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珠城りょう、若くして宝塚トップ就任に「怖かった」――「誰も喜んでくれないんじゃ」重圧と不安乗り越え“みんなと並んで走る”リーダーに

2022年8月18日 20:10
珠城りょう、若くして宝塚トップ就任に「怖かった」――「誰も喜んでくれないんじゃ」重圧と不安乗り越え“みんなと並んで走る”リーダーに

宝塚歌劇団・月組トップスターの珠城りょうさん。入団9年目、若くしてトップなった珠城さんは、就任当初「誰も喜んでくれないんじゃないか」と怖かったという。先頭を走るのではなく、並んで走る――。重圧を乗り越え、そんなトップ像を作り上げた珠城さんに、熱烈な宝塚ファンである日本テレビアナウンサーの安藤翔アナ(妻が元タカラジェンヌ)、中島芽生アナ(宝塚音楽学校を4回受験)の2人が迫った。(・中・編の中編)  

(中島アナ):珠城さんが月組に在籍時の元組長・越乃リュウさんにお話を聞きました。

リュウさん!いやあ、どうしよう。うれしい。

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(元月組組長・越乃リュウさん)
とても落ち着いたカラーを持っている人で、私はすごく好きだったんです。若いけれども貫禄を持った子で、私はとても好きで頑張ってほしいなと密かに思っている子だったんです。

持って生まれた体のバランス、動ける身体能力というすごい武器を持っている子だなという風に見ていまして、下級生なのに大きいお役をいただくというのは、それだけでプレッシャーじゃないですか。そこに全力で向かっていく子というイメージがありました。

――特にどのあたりに男役としての素質を?

私、彼女の走り方がとても好きだったんです。(舞台の)袖の中にぶわっと全力で走っていくちょっと前傾の、力の入った足の感覚みたいなものが好きだった。歩幅が大きくて、そこにすごいエネルギーを感じて。マニアックな見方なんでしょうけれど、私は珠城の走り方がとても好きでした。

下級生の頃のほうがいい意味で色気がある人だなと思っていたんです。退団公演は本当にかっこいいなと思いましたし、珠城らしい作品だなとすごく思いました。彼女の色気、色というものが出ていて、こういう変化があるんだと拍手喝采でした。
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(安藤アナ):いかがですか。

泣きそうになっちゃいました。リュウさんは、本当に下級生の頃からずっと見てくださっていて、愛のある厳しいお言葉をたくさん投げかけてくださっていた方。「あなたもっとできるでしょ」「もっとチャレンジできる」と常に言い続けてくださっていた方です。リュウさんが退団されてからもずっと見守ってくださり、私がトップに就任してからも何度も劇場に足を運んでくださった。いつも温かい言葉をかけていただいていたので、動いているリュウさんを見られただけでうれしい。本当に幸せです。

(安藤アナ):越乃さん、走り方が好きだと。

私がトップになってからの公演で、そういうご連絡をいただいたような気もしました。そんな記憶が今蘇ってきたんですけど、でもそんなに前からそう思ってくださっていたとは思わなかったです。確かにスポーツをやっていたので走り方は意識していました。はける時、移動する時の走り方を格好よくというのは意識して。

(中島アナ):(はける時に)暗くなっても見えますからね、シルエット。

はけ際も銀橋に走って出てくる時も、それすら「ああ!かっこいい!」と思っていただけたらいいなと思って意識していました。

(安藤アナ):男役さんは、走り方の自主稽古もされると聞ききます。

そうですね。やはり女性が男性を演じているので、どうしても女の子っぽい走り方になってしまう子とか、脇があいてしまうと、それだけで女の子っぽくなってしまう。脇を締めて縦に振るだけで、かっこよくスマートに見えます。そうしたところを苦手な子にはレクチャーしていました。

(安藤アナ):「身内からもかっこいいと思われる男役でいたかった」。そんな話を退団後にされています。珠城さんの男役像はどんなものがあったんですか。

同じ組の下級生は「トップさん、珠城さん素敵」と思っていつも見てくれているので、普段お稽古場にいる時や休憩中などの何気ない時でも幻滅させたくないなと。常にどんな時でもキュンとするような。下級生が「珠城さんに言葉をかけてもらった」「珠城さんがこうしてくれた」ということでも、ときめいてもらえたらいいなとは思っていました。お稽古場にいる時も、自分自身は自然体ではあるんですが、男役というベースは常に意識して生活していたと思います。

