【特集】あのレトロ自販機が絵本に!タイトルの"ぽんこつ"に込められた思い
すっかり全国でも有名になった、秋田の観光名所のひとつ、秋田市の「道の駅あきた港」に設置されているうどんとそばの自動販売機です。
50年以上稼働していていて、いまでは全国でも数えるほどしかありません。
鰹節ベースで甘みのある出汁のうどんとそばは、地域の人たちに愛され続けてきました。
物珍しさからテレビなどで取り上げられたことで、全国からもこの味を求めに多くの人が訪れるようになりました。
管理しているのは、佐原澄夫さんです。
元々この自動販売機は、佐原さんが経営していた商店に置かれていたものです。
道の駅あきた港からほど近い場所で、約40年、人々のお腹と心を温めていました。
ただ、頻繁に機械が故障してきたため、商店を閉めるのに合わせて、自動販売機の営業も止めようとしていました。
しかし、存続を願う多くの声を受け、2016年、道の駅あきた港に移設。
去年、外側は変わりましたが、中身の機械は昔から同じもの。
時折、不調になりながらも、元気にうどんとそばを提供しています。
そして、このレトロな自動販売機が主人公となった「絵本」が完成し、6日、全国で発売されることになりました。
9月下旬。
自動販売機を管理する佐原さんのもとを、埼玉から訪ねて来た女性がいました。
絵本作家の、由美村嬉々さん。
自動販売機と佐原さんのもとに、2年前から定期的に通っています。
テレビでその存在を知ったという由美村さん。
自動販売機を取り巻く様々な人たちの人間模様に心を動かされ、「絵本」のテーマにしようと思い立ち、1人で秋田にやってきたそうです。
ー正直この自動販売機を生で見た時ってどんな印象でしたかね?
由美村嬉々さん
「もう思ったよりずっとポンコツで、大丈夫なのかなこの子?と思ってもっともっときれいにしなきゃなぁと思いながらですね、大丈夫かな、持つのかなと、まるで母親のような気持ちで、愛おしんでました」
道の駅あきた港の協力も得ながら、ようやく形になった絵本。
この日は、見本刷りが出来たため、出版社の担当とともに、訪れました。
由美村さん
「かわいいのが出来ました」
藤原美沙希 駅長
「表紙がこれになるんですね?」
由美村さん
「表紙がこれなんです。一番やっぱり象徴的なものにして、最後までね。"ポンコツ"にするか違うタイトルにするか悩んだんですけど、一番最初に佐原さんと話している時、このポンコツ自販機だけど"ポンコツ"だけど、みんなに愛される自販機だよねっていう話から始まったので、そのままもう"ポンコツ自販機"になりました」
絵本のタイトルは、「ぼくは ぽんこつ じはんき」。
時々故障するうどんとそばの自動販売機を、散歩中の親子やトラックの運転手、悩みを抱えた社長など、様々な人たちが、食べに訪れ、そして日常に戻っていく。
その様子を、自動販売機からの視点で描きました。
以前、全国紙の新聞記者だった由美村さんは、実際の客や佐原さんを取材して、それをもとに、フィクションとして絵本に盛り込みました。
由美村さん
「いつも佐原さんが中心にいるんですよ。自販機と一体化して。自販機と佐原さんは 、いつもこのブルー着てらっしゃるじゃないですか。佐原さんと言えばブルー」
田村修アナウンサー
「自分がこう絵になってるのは佐原さん何たもんだすかね」
佐原さん
「いやぁちょっとむずむずかゆいっていうか… 恥ずかしいって言うか。こんなにまでしてやってくれるのかなと思って、俺、本当にただの人ですから」
「もう何十年もやってんだけども、俺一人ではここまでまず有名にならなかったんだろうけども、やっぱりいろんな人との出会いがあったからね、ここまでみなさんに注目してもらったんだけども、やっぱり一期一会って言うか出会いって言うのは大事ですよね」」
何度壊れても、修理して、そして、温かいうどんとそばを、50年提供してきた自動販売機。
由美村さんは「ぽんこつ」という言葉に、人間臭さと優しさを込めたと話しています。
由美村さん
「愛を込めてみんなそういうところあるでしょって。出来ないこともあるし、それでもいいんじゃないかって。ちゃんと再生できるし、元気になれるんじゃないかって。それをみんな補い合って人って、絶対1人では生きていけないので、そういう人と人の間にこの子がいて、それが人間、人の間って書いて人間じゃないですか。この子がいてくれて良かったなって私は思うので、みんながそう思ってもらえるようなのを作品を書いたつもりです」
秋田の一部の書店では5日から店頭に並んでいるそうですが、全国では6日一斉に販売開始となります。