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円楽が現代に問う「忘れ物は落語の中に」

2021年8月20日 14:30
円楽が現代に問う「忘れ物は落語の中に」

演芸番組「笑点」にレギュラー出演する落語家・三遊亭円楽さん(71)がトリを務める国立演芸場8月中席が20日、千穐楽を迎えました。「笑点」の永世名誉司会者・桂歌丸さんからトリを引き継いで今年で3年目。2度の大病を乗り越えた今、改めて語られる円楽さんの落語観とは—


■円楽さんが今改めて考える“落語の魅力”

——【1】2度の大病を乗り越えた原動力

年齢的に疲れも出てきて大病を2回(肺がん、脳腫瘍)してるんで、余力を残してるうちに早くこのコロナ禍が終わってね、待ち望んでくださってる人たちに100%のキャパシティーで、楽しい笑い、いい噺をお届けする日が一日でも早く来るようにって、今少し養生しながらね。まだまだ歌丸師匠の年(81歳)まではいかないけども、うちのお師匠さん(五代目三遊亭圓楽さん)の年(76歳)までは最低頑張りたいなと。先代の遺した道を自分が追っていってどこまでできるかな。先代も最後の最後に「おめえも、らしくなったね」って言ってくれた、それが力になってる。

——【2】現代人の忘れ物は「全部落語の中にある」

(落語は)日本人がこさえた最高のエンターテインメントだと私最近思うようになった。たったひとりでまさに今エコの時代に照明も音響も最低限、座布団1枚の上で小っちゃな宇宙が作れるわけですよ。タイムマシンに乗ってってどこへでも行ける。それが落語のすごさね。もっとキザに言えば、いい時代の日本人がいた。そういう時代を忘れてるわけでしょ。日本人の忘れ物がね、やさしさとか人情とか愛だとか友情だとか、それが全部落語の中にあるわけ。だから日本人の忘れ物は落語の中に取りに来ればいい。

——【3】ダメな人間を“排除しない”温かい世界

落語を聞いてほっとして、そういう時代があったな、やさしい人たちが生きてるな。それが本当ね。私だって疲れ果てていろんなことした時に、あぁユートピアは落語の中にあるなと思ったんだもん。今、排除社会でしょ。それこそ足の引っ張り合いと、いじめ合いでしょ。ところが落語の中は「てめえみたいなバカはいないな」って言うようなシーンがよくある。でも、本当にバカってパワハラやってるんじゃないんだから。これはひとつの褒め言葉ですよ。与太郎(間抜けで愚直な登場人物)なんていうのは、すごい天才だと思ってる。


“排除社会”といわれる今だからこそ、円楽さんは落語の中に登場する温かい人間関係に現代を生きるヒントを見出してほしいと願いを込めました。

円楽さんは2007年から東西の協会や派閥の垣根を超えた一大プロジェクト「博多・天神落語まつり」をプロデュース。2010年3月、三遊亭楽太郎改め六代目三遊亭円楽を襲名。2019年からは博多に続き「さっぽろ落語まつり」もプロデュースし、落語界の現役トップランナーのひとりとして、落語界全体を牽引する役割を果たしています。