元宝塚トップ・紅ゆずる「彼女じゃなかったらダメだった」……綺咲愛里との“トップコンビ”を語る
■相手役・綺咲愛里さんからのメッセージ
(中島アナ):ある方からメッセージをいただいています。こちらをご覧ください。
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【元星組トップ娘役・綺咲愛里さん(紅ゆずるさんの相手役)】
――自分しか知らない紅さんの素敵なところは
すごいスタイリッシュでとても端正なイメージがあると思うんですけど、すごい癒しなものだったり、すごいパステルカラーのかわいい小物だったりというのを私よりもいっぱい知っているような気がして。もちろん見た目もすごく男らしく格好よくされているなかで、カバンから出てくるちょっとかわいいものがちょっとしたギャップだなと。
――紅さんはどういうタイプのリーダー像
とにかくみんなで一緒に頑張ろうっていうのをすごくいつもおっしゃってくださっていて、ご自分のされることも一番多くて大変なはずなのに、どんな下級生1人も見捨てずちゃんと同じ目線に立って一緒に手を取り合っていくようなトップさんだったなと思います。ついていくプラス一緒に盛り上げようみたいな、そういうのが当時星組の雰囲気としてはあったかなと思いますね。
行き詰っている時には絶対に手を差し伸べてくださるし、立ち止まったら一緒に立ち止まってくださるし、人の何倍も色んなところに目を配ってらっしゃっていて、本当に偉大な方だなと。当時、その手をとりながら必死についていっていたかなと思い出しますね。
本当に温かくて大きな心で何があっても受け止めてくださる方だなと思います。
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ありがとうございます。逆を返せば私の方がみんなに手を差し伸べてもらっていたなと思います。「こっちだよ、がんばれさゆみさん!」みたいな感じです。
トップスターだからこうしなきゃいけないとかは思わなかったかな。トップになる前に主演作品をさせていただく機会があったので、その時に「私がやらなきゃいけない」って思ったんですよ。(初主演作の)『メイちゃんの執事』ぐらいです。
もちろんトップスターは責任も重い。だけど自分一人で頑張るのはたかが知れていて。この人数をみんなで頑張ろうとした時「我々に勝てるものは何もない」のような絆があったんですね。
あーちゃん(綺咲愛里さん)、最初は内向的だったんですよ。やっぱり学年差もありますし。「ガラガラガラ」と閉じているところに「お~いコンコンコン!」という(ノックするような)感じです。でもそれで彼女がちゃんと応えてくれて、徐々に開けて最後はもう「バーン!」と。聞いてもないこといっぱい喋ってくれる(ようになった)。彼女にも私は手を差し伸べてもらったなと思っています。
(中島アナ):リーダー像としては、みんなを引っ張っていくというよりも一緒になって。
そうですね。トップスターはやることも多いです。ただ、一人一人みんなちゃんと考えられる賢い頭を持っている子たちが集まっている。私が頑張っている姿を見て、みんなが感じ取って動いていってくれるのが大きかったですし、それだけじゃ伝わらないところではみんなを集めて「私は今こう思っているよ」という話もよくしました。
あとはみんなが「元気かな。どうかな」と気にしていつも見るようにしていました。香盤もチェックして。みんなそれ(香盤)で左右される。私もそうだったので、みんなのそういう思いを全部わかってあげられないとしても、私にできることは何かないかなと思って目を配るようにしていました。
■紅ゆずるが語る「トップコンビ」
宝塚をキーワードで紐解くアプレジェンヌ辞典。本日のキーワードは「トップコンビ」。その組の顔となるトップスターとトップ娘役のコンビ。5つの組にトップスターとトップ娘役が1人ずついて主演を務め、それぞれに組のカラーを作っている。
公演の最後に大きな羽根を背負い、階段を降りてくる姿は宝塚歌劇そのもの。互いを相手役として寄り添い、切磋琢磨しながら芸を磨く関係性に多くのファンが惹きつけられる。
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(安藤アナ):紅さんが目指されたトップコンビの関係性はどんなものがありますか。
関係性としては、一番信頼できて、お互いいるからこそ輝けるっていう存在でいたいと思いました。例えば、大地真央さんと黒木瞳さんのようなトップコンビになりたいと思って、スタートしましたね。
お互いを思いやる感情、お気持ちを直接お聞きしていたのは黒木瞳さんです。素晴らしい関係性だと思いまして、男役・娘役ということももちろんありますけれども、1人の人間同士として、ここまで思いやることができたらなと。
(中島アナ):相手役の綺咲愛里さんにインタビューさせていただいたんですが、このようにお話をされていました。
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常日頃から思ったことを口に出して言い合おうってすごくおっしゃってくださって、当時、学年差がすごく離れていたのもあって、本当に壁を壊して「オープン・ザ・ハートね」っていつもおっしゃっていたんですね。
