日銀・黒田総裁「家計の物価許容度」発言から初会見(5)
日銀の黒田総裁は17日午後3時半からの会見で、賃金の上昇や物価の安定などについて問われ、次のように述べました。
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――値上げ許容発言について消費者からの反発の声が多くあったが、こういった消費者の置かれている状況が苦しいとの声が想定より多かったか? 賃金上昇が重要という文脈の中での発言だが、来年度以降のベースアップを含めた賃金上昇となると生活者からすると相当時間がある。国民経済の健全な発展に資するための物価安定は体現できている?
確かに現在の物価上昇は、基本的には国際的な資源価格の上昇によるものですから、一種のコストプッシュ型のインフレでですね、日本の交易条件が悪化して、所得が海外に流出するという形で起こっておりますので、我々が目指している物価上昇とは異なっているということは間違いありません。
我々が目指しているのは先ほどより申し上げているとおり、経済が持続的に成長し、その下で労働市場が十分タイトになり、賃金の上昇とともに物価も上昇していくという形を目指して金融政策を運営しなくてはいけないと思っております。
そういった意味で、その方向で、コロナ禍からの回復過程で、まだコロナ前のGDPの水準よりちょっと低いところですので、GDPギャップもまだ残っているということですので、ここはしっかりと、経済の回復を支えてですね、GDPギャップが解消し、労働需給がタイトになり賃金もさらに上がっていくという形で、2%の物価安定目標を実現しなければいけないというふうに思っています。
もちろん今年の春闘での賃上げは、数年ぶりというか、かなり数年ぶりの高さだというのは事実だと思いますけども、それから夏季のボーナスはかなり良い見込みが示されておりますけれども、それでもまだ不十分だというふうに考えておりまして、経済がしっかりと回復して労働需給がタイトになり、賃金が本格的に上昇していくという形で物価安定目標が達成されるように、日本銀行としては最善の努力をしなければならないというふうに思っております。
――先進国の中で物価高と賃金下落を起こしたのは日本だけだと、金融緩和政策を批判する研究者がいる。結局、アベノミクスの柱である金融緩和は、大企業・お金持ちは株安円安で儲かっている一方で、庶民は物価高で苦しむというのが結論・結果だと思う。これを是正しないのはなぜか? 大企業・金持ち優遇、庶民は二の次というのが日銀のお考えなのか。アベノミクスを否定すると、安倍さんに怒られるとか忖度しているとか、そういう理由なのか。ご反論をお願いします。
全くそういうふうに考えておりません。2013年の1月に日本銀行の政策委員会の独自の判断で、2%の物価安定目標を決め、それが政府と日本銀行の共同声明にも採用され、2013年の4月から、量的質的金融緩和っていうのが始まったわけですが、そうしたもとで、それまで15年続いたデフレは、デフレでない状況になり、ベアも復活し、経済成長も復活し、そうしたもとで先ほどから申し上げているとおり、デフレではなくなったわけですが、残念ながら2%の物価安定目標は達成されていなかったということであります。
そうした中で、雇用も非常に大きく拡大しですね、所得も幅広く上昇したということがありますので、ご指摘のようなことは全くなかったというふうに考えております。
従いまして、今の足元の2%の物価の上昇は、そういったことによって上昇しているのではなくて、国際的な資源価格の上昇によって上昇しているコストプッシュ型のインフレですので、交易条件が悪化し、所得が海外に流出して、経済を下押しするという恐れがあるわけですので、今、コロナ禍からの回復課程にある日本経済をしっかり支えていく必要があるというふうに考えております。