(安藤アナ):91期の貴千碧さんに聞きました。「もともとの性格が大型犬みたい、ナチュラルな男役さんかなと思う」と。男役を頑張って作っていくタイプの人もいるのだけれど、珠城さんは「もともとの気質に男役を乗せている」ような感じ。自然で大きい、おおらかだという印象とのことです。どうですか。

そうですね。確かによく「包容力がある」と言っていただくんですが、包容力を出そうと思って出しているわけではないです。もともとの性格がどちらかというと、のんびりしていて、あまりちゃきちゃきしている方ではない。サバサバはしているんですけど、体育会系。でもどちらかというとドンとしているので、それがいい意味で男役の包容力だとか、ドシっと地に足が着いているということに、うまく繋がっていったのかなとは思いますね。

■若くしてトップスターに。就任時の思い

(中島アナ)早くから抜擢されて、9年目でトップスターに就任されました。その時、どのような思いでしたか。

9年目ということで、舞台人としても男役としても全然出来上がってない。私が一番よく、自分自身の実力をわかっていたので、果たしてトップが務まるのかどうかということ。また、上級生もたくさんいらっしゃいましたし、その方々のファンもたくさんいるわけで、きっと受け入れていただくのにとても時間がかかるんじゃないかなと。本当にプレッシャーや不安の方が大きかったというのが正直な印象ですね。

(中島アナ):喜びというよりも重圧。

もう怖かったです、とにかく。「周りからなんて言われるんだろう」「誰も喜んでくれないんじゃないかな」ととても怖くて。ただ、自分を応援してくれているファンの方、そしてそばで支えてくださっている方々や、あと月組のみんながとても喜んでくれました。あと、月組の上級生の方々も「支えよう」と思ってくださったということが、一番大きかったと思います。それがなかったら多分、頑張れなかったと思うので。

(中島アナ):そのプレッシャーが、喜びややりがいに変わっていった瞬間はありましたか。

自分がトップとして体現していたり、みんなに何かを投げかけたりする時、自分がやった分だけみんながそれをちゃんと受け取って返してくれる。その時に、自分は今までトップになる前はトップさんから影響を受ける側だったけれども、今度は自分が影響を与える側になった。そういう立場に自分がなったんだなと感じまして。

自分と一緒にお芝居を密にするような子たちじゃなくても、下級生とコミュニケーションをとったり、時間を共有したりすることによって、みんながどんどん活き活きとして月組の一員としてパフォーマンスをすることを幸せそうにしてくれているのを感じました。

「自分がトップでいることに意味があるんだ」「自分がこうしたら、みんなももっと輝いていくんだな」と感じることがいっぱいあった。じゃあ自分なりのトップ像を突き詰めて、みんなと一緒に頑張っていこう。自分もこれだったら頑張っていけるかも、ととても感じるようになりました。

(安藤アナ):トップ像に関して、同じく貴千碧さんが、下級生でトップというポジションになったから、下級生のポジションにちゃんと下がって見ることができ、みんなを連れて引っ張っていく。そんなトップの印象があったと話されていました。珠城さんの「トップ像・リーダー像」はどういうものですか。

貴千先輩から、私が思い描いていた理想を言っていただいたので、とても今感動しました。自分が下級生の時は、トップさんは本当に雲の上の存在。もちろん学年も離れているので、手の届かない存在だったのですが、私が入団9年目というちょうど、上級生はまだ半分ぐらいいらして下級生もいる。ちょうど間の学年でトップに就任しました。

今の私の立場だったら、きっといい意味で下級生も上級生も良い形で繋がって一つのカンパニーを作っていけるんじゃないかと考えて、自分なりの居方というか、トップとしての存在のし方を作っていこうと思いました。みんなの先頭を走っていくというよりは、みんなと並んで手をつないで一緒に走っていく。そうやれたらいいなと思っていたので、いま貴千先輩がそう言ってくださって本当にうれしいです。

(中島アナ):そうやってみなさんで一緒になっているというのは、客席でも本当に感じられました。

本当ですか。うれしいです。それを客席で感じていただけているとは、それが何よりうれしいです。

後編へ続 く)

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アプレジェンヌ〜日テレ大劇場へようこそ〜』は日テレNEWS24のシリーズ企画。元タ カラジェンヌをお招きし、日本テレビアナウンサーで熱烈な宝塚ファンである、安藤翔アナ(妻が元タカラジェンヌ)、中島芽生アナ(宝塚音楽学校を4回受験)の2人が、ゲストの宝塚時代・退団後の生き方に迫ります。次回は元星組トップスターの紅ゆずるさんです。