私もさゆみさん(紅さん)に扉を叩いていただいて自分の気持ちが皆さんに言えるようになったりとかだんだんしていって、さゆみさんの思い描くトップコンビ像になっていきたいなと思いながらやっていたんですけど、最後の日にデュエットダンスで紅さんが「ありがとう」っておっしゃってくださったんです。
あとで聞いた話によると別に言うつもりはなくて、その時に突然言いたくなったから言ったみたいな感じでおっしゃっていて、でもその時に思ったからすぐ口に出して言えるっていう紅さんのまっすぐさというか素直なお心というのがダイレクトに胸に響きましたし、最後の「ありがとう」というのは泣き崩れてしまってはいたんですけれども、本当に心からうれしかったなと思います。
いつも幸せでしたね。やっぱり隣にいるとさゆみさんからも幸せオーラが溢れていてそれをまた受けて私も幸せで、そして“幸せ幸せ”なのをお客様に見ていただいてお客さまも幸せになって、本当にそうなったらいいなって思っていましたし。唯一無二であり「永遠の相手役さん」と呼ばせていただけたらうれしいです。
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ありがとうございます。「オープン・ザ・ハート」というワードをどれだけ言ったか。「今ちょっと開いたからな」とか言って、人の心の扉を勝手に測る。「開いたからなって。開いた、成長や」と。「そのままにしといてくれよ」とあーちゃんに言って。「このままやで」という感じでお疲れ様でした、バイバイと言って帰りましたね。
(中島アナ):それを積み重ねて、最後の「ありがとう」になるわけですね。
いやもう、あのときどうしてもこの気持ちを伝えたかったんですよ。ただ言った後、彼女が、がっと完全に崩れちゃったんです。「しまった!」と思って。もう最後の大楽だったので、もしこれで彼女がパレードで歌えなかったら、と。それほど号泣してはけていったのもわかる。私は気持ちを伝えたかったけれど、彼女がそうなるところまで考えていなかった。
もしパレードで歌えずに(大階段を)降りてきたら、一生悔いが残るやろなと思って。「どうしよう」と大羽根背負いながら着替え中には「あーちゃん大丈夫?」と言っていました。
「見てきます!大丈夫そうです!」という人もいて「ほんま!」みたいな。「やっぱりダメです!」「本当?ダメとか言うなよお」とそんな感じで。もう(綺咲さんが)歌う瞬間に(舞台裏で)止まって。「歌った!よし!」と確認してダダっと駆け上がっていくという感じでしょうか。
(中島アナ):本当に唯一無二の関係性ですね。
いやあ、もうほんとに。でもこれはね、本当、彼女じゃなかったらダメだっただろうなと思います。
(安藤アナ):永遠の相手役さんという言葉もありました。
私もそう思っています。もう本当に。お披露目公演の時の囲み取材で言わせていただいているんですけれど、宝塚では彼女と結婚したと。私そこで誓ったというか「絶対守る」と。綺咲愛里という娘役さんを守る、大切にする。自分ももちろん大切にしなきゃいけないですけど、絶対に守るという感覚でいたいなと思ってやっていましたね。
(中島アナ):本当にでも綺咲さんはそういう紅さんに守ってもらって幸せでしたでしょうね。
いや、私の方が本当にお世話になりましたから。私がやりましたというのでもないですし、私がやったことに、また彼女が返してくれた。ギブアンドテイクがうまくできていたし、あちらがギブの時もあるし、こっちがギブの時もある。それはやはり信頼関係が築けたのかなとうれしく思いますね。
■「人間万事塞翁が馬」
(安藤アナ):最後にこちらの質問にお答えいただきたいと思います。宝塚で学んだことで一番生きていることは何ですか。
はい。「人間万事塞翁が馬」です。宝塚に入るだけでも難しい。けれども入ったら入ったで役がつかないとか場面に出られないとか、いっぱいあるんですよね。下級生の時は「またダメだったな」と沈んじゃったりしていたんです。
配役が良くなくて、落ち込んでしまったということもありました。そして、役がつくっていう苦しみ、責任もあるんです。ありがたい苦しみなんですけどね。その時々によって全然違うんですけど、例えば、役が付かなかった時の経験が今とても生きているんです。
実際良くないと思っていることでも必要かもしれない。人間万事塞翁が馬。この言葉は、私が宝塚に入ってとても身に染みた。これは祖父がよく言っていた言葉なんです。それを宝塚で身に染みて感じることができた。感謝の気持ちでいっぱいです。
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『アプレジェンヌ 〜日テレ大劇場へようこそ〜』は日テレNEWS24のシリーズ企画。元タ カラジェンヌをお招きし、日本テレビアナウンサーで熱烈な宝塚ファンである、安藤翔アナ(妻が元タカラジェンヌ)、中島芽生アナ(宝塚音楽学校を4回受験)の2人が、ゲストの宝塚時代・退団後の生き方に迫ります。次回ゲストは「花組のアニキ」と慕われた瀬戸かずやさんと9月に退団したばかりの飛龍つかささんです。