中村隼人 30歳「僕は高校生のころから」 一区切りとなる『浅草歌舞伎』を振り返る
今年で40回目を迎えた『新春浅草歌舞伎』は、1980年に浅草で『初春花形歌舞伎』として、浅草での歌舞伎興行が復活し、2003年に『新春浅草歌舞伎』と名称を変え、若手俳優が大役に挑むことができる“若手歌舞伎俳優の登竜門”として、これまで公演を積み重ねてきました。
出演する尾上松也さん(38)、中村歌昇さん(34)、坂東巳之助さん(34)、坂東新悟さん(33)、中村種之助さん(30)、中村米吉さん(30)、そして中村隼人さんの7人は、今回の出演で一区切りとなります。
――2024年で出演は一区切りとなりますが、どんな思い出がありますか?
僕は高校生のころから、浅草歌舞伎に出させていただいて。学校から早退して劇場に入るという生活をしていたので、やっぱり思い入れは一番ある劇場かもしれないですね。新年に浅草に伺うことがなくなると思うと悲しいですけど。まだ断言されたわけではないし、“卒業公演”とかではないので。まだひそかに(出演を)期待しています。
■『新春浅草歌舞伎』は若手を育ててもらった公演
第1部の『与話情浮名横櫛 源氏店』は、一目ぼれした江戸の若旦那与三郎とお富が、3年後に再会を果たす物語。隼人さんは“切られ与三郎”を勤めるほか、第1部の神楽諷雲井曲毬、そして第2部では魚屋宗五郎に出演します。
――今回出演する演目について教えてください。
僕自身が勤めさせていただく『与話情浮名横櫛(第1部)』の“切られ与三郎”は、非常に名ゼリフ、名調子、昔の方だったら、“お富久しぶりだな”って口ずさんでた時代もあるような名ゼリフを披露させていただく作品なんですけど。僕自身もいつかはやってみたいと思っていたお役なのでこれを新年からさせていただけるのは本当にありがたく思っております。
――浅草の地で舞台に立つことは、他の舞台とは違いますか?
毎年のように、一番お正月を感じられる浅草という土地で若手歌舞伎役者が、けんさんを積んで大役に挑むという場所になっているんですけど。たくさん出させていただいて、どこか今年が最後になるのかなという雰囲気も流れているんですけど、若手を育ててもらった公演ですね。
――浅草の街での楽しみや、好きな食べ物はなんですか?
僕、おそばが好きなので基本的には、雷門を出て左側にまっすぐ行くと『尾張屋』というおそば屋さんがあるんですけど、そこでおそばを食べて。その帰りがけに『紀文堂総本店』という人形焼き屋さんがあるんで人形焼きを買って楽屋でみんなで食べるような僕の中では最近のルーティンになってます。
――2024年に挑戦してみたいことを教えてください。
先々月に30歳になったんですよ。気持ちを新たに、今年30代ということで。歌舞伎というのは伝承芸能であるということで、しっかり先輩たち・先人たちが培った技術を自分で継承していかなくてはいけない。そこをもっと意識してやっていく。
――歌舞伎以外の分野ではいかがですか?
犯人役とかやってみたいですね。結構、歌舞伎だと美化されるんです。悪役でも見得をしたら格好いいという拍手が起こるし、普通のテレビだったり、舞台ではそれがないじゃないですか。そういったダークヒーローじゃないけど、クセのある役みたいなモノに挑戦していきたいなと思います。