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『笑点』卒業の林家木久扇86歳、波乱万丈の “おもしろ”人生~③息子・木久蔵を有名にする秘策、卒業を決断した理由

2024年3月26日 20:05
『笑点』卒業の林家木久扇86歳、波乱万丈の “おもしろ”人生~③息子・木久蔵を有名にする秘策、卒業を決断した理由
インタビューに応じる林家木久扇さん
落語家の林家木久扇さん(86)が3月末で55年にわたり出演した『笑点』を卒業。笑点史上歴代最年長&最長出演記録を更新し続けてきた木久扇さんに、日テレNEWSがレジェンドたちの体験談から“未来のきっかけ”を考える特別企画でロングインタビュー。

第3弾は、木久扇さんが息子・木久蔵さんを有名にする秘策、落語界史上初の親子ダブル襲名を成し遂げたエピソードや、55年にわたり出演し続けてきた『笑点』卒業のキッカケなどをたっぷりと振り返っていただきました。

■息子・木久蔵を有名にする秘策~親子ダブル襲名

息子の今の木久蔵が真打ちになると決まった時にどうするの?と僕が聞いたら「有名になりたい」って言ったんです。僕は父親ですから、あいつ有名になるって急に売れるにはテレビ露出とかあるんだけど、あいつも急になるわけはないよな、どうしようと思って。有名になりたいって言っているんで、そうだ!僕はもう顔が売れているから、他の名前になっても世間はわかるだろう。こいつは俺の名前かぶせたら有名になれるだろう。木久蔵っていうのはどう?って言ったら「やだよ。お父さんの名前なんか」。でもちょっと考えてみなって。1 週間たったら僕の所へ言いに来たんですよ。「木久蔵にならしてくれ」って。

僕の名前がなくなるわけですよね、木久蔵に譲って。新しい名前をつけるんで、それをネタにして引っ張れないかと笑点で。それをお話ししたら面白がってくださって、名前を募集しようと笑点の中でいろいろ募集したら3万通集まりました。木久蔵さんの次の名前っていうので、ろくなのがなくてね。林家木造二階建てとか、 林家元木久蔵とかね、林家寿限無とかね。

そのなかで木久扇っていうのがありまして、扇という字が入っているし、落語家の名前にはいいなと思って、木久扇にしてもらって、視聴率はずっと引っ張っていったわけなんですね。その勢いで全国ツアーやったんですよ。関西方面だと今の(桂)文枝さん、三枝さんが助演してくれて。それから(笑福亭)鶴瓶さんとかね、(立川)志の輔さんとか。82か所全国まわりました。相当な動員数でね、落語のファンは増えたと思う。成功しましたね。

■息子・木久蔵さんへの思い

せがれ(木久蔵)は古典落語をやっていて、今140ぐらいできる。やれって言ってすぐできるのは10ぐらいで。さらえばできるのが140って言っていましたけどね。僕より勉強家で、それで結構真面目すぎるんですよ。だからって言って与太郎じゃいけないんだけども。真面目な落語家はあんまり面白くならないから、もっと幅をね。例えば僕なんかはラスベガス行ったりハリウッド行ったり、その元のところへ結構行っているんですよ。向こうは、落語はないですよ。ひとりしゃべりはあるんですよ。こういうやり方するんだと思って。人に見せるっていうのは、こういうふうにやるんだなと思って。

僕、出方をね、寄席でエルトン・ジョンを使っているんですけどね。エルトン・ジョンっていう人が出てきます。わーって(観客へ)挨拶しますね。なんか(客席の)上の方までやっているんだけど、見るとね、上は3階はないんですよ。2階までしかないんだけど、こうやっていると大きさが出ますよね。各方面に挨拶してエルトン・ジョンは下がっちゃうんですよ。演奏すると思ったら下がっちゃったと思って。観客が長いこと下がっているからイライラしてくるでしょ。すっと出てくるんですよ。うわーってウケるんですよ。これはいただきだなと思って、寄席でやってみたんですけどね。下がるのと、いつまでも隠れているのが、難しかったですね(笑) やってみて、ウケねえの(笑)

■『笑点』卒業のきっかけ

やっぱり年齢的なことがあって、寿命を考えるようになってね。86(歳)でテレビレギュラー持っている人なんていないんですよね、世界中探してもね。黒柳(徹子)さんはやっていらっしゃるけど、あれは司会で、お笑いでやっている人はいないですね。最初はテレビに映れば有名になれるし収入も増えるし、すげえなと思っていたんですけど、だんだんいつも面白い人と思われる。例えば新幹線のホームで立っています。どこかのおばさんが寄ってきて、「どうも、いつも見ているわよ」。ありがとうございます。「面白いわね」。ありがとうございます。今後ともよろしくお願いします、で終わらないで、おばさんずっと立っている。何か面白いこと言うと思って、誰が外で知らない人に面白いことタダで言いますか?(笑) そういうことがね、すごく重なってね、面白い人って大変なんだと思う(笑)

――55年出演した『笑点』、今の思いは?

僕は、すがすがしく出ていきたいんですよ。というのは今まで見ていると、突然いなくなったり、病気してお別れになったり、いなくなるときの形が、「えっ」というのが多かったんですね。僕はまだ元気で、まだできるじゃないのなんて言われているうちに下がっちゃおう。うちのおかみさんが言ったんですよ。「もういいんじゃないの」って。きっと飽きちゃったんですね(笑)

【林家木久扇さんProfile】
1937年(昭和12)10月19日生まれ
1960年(昭和35)8月、三代目 桂三木助に入門。桂木久男を名乗る
1961年(昭和36)八代目 林家正蔵 門下に移り、林家木久蔵となる
1965年(昭和40)二ツ目昇進
1973年(昭和48)真打ち昇進
2007年(平成19)林家木久扇襲名
2024年(令和6) 3月31日をもって55年出演した笑点を卒業

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