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元宝塚・美弥るりか「心が震え過ぎちゃって」憧れの涼風真世の言葉に感涙……印象深い作品でのエピソードを振り返る

2023年2月24日 20:10
元宝塚・美弥るりか「心が震え過ぎちゃって」憧れの涼風真世の言葉に感涙……印象深い作品でのエピソードを振り返る
元宝塚歌劇団・月組男役スターの美弥るりかさん。宝塚時代、憧れだった涼風真世さんが演じた役を自身が演じることになり、「奇跡を感じた」という。終演後に涼風さんからかけられた言葉に号泣したという美弥さんに、熱烈な宝塚ファンである日本テレビアナウンサーの安藤翔アナ(妻が元タカラジェンヌ)、中島芽生アナ(宝塚音楽学校を4回受験)の2人が迫った。

■『グランドホテル』と涼風真世さん

<美弥るりかさんプロフィール>
茨城県出身。9月12日生まれ、2003年に89期生として入団。男役スターとして幅広い役柄を演じた実力派。セクシーかつミステリアスな男役像でファンの心をわしづかみに。現在は舞台を中心にジェンダーフリーなアーティストとして活躍中。

(安藤アナ):(宝塚在団は)17年間。最初は星組、そして2012年から月組。印象深い作品はありますか。

(美弥さん):今まで頑張って良かったなと一番強く思ったのは、『グランドホテル』という作品です。私にとって一番、役者としての意識を変えてくれた作品だと思います。小学生の時に涼風真世さんをテレビで見て憧れてファンになって、そこで宝塚を志した。好きになった時には涼風さんがもう退団公演で、『グランドホテル』だったんです。

私は(当時)劇場で観ることができたのですが、小学生の私からすると、全てを理解できていなかったなと大人になってから思いました。そして、いざ演じるとなった時に涼風さんと同じお役ということにも奇跡を感じました。

さらには月組で新しく珠城りょうちゃんがトップになって、私が2番手としていさせていただく時。そこで、余命を宣告された男性を演じるのは、自分の中でとてもチャレンジだったんです。今まで男役ということで肩に力が入っていた。「男役だから」と頭でっかちになっていたんだなと。

今までの男役として培ってきたものが役に立たないような役。格好よさとか一切入らない。
本当に心だけで全てを表現しなくちゃいけない。「演じる」ということを、本当に基礎から味わい勉強させていただいた役でした。

(中島アナ):涼風さんも見てくださったんですよね。

(美弥さん):そうなんです。(初演)当時、自分が客席から見ていて、それを今度は逆で自分がその役。初日が1月1日だったんですが、宝塚大劇場で涼風さんが私を視界に入れてくださっているという奇跡にも、心が震え過ぎちゃって。後にも先にもあの時の感動は味わったことがないぐらい。奇跡と感謝と思いがあふれた1月1日だったと思います。

終演後ちょっとしたパーティーがあって、そこで涼風さんとお話しすることができました。私はダメ出しをいただこうと。厳しいお言葉でも何でもいただけたらうれしいと思ったんです。そうしたら「オットー・クリンゲラインはもう美弥ちゃんのものだから、あなたが心のまま演じたらいいんだよ」と言っていただいて、そこでまた号泣して。本当に大好きな方だったので、どんな言葉もうれしくて。私にとっては全身全霊をかけて演じた役だったと思います。

■殻を破った『オーシャンズ11』

(安藤アナ):美弥さんを良く知る元星組トップ娘役の夢咲ねねさんからメッセージをいただきました。

<夢咲ねねさん>
美弥るりかというブランド力。自分を確立していて、私は同期として、すごく格好いい存在だなと思っています。『オーシャンズ11』という作品。壁を崩したんじゃないかと、私の中では感じていて。彼女がリビングストンという役でファッションだったり、ラップ調の歌だったり。美弥ちゃんでしかできない色に染め上げていった姿、個性がすごく光っていて、しかもすごく楽しそうに演じていた。楽しんで演じるって素敵だなと美弥ちゃんの姿を見ながら思っていますし、刺激をくれる存在です。

