ブラザー・コーン68歳 乳がんで闘病「男なのになるんですか?」 【菅谷大介、がんを知る】シリーズ 第3回
■「左乳首の横に…」風呂で感じた違和感
菅谷:自分が乳がんであるって分かったときは?
ブラザー・コーン:最初、背中の脂肪の塊を取りに行って、それがきっかけだったんですけど。それを病理にかけたらなんともなくて。それの2週間後ぐらいに風呂で洗っていたら左乳首の横にゴリっ「あれなんだ?」って思って、うちの主治医に聞いたら「乳首の隣だから乳腺外科にいった方がいいよ」って言われて。
■「乳がんですか!?」って何回も先生に聞いて… 珍しい男性の乳がん
診断されたのは、ステージ2の乳がん。乳がんは一般的に女性に多いとされる疾患で、“男性の乳がん”は乳がん全体の約1%とされています。
ブラザー・コーン:いろんな検査をやった結果が出たら、(医師が)「コーンさん、ステージ2でした」って。「俺、男なのになるんですか?」って、自分がもうびっくりして。
「乳がんですか!?」って何回も先生に聞いて。「いや乳がんです」って。それに乳腺外科って女性ばかりなので、男子で1人ポツンって座っているのもちょっと恥ずかしくて。番号で呼ばれると、女性の中からみんな見ているのに入っていかなきゃ。そこしかないって。先生そこにしかいないんで。それくらい珍しいんですよね。
実は、コーンさんが“がん”と診断されたのは今回で2度目。約17年前、男性のみにある臓器、前立腺のがんにもかかっていました。
菅谷:前立腺がんを言われたときと、乳がんを言われたときで自分の中で心境は違いました?
ブラザー・コーン:違います。乳がんの方がショックでした。前立腺がんの場合は、間寛平さんとかも前立腺がんになって、ずっと世界走ってるときの後に前立腺がんになって、復帰してまた走り出したんですね。乳がんはどうなっちゃうんだろうって。
■「男性がみんな興味持ってくれて」 乳がん経験の反響は
前立腺がんと比べ、症例数の少ない男性の乳がんとの闘病は、暗闇の中を手探りで進んでいるような状態だったといいます。不安の中、抗がん剤での治療を始め、薬による副作用や治療についてSNSで発信していたコーンさん。そんな中、ネットで同じ乳がんにかかった経験を話す男性たちの配信を目にしました。
ブラザー・コーン:ネットで見たんですけど、生配信をやってるのを見たら顔が出てくるじゃないですか、色んな人が皆こうやって(傷痕を)見せたりしているのを見て「本当だ、左胸がなくなってる」って。僕もいま左胸ないですけど。その人たちの会話の中に「そういえばブラザー・コーンさんってなったの? そうだそうだ!」って。「見ました見ました!」って男性がみんなすごく興味持ってくれて。「有名な方がなっちゃうと僕らの“男の乳がん”っていうので知ってもらえるね」って。それなら良かったと思って。
菅谷:僕もテレビに出たり、コーンさんみたいに活躍されている人が、こういう病気にかかることによって、お知らせする、お伝えすることができるっていうのは、意味があったのかなって思うことがあるんですよ。
ブラザー・コーン:僕も思いました。
■闘病支えた孫の存在「その瞬間が至福」
コーンさんは、孫の存在が闘病中の心の支えだと話します。
ブラザー・コーン:孫が癒やしで、僕がじいじって呼ばせないので。“YO-YO”って呼ばせているんですけど「YO-YO」って昔自分がやっていたので、YO-YOって言われるんですよ。YO-YOの所おいでって言ったら、孫が「YO-YO!」って来るんですよ。その瞬間が至福ですよね。
■がんサバイバーが「生きて証明しないと」
2024年1月には、乳房切除術による手術を行い無事に成功。3月には150人が集まった復帰ライブを行い、再びステージに戻ってきました。手術からわずか2か月後に行われたライブでは、ヒット曲『WON'T BE LONG』を含めた、16曲を歌い上げました。8月には「バブルガム・ブラザーズ」結成40周年記念ライブが控えています。
ブラザー・コーン:この前のライブは、普段より声が出て神がかり的になった。自信はなかったんだけどやるだけやってみようと、それで大成功したので。やればなんとかなるときだってあるよってことは、とりあえず伝えられたのかなと思います。
菅谷:バブルガム・ブラザーズの『WON'T BE LONG』ってあるじゃないですか。「もうまもなくさ」っていう、長い方の「LONG」もありますけど『WON'T BE WRONG』、「悪いことも起きないさ」っていう感じもあるのかなと。
ブラザー・コーン:今だったら「W」の付いている『WON'T BE WRONG』方が使えるかも知れないですね。使わせてもらいます。
菅谷:そういうふうに思えるような心境になったというのも、がんを経験したからかなと私は思っています。
ブラザー・コーン:もちろんそうです。
菅谷:今後、がんを経験した人たちがそれを証明していかないとダメですよね。
ブラザー・コーン:生きて証明しないと“生き証明”をしなきゃいけないですね。
■菅谷アナの取材後記 「『WON’T BE LONG』を今、あらためて聞き直すと…」
「これが俺でよかった…」
自身の乳がんよりも、家族を心配する優しさは、
ブラザー・コーンさんの強さの証しだと思いました。
学生時代から聞き、カラオケで盛り上がってきた
名曲「WON’T BE LONG」を今、
あらためて聞き直すと、
楽しい、アップテンポな曲なのに、
どこか儚げで、
どこか切なく、
憂いを帯びながら、力強さを感じる、
不思議な魅力に惹かれます。
聞く人の心を離さない
その歌声は、
優しさという強さを持つ
ブラザー・コーンさんそのものでした。
ブラザー・コーンさんは、乳がんがわかったときに、
こうも語っています。
「これからの人生がますますおもしろくなる前触れ」
その時は、まさに「WON’T BE LONG」
もう、すぐそこに。
私も、ブラザー・コーンさんとともに
これからの人生を楽しみます!