声優・岡咲美保&木村昴 アフレコ現場のこだわり「“うぉー!”ひとつでも音が変わってくる」
原作は、小説やコミックなどのシリーズ累計発行部数が3000万部を超える異世界ファンタジー『転生したらスライムだった件』(通称「転スラ」)です。スライムとして異世界に転生した主人公・リムルと、種族の違う仲間たちの活躍が描かれた物語。2018年10月に始まったテレビアニメは50話以上放送され、続編となる第3期の制作も決定しています。劇場版では、新たな仲間のために陰謀に立ち向かう姿が描かれていて、岡咲さんは主人公・リムルの声を担当。木村さんは劇場版オリジナルキャラクター・ラキュアの声を担当しています。
■シリーズ作品で大切にしていること
――長く続く作品に携わるときに、大切にしていることはありますか?
岡咲:最初の頃は、すごく“こうしなきゃ”“リムルはこうだから”というのを自分で作ってしまっていて。でも、その枠を取っ払ってからはすごく自由になりましたし、私もリムルも「一緒に成長してもいいのかな」というお言葉を先輩方からいただいてから、すごく自由度が増して生き生きしだしたかなって。(だから)あえて“変わらないものを作らない”ことは、いま思うと大切なのかなと思います。
――自分の殻が破れた瞬間は、どんなキッカケがありましたか?
岡咲:(テレビアニメの)1期のときは、まだご時世的にも皆さんでアフレコが一緒にできていて、そのときに先輩方が振ってくださったアドリブに応えられたときは、すごく楽しかったです。あとはきれいなお姉さんに「うひょ~!」ってする演技も、“ここまでやっちゃっていいんだ!”って。結構ギャグシーンも多い作品なので、そういう振り幅を知れたときに“もっともっとできるようになりたいな”と思ったのがキッカケですね。
木村:めちゃめちゃいいこと言いますね。
岡咲:よかった~!
木村:次、聞かれたら俺もそれ答えよ。
――木村さんが長く続く作品で大切にしていることは何ですか?
木村:役と一緒に成長するということもあると思いますし、その中で成長していくと、最初と最近とが結構変わってきたりするんです。だから僕が気をつけているのは、長く続きそうだなというアニメは“最初に変な声にしすぎない”っていう。それをキープするのが大変になってきちゃうから。
――その声がベースになるってことですね?
木村:まぁそうね!……そうでもないかもな。“無理しすぎないこと”ですよね。変わらないこともすごく素晴らしいことだし、キャラクターと一緒に成長していきながらちょっとずつ変化していくことも大事かなと思います。“無理なく続ける”ことが大事だと思うので、やっぱり“最初に変な声にしすぎない”ことですかね!
■木村昴が見せる“プロの技”
インタビューでは木村さんが、“マイク前の立ち方”や“台本の持ち方”など基礎的なことから“プロの技”まで、アフレコ現場での様子を実演してくれました。
木村:重要になってくるのが、マイクと自分の口との距離なんですね。(マイクの)近いところで「うぉー!」ってめっちゃ叫ぶと音が割れちゃったりすることがあるので、叫ぶときはちょっと引くとか、ささやくときはちょっと近づくみたいな。これができるようになったら、「うーわ声優だねぇ!」って言われますよ。(他には)映像を見ながら台本を見るんですが、どっちも同時に見なきゃいけないんですよ。画面と自分の目の間に台本を持ってきて、交互に猛スピードで! こうやって見ながらアフレコをするっていうのが、プロの技なんですよ。
――岡咲さんもそうされているんですか?
岡咲:なんか、そうなりました!
――(セリフに)感情を込めるには、どういうテクニックがありますか?
木村:我流のスタイルで恐縮なんですが、(マイク前で)動いちゃってもいいんじゃないかなって思っているんですよね。上半身だけでも動きを付けると、ちょっと臨場感が増すのかなと思うんですよ。例えば、棒立ちでセリフを言うよりも、(ジェスチャーをしながら)やると感情が乗ったりするんですよね。
■アフレコには「想像力」「楽しむこと」が大切
――アフレコをする上で、お2人が大切にしていることは何ですか?
木村:“キャラクターとひとつになる”というような意識があると、いいのかもしれないですよね。僕が昔、師匠に言われたのが「想像力がとにかくアフレコでは大事」だっていうことだったんですよね。
例えば、キャラクターの変身シーンで「うぉー!」って叫ぶところがあるとするじゃないですか。変身するときに、ただ大きな声で叫べばいいわけじゃなくて「想像力を働かせろ」と。「そのとき、どこに立っているんだ」と。それが原っぱなのか砂利なのかアスファルトなのか、どこなのかという。それで「踏みしめ方が変わる」と。周りに誰がいるのかとか、そういうところまでイメージすると「うぉー!」ひとつでも音が変わってくるんですよ。
岡咲:風が吹いているのかとか、室内だったら吹いていないとか、そういうことに至ると(出す声の)距離感も変わってきますよね。
木村:(キャラクターが見る風景を)“自分の目でもちゃんと見る”という想像力があると、アフレコをしていてもどんどん楽しくなってくるんですよ。
岡咲:私はまだ(声優歴)6年目なので、緊張とかがどうしても入ってくるんですけど、結局は楽しむことが大事。(アフレコ中は)結構いろんなことを同時にやらなければいけないんですが、そこにとらわれずに、とりあえず楽しんでその時間を大切にすると乗り切れますよね。
木村:うん!