さんが今年最もヒットした作品だと挙げたのは人気シリーズの最新作『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』です。今年5月に発売された今作は、世界累計販売本数が、発売から3日間で1000万本(うち国内販売本数224万本)を突破し、“最も早く売れた任天堂ゲーム”としてギネス世界記録に認定されるなど話題となりました。

三代川:とにかく物量がすごい。本当に自由。元々、前作である『ブレス オブ ザ ワイルド』も広大な世界で自由にいろんなものができる。で、自分の好きなところに行って、自分の好きな順番でクリアできるというものなんですけれども、それが『ティアーズ オブ ザ キングダム』は今回、空が舞台という触れ込みで発売前は言われていたんですよね。いざ発売してみたら、実は地下がありますと。その地上と空だけじゃなくて、さらに地下もあって、ほぼ3つの世界があるような膨大な世界が冒険できるというふうになっていました。

(前作の)『ブレス オブ ザ ワイルド』があまりにも完成度が高くて、ゲーム・オブ・ザ・イヤーなどいろんなところでアワードを受賞して、すごく評判が高かったんですね。「その続編を作るっていうのはどうなんだ」って、ファンの中ではちょっと心配する声すらあったんですけど、いざ発売されてみたら、「心配してすみませんでした」みたいな。予想以上のものが生まれてきたという、本当にみんなびっくりする完成度だったと思います。

■2年前に発表された『スイカゲーム』がヒットしたワケ

続いて三代川さんが今年ヒットした作品に挙げたのは全世界で累計 約530万ダウンロードを記録している(12月25日時点 開発会社発表)スイカゲームです。ゲームは元々、ゲームメーカーではないAladdin Xが展開する、自宅で使う照明一体型のプロジェクター『popIn Aladdin』に内蔵されていたもので、箱の中で上から落ちてくるフルーツを積んでいくパズルゲームです。2021年12月に配信スタートした作品が今年になって大ヒットしました。

三代川:ヒットのきっかけっていうのは、人気の動画配信者の方が取り上げたところで、「何だこれ面白そうじゃん」というふうに視聴者も増えていきましたし、それを見た別の動画配信者の方が、「今度はじゃあ自分でやってみよう」と、どんどん動画配信者たちが拡散をしていった。(動画を見た人が)「じゃあ自分でもやってみようかな」というときに、価格が200円台でとても安いので、手に取りやすくて買ってしまうっていうのもあると思います。

■共通点は“ユーザー間での広がりが強かったゲーム”

今年ヒットした『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』と『スイカゲーム』の2作品にはある共通点が。

三代川:いわゆるSNSの拡散、動画による拡散、ネットミームだったりとか、そういったものを含めた、ユーザー間での広がりが強かったゲームとしての共通点があったと思います。『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』は、自分で木の板を組み合わせたり、車輪を組み合わせたりして移動手段を作ったり、もしくはそれを使って敵を倒したりできるんですけど、それがSNS上で動画で、「色んなロボットを作ってみました」とか、「謎の建築物を作ってみました」みたいなものでとてもバズる。いわゆるSNSで拡散される状況が生まれていて、その話題性も含めて大ヒットしたなという印象があります。

三代川:『スイカゲーム』は見た目のかわいらしさと取っつきやすさ、「自分でもできるんじゃないか」と思わせる敷居の低さがあると思うんですよね。(人がやっているのを見て)「自分だったらもっと右に置く」とか、「次にもう他の(フルーツ)が見えているんだからもうちょっと待てばいいじゃん」とか言いたくなる。「自分だったらこうするのに」という、やりたくなってしまうモチベーションを生み出しているのではないかなと思います。

三代川:今までは、ゲームの面白さ・深さもありましたけど、今は(ゲームプレーを)見ている人も意識したゲーム作りがすごくされていて、ホラーゲームだったら“何か出てくるよ”っていう前兆が、もうチラって見えていたりする。それって前からありはするんですけど、それをより顕著にしているっていうのは、最近のゲームの話題性としてはあると思うし、『8番出口』はまさにそうですよね。

『8番出口』は2023年11月にリリースされたゲーム。プレーヤーは、無限に続く地下通路の“異変”を見つけだして8番出口を目指します。ゲームがリリースされると、動画配信者たちが実況動画を投稿し始め、SNSやネットを中心に話題になりました。

三代川:僕らがよく知っている地下鉄の通路を歩いている感じなのに、(ゲーム実況の配信を見ていて)「何かおかしいぞこれ」、「戻った方がいいぞ」と話もするけど、でも配信者はそれを気づかないで行っちゃう。その配信者に対して「おーい」って言いたくもなるし、分かった人に対して「ああ良かった。じゃあ次進もう」ってなる。一緒に楽しめるというのがすごくあると思いますね。

話題作があふれようとも、それをプレイする時間がない、余裕がないというのがゲーマーの悩みの種ではないでしょうか。しかし世は冬休み、年末年始休暇の最中。普段より時間が取れる今、プレイするのにオススメの作品として名前を挙げたのが、『桃太郎電鉄ワールド~地球は希望でまわってる!~』です。

ゲームは、2023年で35周年を迎えた『桃太郎電鉄』シリーズの最新作。プレーヤーは会社の社長となり、世界中を巡って物件を買い集め、総資産ナンバーワンを目指します。

三代川:(『桃太郎電鉄』シリーズは)日本を舞台にしていても、「この地方はこういう名産があるんだ」、「ここにはこういう駅があるんだ」という地名を覚えるのにも役立っていたと思うけど、それが今回、全世界が舞台になっていることで、本当に知らない国・地域が出てくると思うんですね。老若男女皆さんで遊んで、「こんなところにこんなのがあるんだ」というのもあるし、一人で遊んでも「この国のここに物件があるってことは、こういう特徴がある都市だったんだ」という、知らないことを知ることができる、すごく楽しいゲームになっています。

さらに三代川さんによると、今作はマップを100年間プレイすると特別なマップが解放されるという要素もあるそうで、「一人で100年をプレイするのもいいですし、みんなで100年プレイするでもいいですし、冬休みとかにまさに最適なゲームではないかと思います」と語りました。