×

日本作品のアカデミー賞候補は? 23歳監督の作品に期待 映画評論家が語る2025年注目の映画

2025年1月3日 22:35
日本作品のアカデミー賞候補は? 23歳監督の作品に期待 映画評論家が語る2025年注目の映画
映画評論家がオススメする2025年注目の映画

2025年を迎え、続々と注目の正月映画が公開されている映画界。ゴールデングローブ賞やアカデミー賞など、注目の賞レースの発表を控える中、この冬注目すべき映画は何なのか、そしてアカデミー賞で日本作品の受賞はあるのか、ゴールデングローブ賞の投票権を持つ映画評論家・松崎健夫さんに話を聞きました。

■児童養護施設で暮らす子どもたちをとらえる ドキュメンタリー映画『大きな家』

この正月休みにオススメの映画として松崎さんが最初にあげたのは、児童養護施設を舞台にしたドキュメンタリー映画『大きな家』(公開中)。俳優としても活躍する齊藤工さん(43)がプロデューサーを務めていることでも話題となっています。


「この冬見た中では一番良かった映画だった。都内にある児童養護施設に行ってほぼ1年かけて撮影して、彼らの生活を撮影して我々観客に見せてくれるという作品なんですけど、特に何も起こらないんです。何も起こらないんだけど、やっぱり人生って豊潤でいろんなことがあるなってことをいろいろ考えさせられる映画になっている」

「“どうやってこんな画(え)が撮れるんだろう?”みたいな自然な姿を撮っているんですけれども、取材するスタッフが半年間ずっと通って撮影はしなかったらしいんです。それで(子どもたちが)スタッフに慣れてきたころに初めてカメラを持ち込んで撮影を始めたから、ものすごく自然な姿が撮れている」

「時間をかけて撮ったものっていう結果が作品に表れているなと思うので、そこもちょっと見どころじゃないかな」
2つ目に松崎さんがあげたのは大泉洋さん(51)主演の『室町無頼』(1月17日公開)。飢饉(ききん)や疫病がはびこる室町時代を舞台に、幕府に対して一揆を起こそうとする蓮田兵衛の活躍を描く物語です。


「時代劇といえば、2024年には『侍タイムスリッパー』という自主映画で始まった映画が大ヒットしたり、大作では『十一人の賊軍』があったり、真田広之さんがドラマ『SHOGUN 将軍』を作って、エミー賞で作品賞や主演男優賞をとる快挙があったりと、なんとなく(時代劇への)潮流が生まれつつあるなって感じているんですよ」

「そんな中で、元々時代劇を作っていた東映が大作の映画として作ったのが大泉洋さん主演の『室町無頼』という作品。室町時代の話だけれど現在の社会に通じるような民衆の思いのようなものを描いている作品になっているので、これは映画見ていただくと、社会の中でお上のやることに対して悔しい思いをしているなって思う方こそ“よし、やったれ!”という感じになるような映画で痛快」

「アクションの面でもすごいし、セットや衣装の面でもすごいので、久々に見応えのある時代劇で“年明けから景気いいじゃん!”っていう感じがしています」

■アカデミー賞の期待作 23歳の監督が手がける超絶アニメーション

2024年はアメリカ・アカデミー賞で『ゴジラ-1.0』が視覚効果賞を受賞。さらに『君たちはどう生きるか』が長編アニメ映画賞を受賞するなど、日本の作品が賞レースを大きくにぎわせました。そして、デジタルハリウッド大学卒業生の金森慧さん(23)が、日本の学生として初めて『Origami』という作品で、米国アカデミー賞主催の『学生アカデミー賞』で銀賞を受賞しました。この作品が、2025年のアカデミー賞でも注目だといいます。


「この『学生アカデミー賞』はそこで賞をとるとアカデミー賞の本選の短編部門にノミネートする権利が得られるんです。かつて例えばスパイク・リー監督(『マルコムX』など)や、ロバート・ゼメキス監督(『バック・トゥ・ザ・フューチャー』など)たちは学生アカデミー賞で受賞を経て、いま商業的な監督になっている、大監督を生み出している賞です」

「金森さんはその権利を持っている唯一の日本人監督だということがあって、もしかするとアニメーションの短編部門に入って、受賞するかは分からないけれども、その夢というのは、僕はあるんじゃないかなと思っています」

【松崎健夫さんプロフィル】

映画評論家としてテレビ・ラジオ・雑誌などの様々なメディアで活躍。デジタルハリウッド大学特任准教授、日本映画ペンクラブ会員、国際映画批評家連盟所属、ゴールデングローブ賞の投票権を持つ。

最終更新日:2025年1月3日 22:35