(安藤アナ):『オーシャンズ11』で変わったのではないかという同期からのメッセージです。どうですか。

(美弥さん):確かに変われない、伸び悩んでいた時期だったんです。当時、星組で柚希礼音さんとねねちゃんがトップコンビ。スターさんがたくさんいてすごく豪華だった。刺激があってとても勉強になったのですが、結構悩んでいたんです。私は男役としては小柄な方でしたし、体育会系の星組の中で、体育会系ではない私がどうやったら個性を出して生き残っていけるか、と。

だから格好いい役よりも、もっと自分しか出せないジャンルの役が来ないかなと思っていた時期だった。このハッカーという役(リビングストン)が来た時に『よし!』と思いましたね。変に演じていいんだ、自分の何かを打ち破れるんじゃないかと。ねねちゃんの言う通り、殻を破った感じではありますね。

10年ぐらい星組にいた時期で、格好悪いところは見せたくない意地みたいなものがあったと思うんです。当時、曲も何もできていない状態で、台本にラップの歌詞だけ書いてあったんです。ほかの場面は音楽があるのにそこはまだできていなくて、(演出家の)小池(修一郎)先生が『ここ、ラップで読みなさい』と言われたんです。

「いや待って」と。私、人生でラップなんてしたことがないし、ラップするということも当日に知った状態で「ラップ!?」と思って…。そうしたら組子のみんなが、盛り上げるために手拍子してリズムを出してくれたんです。私ももうやるしかないと思って、下手くそだったけど、歌詞を全部最後まで大声で、ラップで読みきったんです。

そうしたらみんなが「ワッ」と沸いて、小池先生からも「いや、あなた意外とやるんですね」と言葉をいただいた。その時から、恥ずかしさを今まで持っていた自分が逆に恥ずかしくなって。そこから役の髪型だったり、衣装も自分の私服をどんどん入れたり。どれだけ個性を出すか、ということにシフトチェンジしていきました。個性的な役をそこからもたくさんいただいたんですが、この役はその第一歩ですね。

■宝塚で身に付けた「トーク力」

(安藤アナ):宝塚で学んだことで、今一番生きていることは何でしょうか。

(美弥るりか):「トーク力」です。宝塚だと下級生時代から上級生と一緒に番組に出ることが多く、いつの間にか自分が(トークを)回している立場になるんですよね。上級生がいかに楽しく(話せるか)。さきほどの言葉の中から拾って、次にそれを質問したらもっと話が広がるかな、とか。無意識に考えるようになっていきました。おしゃべりなタイプではなかったのですが、いつの間にか司会者的なスイッチが入っちゃうようになってしまった。

例えばファンの方と配信などでお話しする時、皆様のお顔が見えない中で自分が画面越しに2時間ぐらいお話しする。そういう時も、当時の感覚がよみがえると言いますか。次こういう話をして、これぐらいの時間で話したら、皆様の気持ちが「楽しかった」と終わっていただける時間になるかな、とか。それは宝塚時代の下級生の頃に学んだことかなと思います。

(安藤アナ):トーク力を存分に発揮していただいた時間になりました。

(美弥さん):皆様が出演されているのを拝見していたので、以前から出たいなと思っていまして、今回、そしてリニューアルされた第1回目に選んでいただけたということで、大変光栄に思っています。素敵な時間を過ごすことができました。ありがとうございます。

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アプレジェンヌ 〜日テレ大劇場へようこそ〜』は日テレNEWS24制作のシリーズ企画。元タカラジェンヌをお招きし、日本テレビアナウンサーで熱烈な宝塚ファンである、安藤翔アナ(妻が元タカラジェンヌ)、中島芽生アナ(宝塚音楽学校を4回受験)の2人が、ゲストの宝塚時代・退団後の生き方に迫ります。

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