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『スーホの白い馬』『くじらぐも』 国語の教科書検索サービスに懐かしむ声 出版社に聞いた教科書の歴史

2023年7月12日 6:20
『スーホの白い馬』『くじらぐも』 国語の教科書検索サービスに懐かしむ声 出版社に聞いた教科書の歴史
光村図書の教科書
教科書などの出版物を扱う光村図書が、ホームページ内に『教科書クロニクル』というサイトを新たに公開。これに対し、SNSでは「懐かしい」「エモい!」といった声や、表紙やタイトルを見て「うるうるしちゃう」「案外覚えてる!」など、世代をこえて話題となっています。なぜ、このようなサイトを公開したのか? 光村図書の広報担当に聞きました。

『教科書クロニクル』は、生年月日を入力すると、小学生・中学生の頃に使っていた国語の教科書が検索できるシステムです。自分だけでなく、親世代がどんな教科書を使っていたのか、どんな作品が載っていたのか、様々な年代の教科書を振り返ることができます。

■保護者も教科書に興味を

1949年(昭和24年)に創立し、1950年から教科書を出版しているという光村図書。広報の木塚さんによると、同社の国語の教科書は戦後から数えて日本人の約2人に1人が教材として読んでいるそうで、小学校・中学校の国語の教科書では、国内シェア約60%になるといいます。

そのため、保護者などから“昔の教材をもう一回読んでみたい”、“どうしても作品が思い出せない”という問い合わせが頻繁にあったそうで、約20年前から教科書の表紙だけを一覧にして、ホームページに公開していました。

今回、検索できるシステムが追加された理由について、木塚さんは「サイトのリニューアルに合わせて、広報部の中から“せっかくなら楽しんでもらえるようにしたい”という話が出たことがきっかけです」と明かしました。

■『くじらぐも』や『スーホの白い馬』、『ごんぎつね』 50年以上教材として扱われる作品も

光村図書から出版される小学校の教科書では、『くじらぐも』や『スーホの白い馬』、『ごんぎつね』、『白いぼうし』、『やまなし』などが、50年以上前から今も教材として扱われています。また、中学校の教科書では1955年(昭和30年)から『少年の日の思い出』が、1962年(昭和37年)からは『走れメロス』が掲載され続けています。

使用する教材は地域によって違いがありますが、木塚さんは「保護者の世代が教わった作品が、今の教科書にも載っていることになるので、子どもや孫がどんな勉強しているのか興味を持ってもらえれば」と、サイトを公開した狙いについても明かしました。

■時代ごとに世情が反映されてきた教科書

『教科書クロニクル』で公開されている中で、一番古い教科書は1955年(昭和30年)度の『中等新国語 文学編』。主な収録教材として、正岡子規や国木田独歩の作品が掲載されています。木塚さんによると、この頃の教科書は物語よりも作文の書き方や話し合いの仕方など、テキストブックのような内容が多かったということです。その後、学習指導要領が改訂され、物語作品が多く載るようになったため、一般的に覚えられているのは1971年(昭和46年)以降の教科書ではないかといいます。

また、これまで教科書に掲載される作品には時代背景が反映されてきたといい、例えば高度経済成長期には、高速道路が全国に伸びたことを受けて『高速道路』という作品が収録されました。他にも、1970~80年代にはグローバル化の兆しからか、『スイミー』や『ずうっと、ずっと、大好きだよ』など外国の物語が積極的に取り入れられたそうです。

そして、2011年(平成23年)度版あたりからは、現代社会の課題を考えるテーマも。文章を書くための教材として、国語の教科書に収録された作文分野の題材に、“バリアフリー”や“環境保全”などが取り上げられているということです。